戦闘力皆無な私は危機一髪でラブコメを避ける

横顔バードファイター

そして彼女は思い知る

 入学初日に怪我をした私はお察しの通り入学デビュー失敗である。クラスでは多数のグループが形成されていて、とても私の場所は残っていなかった。
そんな訳でその日は憂鬱な気分で一日を過ごし、さらに皆が帰った後一人残されて、先生に学校の連絡事項を説明を受けることとなった。ひどい追い打ちだ。
すっかり日も落ちた帰り道をトボトボと歩いた。信号が青なのを確認し、横断歩道を渡り始める。突如、私の足元が光った。その光はだんだん全身を包み込んでいく。横方向からトラックが迫っているのが横目に見えた。
 人々の悲鳴と狂騒、動かなくなった自身の体に脳がパニックになった。

「危ない!」

一際大きく発せられたその声の本人であろう男性は既に私の目の前まで来ていた。そのままの勢いで私にタックルをする。

ドゴォ!

 まるでスローモーションのようなこの出来事は私の感覚をも鈍感にさせているのだろうか。彼のタックルは横腹を庇った私の腕を貫き、そのまま肋骨をメキメキと軋ませ、反対車線へと突き飛ばした。そのまま私の上に倒れ込んできた彼は腹部に追撃を加える。

「ぐふっ!」

 一難去ってまた一難、ホッとしたのも束の間、突き飛ばされた反対車線にはタイミングよく別の車が迫ってくる。先程とは違って手足が自由なことを確認した私は彼の両袖を掴んだ。

「んがーーーー!!」

そのまま巴投げの要領で彼を歩道へと投げ飛ばす。一息つかずに、制服が汚れるのを気にしないで私は歩道に向かって転がった。

どん!

危機一髪、ガードレールにぶつかった直後、車が目の前を通り過ぎた。
「はあ、はあ、危な…っ痛!」
痛覚を取り戻した体は途端に悲鳴をあげ始めた。これ交通事故並にひどいんじゃないか?腕は紫に染まり大きく腫れ上がり、腹部に至っても同様の症状が出ている。
おかしい、ただの男性のタックルがこんなに響くとは思えない。奇跡的にラグビー日本代表クラスにタックルされたとしか思えない。そんな男性を巴投げした私も私だが。

「ああ!」

悲痛な声をあげたのは先程の男性だろう。制服の真ん中に私の靴跡が付いた彼は、髪は金色、顔は「神」と形容できるほどのイケメン。そう、

「あなたはあの時の…」

呻くように言った私の言葉の意味がわかったのだろう。申し訳なさそうな顔をして

「あ、あの時はごめん。ずっと探してたんだ、謝ろうと思って…」

"ずっと探してたんだ"不覚にもその言葉に少し嬉しくなった。

「私もあなたに言いたいことがあって…」

「なんだい?」

心配そうな顔を近づけてくる。

「その…」
   ───慰謝料を
その声は発せられただろうか。私の意識はそこで途絶えた。



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あとがき

大変遅くなりました(_ _;)
少しでも気に入っていただけたら幸いです!


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