戦闘力皆無な私は危機一髪でラブコメを避ける
貧弱貧弱
この世界は異常だ。
否、この世界ではなく私が異常なのかもしれない。
そんな風に思ったのは平日の昼間から病室で天井を見上げていた時のことだった。
事の発端を説明すると、それは至極当たり前のラブコメのような出来事だった。
「いけない!遅刻遅刻!」
あれは登校初日の出来事だった。
電車を乗り間違えたせいで大きなタイムロスをしてしまった私はとにかく急いで学校に向かうため脇目も振らず全速力で走っていた。
自分でもわかっていたと思う。
この状況、先程の台詞。条件は概ね揃っていた。
走る手前、十字路が見えた瞬間にそれは確信に変わる。
遂に私に春が来た、と。
中学時代、顔はかなりイケてる方なのに周りのレベルが低すぎて出会いに恵まれなかった私は、今日この日、高校初日から運命の人と出会うのだ。
十字路に飛び出した私の横から同じように走って来る男の姿が見えた。
スラリとした長身、ルックスは神レベルのイケメン、髪が金髪で、
(ちょっとやんちゃな人なのかな?)
なんて、考えたりしちゃって
(同じ制服……付き合ったらこの通学路を一緒に歩くことになるのかな…)
なんて!なんて!まだ付き合ってないのに!
正直油断していたんだと思う。
いや、実際曲がり角でぶつかる事を予想して身体は強張らせ、倒れた時に頭を打たないように、とも考えていた。
ぶつからない、という選択はその時の私には全くなかった。
走る彼の腕が私に当たる。
その瞬間、高く、高く。
私の体が宙に浮く。
吹き飛ばされた私の身体はキリモミ回転しているかのような挙動で、下の景色がぐるぐると回る。
思考は今だにあの十字路に置いてけぼりで、ただなるがままに回っていた。彼の驚いた顔が遠のく、
一体私はどれだけ飛ばされているんだ。
思考がようやく追いついて来た。
とにかくこの状況を打破しなければまずい。
コンクリートの上にでも落ちれば確実に私の人生は終わりを迎える。それだけは避けたい。
せめて土…願わくば弾力性に富んだクッション、のようなもの。
どこかに、、
!
あった!なんて偶然!
どこかの家からマットレスを運び出してる!
ただこのままだと手前で落ちる…
なんとかしてあそこまで行ければ…!
そのためには自分で身体をコントロールしなきゃ、
今の状態だと回転と吹き飛ばされたスピードで制御出来ない…
いや、逆に一か八か、
「やあああ!」
回転に逆らわず、逆に回転の向きに自分の力を加える。勝算はないが、これで飛距離を伸ばす!
なんとか、着きそう!
でもこのままじゃ、頭から着地しちゃう!
あとひと捻り─
その後の記憶がない。
お医者さんによればクッションがあったおかげで全身打撲程度で済んだって。
でも一箇所だけ骨折がひどい箇所があるの。
そう、彼とぶつかった方の肩。
後で慰謝料貰わないとね。
────────────────────────
ちょっと恋愛から外れてるかな?
2話目以降は短いので少しずつ投稿します。
否、この世界ではなく私が異常なのかもしれない。
そんな風に思ったのは平日の昼間から病室で天井を見上げていた時のことだった。
事の発端を説明すると、それは至極当たり前のラブコメのような出来事だった。
「いけない!遅刻遅刻!」
あれは登校初日の出来事だった。
電車を乗り間違えたせいで大きなタイムロスをしてしまった私はとにかく急いで学校に向かうため脇目も振らず全速力で走っていた。
自分でもわかっていたと思う。
この状況、先程の台詞。条件は概ね揃っていた。
走る手前、十字路が見えた瞬間にそれは確信に変わる。
遂に私に春が来た、と。
中学時代、顔はかなりイケてる方なのに周りのレベルが低すぎて出会いに恵まれなかった私は、今日この日、高校初日から運命の人と出会うのだ。
十字路に飛び出した私の横から同じように走って来る男の姿が見えた。
スラリとした長身、ルックスは神レベルのイケメン、髪が金髪で、
(ちょっとやんちゃな人なのかな?)
なんて、考えたりしちゃって
(同じ制服……付き合ったらこの通学路を一緒に歩くことになるのかな…)
なんて!なんて!まだ付き合ってないのに!
正直油断していたんだと思う。
いや、実際曲がり角でぶつかる事を予想して身体は強張らせ、倒れた時に頭を打たないように、とも考えていた。
ぶつからない、という選択はその時の私には全くなかった。
走る彼の腕が私に当たる。
その瞬間、高く、高く。
私の体が宙に浮く。
吹き飛ばされた私の身体はキリモミ回転しているかのような挙動で、下の景色がぐるぐると回る。
思考は今だにあの十字路に置いてけぼりで、ただなるがままに回っていた。彼の驚いた顔が遠のく、
一体私はどれだけ飛ばされているんだ。
思考がようやく追いついて来た。
とにかくこの状況を打破しなければまずい。
コンクリートの上にでも落ちれば確実に私の人生は終わりを迎える。それだけは避けたい。
せめて土…願わくば弾力性に富んだクッション、のようなもの。
どこかに、、
!
あった!なんて偶然!
どこかの家からマットレスを運び出してる!
ただこのままだと手前で落ちる…
なんとかしてあそこまで行ければ…!
そのためには自分で身体をコントロールしなきゃ、
今の状態だと回転と吹き飛ばされたスピードで制御出来ない…
いや、逆に一か八か、
「やあああ!」
回転に逆らわず、逆に回転の向きに自分の力を加える。勝算はないが、これで飛距離を伸ばす!
なんとか、着きそう!
でもこのままじゃ、頭から着地しちゃう!
あとひと捻り─
その後の記憶がない。
お医者さんによればクッションがあったおかげで全身打撲程度で済んだって。
でも一箇所だけ骨折がひどい箇所があるの。
そう、彼とぶつかった方の肩。
後で慰謝料貰わないとね。
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ちょっと恋愛から外れてるかな?
2話目以降は短いので少しずつ投稿します。
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