椿姫

コレット

「…誓いますか?」

「誓います」
  

 二人は花吹雪に包まれ、結婚した。





麗玉が二十歳になった年。


「紅麗玉。今この時を持って、退官させていただきます」
   

麗玉は退官する旨を伝えるため、奉天殿にひっそりと登城した。
   
麗玉は深く深く頭を垂れた。
   
国王、劉輝は頷いた。


「うむ。そなたは彩雲国初の女性将軍として、活躍してくれた。よって、そなたにはこれを贈りたい」
   

劉輝は階を降り、佩玉を手渡した。


「これ………」
   

そこには椿が彫られていた。

それは"下賜の花"。

王からの絶対の信頼。

そして、絶対の忠誠の証。


「椿の花言葉は"控えめな美しさ"そして"控えめな優しさ"。
   そなたは少しずつこの国の偏見を変えていった」
   

この国初の女性武官となる事で、女性も男性と同じ様に働けるのだと証明した。
   
そして初の女性将軍となる事で、女性も男性の上に立つことが出来るのだと証明した。


「……謹んで、拝受いたします…!」
   

麗玉は微笑んだ。

そしてまた、深く深く頭を垂れた。

   


いつしか、朝廷では麗玉を"椿姫"と呼ぶ人が増えた。
   
最初は武官から。

そして、紅将軍を認めていた官吏も。
   
彼女の将軍としての人生はたった二年程だったが、これだけ多くの人の心を掴み、揺すったのだった。
   
後に彼女は"幻の女将軍、椿姫"と渾名される事となる。


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