椿姫

コレット

破壊

「ら、藍将軍!」
  

 楸瑛は振り返った。

耀世と雷炎と話していた楸瑛は武官の声で振り返った。


「うん?どうしたんだい?」

「こ、紅、紅将軍がっ!!」
   

楸瑛はばっと走り出した。

耀世と雷炎も顔を見合わせて後を追う。
   
それを見ていた頼真と紘二も走り出した。


「麗玉!?」
   

楸瑛は武官の壁をかき分けて麗玉の元へと駆け寄った。
   
そこには、うずくまって荒く息をする麗玉の姿。
   
膝をついて抱え、仰向けにさせると、麗玉の白い顔は紅で濡れていた。


「しゅ…………え……」

「喋るな!!誰か、医官を!」

「待ってください!俺の親父が医師ですから、俺が診ます!」
   

紘二は楸瑛に抱かれた麗玉のそばに座った。
   
楸瑛と頼真が協力して麗玉の鎧を脱がす。
   
サラシが巻かれた胸にも、鮮血は垂れてきていた。
   
雷炎と耀世は薬やら何やらを取りに武官と駆け出した。


「……っ!んぐっ………かはっ!」
   

紘二は麗玉の喉、胸、腹を触診していった。

腹の辺りを少し押した時、麗玉は痛がった。

そしてまた咳をし、血塊を吐き出した。
   
コヒューコヒューと嫌な音を喉が奏でる。


「……腹の中が切れているかもしれません。一時的なものだとは思いますが……失礼」
   

そう言って麗玉の首筋を後から強く叩いた。
   
麗玉は一瞬白目を剥き、そのままくたりと動かなくなった。


「紘二、お前!何を…!?」

「ただ気絶させただけですよ。
   あのまま意識を保っていたら、咳が止まらなく、麗玉自身も危うくなってしまう」
   

紘二は強く言った。


「もうお帰りになって下さい。
   藍将軍。麗玉を連れて。頼真の親父さんは薬師だから、頼真も薬を使えます。
   頼真も、連れて行って下さい。もちろん、俺も」
   

楸瑛は青ざめた顔で頷いた。


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