Federal Investigation Agency Investigator・連邦捜査庁の捜査官~皇帝直属のエージェントたち~
第7章3話
「いたぞ!」
「まてぇ!」
伍長とルーズルートはひたすら城塞都市内を走り回る。その後ろから軍靴の音が多数響き渡る。後ろから追いかけてくる憲兵らしき男たちは、怒号を上げ拳銃や軍刀を伍長達の方に向けて追いかけてきた。
どうしてこうなった?
実は伍長閣下たちもどうしてこうなったかは、記憶になかった。いや、多少は記憶があるのだが、その記憶というのが、ヘリコプターから逃れるために屋上から落下、背中や腰に痛みを生じながらも立ち上がり裏通りを伝い逃走、何本かの裏路地を通った直後憲兵に発見され今に至る。
……バリバリ記憶のこってんな!
「待て! 銃は撃つな! 生きて捕らえよ!」
隊長格の男がその後ろに続く部下たちに叱咤する。
隊長は恐らく察していたのだろう……。彼らが中央銀行の爆破に何らかの形で関与し、国王をも暗殺したのだろうと……。だが、中央銀行の爆破は彼らの犯行なのだが、国王暗殺は全くの無関係である。
「ちょ! さっきからどこに向かって走っているんだ!? 裏路地だからわかりにくいが、ここ2回目だぞ!」
荷物にヴァイツァー20を持ったため普通の人なら歩くのもままならない量の荷物を持ちながらでも全力疾走しながらルーズルートに問いかける。
ただ、歳が歳なので、真夜中にもかかわらず額からは汗が噴き出していた。
「知りませんって! 私も適当に進んでいるんですから!」
暗視装置付きの眼鏡を掛けながら、こちらも伍長に負けず全速力で走っているルーズルート侍従長。
「って、次を右だ!」
左の道の奥に別の憲兵が見えたため、右への進路を取る。
何軒かお店の看板やごみ箱などがあったが、それをかわすか蹴飛ばすかで伍長とルーズルートはどんどん奥へ進み、逆に倒れて散らばたゴミなどが憲兵たちの足手まといとなった。
そして徐々に憲兵たちと距離を取っていく。
伍長達は暗視装置を頼りに、城塞都市から脱出できる方法を探っていた。
だが……。
だが、それはある種の罠だったのかもしれない。
このペルシアント惑星王国の軍所属の憲兵たちはある意味優秀なのかもしれない。なお、ス連でのぺ王国の憲兵の第1印象は大体『捕まったら問答無用で処刑されそう』『世にも恐ろしい拷問されそう』などなど、悪評漂う集団となっている。
まぁ、そんな世にも恐ろしい話はあくまで噂でしかなく、きちんと云たら戦争捕虜条約やポールバート世界警察協定で捕虜や容疑者への非・人道的な扱いや拷問などは厳しく禁止されているので、そんな恐ろしい話は実際にはない。
ただ、非人道的でなければいいので、伍長さんたちが以前やったようなことは多分セーフ。
で、結局は何が罠だったのかというと……
「大通りか!」
そして、あたりを見渡した二人は驚愕した。
右を見ても左を見ても憲兵たちがその場所だけ囲んでいたからだ。ツァールバリカー惑星合衆公国製の次世代型主力戦車(第19世代型主力戦車)数量が大通りに堂々と居座り主砲をこちらに向けている。伍長達を見つけたヘリコプターも数機ほどホバリング状態でこちらを向いていた。
明らかにたった今作られたような包囲網ではなく、事前にここに追い込むように作られた罠のようなものだった。
そう、今ようやく追いついてきた憲兵たちは伍長が進むルートに憲兵を配置し、この場所に誘導するように仕向けていたのだ。
やられたもんだと伍長は思う。
「ちっ、どうする? おとなしく降参するか?」
「なんです? 死にたいんですか? 私達は密入国に加え諜報員ですよ?……いえどちらかと言えば工作員ですが、普通になんとか条約で守られるとでも?」
確かに工作員や諜報員は条約で守られている訳ではない。何せ自国の安全保障が脅かされる存在なのだからな諜報員や工作員というのは……。
ス連だってかつて諜報容疑で逮捕した容疑者に容赦なくシベリア永久凍土生命活動停止刑を執行させていたものだ。
なお、その時の犠牲者はシベリア連邦にて見ることが出来る。大人一人1万2100円だが……。
「なら、正当防衛射撃という名の機銃掃射を加えるか?」
「もちろんそのつもりですが、私が今! というまで撃たないでくださいよ、ただすぐに射撃できるように安全装置とフルオート射撃にセットしといてください」
「わかった」
伍長は肩から下げているヴァイツァー20軽機関銃の安全装置をAからFに手探りで変更し、引き金に手を添える。
その間にも、憲兵たちは伍長達に手を上げて抵抗が無いように見せろなどと叫んでいた。
ヘリコプターはホバリング状態を解除し、上空を右往左往していた。
「まだです」
ルーズルートは小声でそう告げる。
憲兵たちとはおおよそ50mほどの距離まで近づいてきた。
「まだです…」
ルーズルートは小声でそう告げる。
憲兵たちとはおおよそ40mほどの距離まで近づいてきた。
「まだでふ……まだです」
「噛むな!」
何という噛み方だろうか。
降参する意思が見られないのか、憲兵たちは軍刀や拳銃を次々と取り出し、伍長の方に向ける。
距離にしておよそ30mほど。
「もうすぐです……25mあたりで射撃してください」
「おう」
そう指示される伍長閣下。
そして、距離として25mほどに到達したその時、
「発射!」
ルーズルートの合図とともに、7.62㎜のヴァイツァー20が轟音と共に連射された。
120発もの弾丸がヴァイツァー20から勢いよく発射され、憲兵たちをなぎ倒していく。ヴァイツァー20の恐ろしいところは腰だめ撃ちで射撃してもあまり反動がないという事にもある。
それもそのはず、衝撃吸収装置が旧式とはいえほかの物よりかは断然反動を抑えられる。
そのおかげで、伍長はフルオート射撃にもかかわらず弾詰まりを起こさずに前段射撃を加えられることが出来るのだ。
だが、黙ってやられている憲兵たちではなかった。
仲間の敵と言わんばかりに拳銃の引き金を引き始め、伍長達に向かって発砲してくる。弾切れを起こすと後ろに待機していた仲間と交代し、継続的な射撃を加えてきた。
「弾切れ! 再装填!」
伍長がそう叫ぶ。
あたりは銃声によって、隣の人の声を聞くのもやっとであった。
その時、
一発の銃弾が伍長の背負っている荷物を直撃した。
小さな穴が開いた程度で、伍長や荷物が落ちてくることは無かったが、この場に突っ立ていることを危険と判断したルーズルートによって、憲兵が取り囲む際急いで逃げ出したのか歩道に乗り捨ててあった青い車の後ろに滑り込むように身を隠す。
使い切り、スッカラカンとなった弾倉を重力に従うように落下させ、スーツのポケットに詰め込んでいた予備弾倉を取り出し、カチャと音を出しながら再装填する。
そして、車のボンネットから迫りくる憲兵たちに射撃を加えようとしたその時、ルーズルートが手を伸ばし伍長を引っ込ませた。
「ど、どうした?」と、戸惑いながら尋ねる伍長。
「伍長さん、ここにいては時間の無駄です。危険です、いずれ弾も切れ、捕まるのがオチです。なので車を使いましょう。伍長さんはスモークグレネードを投擲してください。私はエンジンがかかるか調べますのでスモークの間に後部座席へ移動してください」
「お、おう」
そう、短くも長くもない説明をした。
その指示の通り伍長は、荷物の中から手榴弾のようなものを取り出した。その中身はスモークグレネード、めっちゃモクモクしてあたりの視界が一瞬にして奪われる恐ろしい武器である。しかも色は赤!
そのめっちゃモクモクするスモークを、大体道のど真ん中で焚けるように投擲した。
カランコロン
地面にあたり反動でさらに数メートル転がっていったモクモクグレネード。
それを見た憲兵たちは、顔を蒼白にし慌てだした。
「しゅ、手榴弾だ! 避けろ! ゲッほげっほ」
「防弾ガラス! もってこい! げっほごっほ!」
最後にゲホゲホ言い出したのは別に彼らが風邪をひいているからではなく、手榴弾と思われていたグレネードから真っ赤な煙を吹き出しそれをもろにくらったからである。
あたり一面真っ赤になったことにより、視界が遮られただけではなく、混乱により誰かが味方に向かい銃を発砲し仲間同士の同士討ちが起こり始めた。
「まて! 撃つな! そのまま待機しろ!」
隊長格の男が叫ぶことによって隊員たちにも落ち着きが戻ってき、じっとあたりに目を凝らす。
と、かすかに赤い世界からブルルルルとエンジン音が聞こえてきた。
数秒後……
あくまで目くらましも兼ねたモクモクグレネードなので、効果は数秒しかなかったがそれでも伍長達には十分と言った時間だった。
モクモクグレネードを投擲後、ルーズルートは素早く青い車の右側にある運転席へと滑り込み、鍵の有無を確認する。
運よく急いで乗り捨てたようなものだったため、鍵は指しっぱなしであった。エンジンをかける。
その間に伍長閣下も軽機関銃を肩から下げ、後部座席へと滑り込んだ。
「では、行きますよ、シートベルトはきちんとしましょう」
「そんなことはどうでもいいから! 早くいけ! もう効果が薄れてきているぞ!」
どんなに非常事態であれ、道路交通法はきちんと守る精神のルーズルートに伍長は感心しながらも今はそんな時ではないので、早くいくようにツッコんだ。
キュルルル
タイヤの空回りする音が聞こえたと同時に、青い車は見た目とは裏腹にすごい勢いで加速、あっという間にあたりを取り囲んでいた憲兵数人を薙ぎ払いながら場を後にした。
薙ぎ払うと言ったが、別の言葉に変えればただただ人を引いたことになる。よいこのみんなは道交法をきちんと守りましょう。
一方で何人かが殉職してしまった憲兵たちは、モクモクが晴れたと同時に去っていった青い車に少しでもダメージを加えるべく拳銃やライフルを乱射していたが物凄い速さで去っていく車に当てるのが意外と難しく、仕方がないので航空部隊からの攻撃に回ってもらうことにした。
「まてぇ!」
伍長とルーズルートはひたすら城塞都市内を走り回る。その後ろから軍靴の音が多数響き渡る。後ろから追いかけてくる憲兵らしき男たちは、怒号を上げ拳銃や軍刀を伍長達の方に向けて追いかけてきた。
どうしてこうなった?
実は伍長閣下たちもどうしてこうなったかは、記憶になかった。いや、多少は記憶があるのだが、その記憶というのが、ヘリコプターから逃れるために屋上から落下、背中や腰に痛みを生じながらも立ち上がり裏通りを伝い逃走、何本かの裏路地を通った直後憲兵に発見され今に至る。
……バリバリ記憶のこってんな!
「待て! 銃は撃つな! 生きて捕らえよ!」
隊長格の男がその後ろに続く部下たちに叱咤する。
隊長は恐らく察していたのだろう……。彼らが中央銀行の爆破に何らかの形で関与し、国王をも暗殺したのだろうと……。だが、中央銀行の爆破は彼らの犯行なのだが、国王暗殺は全くの無関係である。
「ちょ! さっきからどこに向かって走っているんだ!? 裏路地だからわかりにくいが、ここ2回目だぞ!」
荷物にヴァイツァー20を持ったため普通の人なら歩くのもままならない量の荷物を持ちながらでも全力疾走しながらルーズルートに問いかける。
ただ、歳が歳なので、真夜中にもかかわらず額からは汗が噴き出していた。
「知りませんって! 私も適当に進んでいるんですから!」
暗視装置付きの眼鏡を掛けながら、こちらも伍長に負けず全速力で走っているルーズルート侍従長。
「って、次を右だ!」
左の道の奥に別の憲兵が見えたため、右への進路を取る。
何軒かお店の看板やごみ箱などがあったが、それをかわすか蹴飛ばすかで伍長とルーズルートはどんどん奥へ進み、逆に倒れて散らばたゴミなどが憲兵たちの足手まといとなった。
そして徐々に憲兵たちと距離を取っていく。
伍長達は暗視装置を頼りに、城塞都市から脱出できる方法を探っていた。
だが……。
だが、それはある種の罠だったのかもしれない。
このペルシアント惑星王国の軍所属の憲兵たちはある意味優秀なのかもしれない。なお、ス連でのぺ王国の憲兵の第1印象は大体『捕まったら問答無用で処刑されそう』『世にも恐ろしい拷問されそう』などなど、悪評漂う集団となっている。
まぁ、そんな世にも恐ろしい話はあくまで噂でしかなく、きちんと云たら戦争捕虜条約やポールバート世界警察協定で捕虜や容疑者への非・人道的な扱いや拷問などは厳しく禁止されているので、そんな恐ろしい話は実際にはない。
ただ、非人道的でなければいいので、伍長さんたちが以前やったようなことは多分セーフ。
で、結局は何が罠だったのかというと……
「大通りか!」
そして、あたりを見渡した二人は驚愕した。
右を見ても左を見ても憲兵たちがその場所だけ囲んでいたからだ。ツァールバリカー惑星合衆公国製の次世代型主力戦車(第19世代型主力戦車)数量が大通りに堂々と居座り主砲をこちらに向けている。伍長達を見つけたヘリコプターも数機ほどホバリング状態でこちらを向いていた。
明らかにたった今作られたような包囲網ではなく、事前にここに追い込むように作られた罠のようなものだった。
そう、今ようやく追いついてきた憲兵たちは伍長が進むルートに憲兵を配置し、この場所に誘導するように仕向けていたのだ。
やられたもんだと伍長は思う。
「ちっ、どうする? おとなしく降参するか?」
「なんです? 死にたいんですか? 私達は密入国に加え諜報員ですよ?……いえどちらかと言えば工作員ですが、普通になんとか条約で守られるとでも?」
確かに工作員や諜報員は条約で守られている訳ではない。何せ自国の安全保障が脅かされる存在なのだからな諜報員や工作員というのは……。
ス連だってかつて諜報容疑で逮捕した容疑者に容赦なくシベリア永久凍土生命活動停止刑を執行させていたものだ。
なお、その時の犠牲者はシベリア連邦にて見ることが出来る。大人一人1万2100円だが……。
「なら、正当防衛射撃という名の機銃掃射を加えるか?」
「もちろんそのつもりですが、私が今! というまで撃たないでくださいよ、ただすぐに射撃できるように安全装置とフルオート射撃にセットしといてください」
「わかった」
伍長は肩から下げているヴァイツァー20軽機関銃の安全装置をAからFに手探りで変更し、引き金に手を添える。
その間にも、憲兵たちは伍長達に手を上げて抵抗が無いように見せろなどと叫んでいた。
ヘリコプターはホバリング状態を解除し、上空を右往左往していた。
「まだです」
ルーズルートは小声でそう告げる。
憲兵たちとはおおよそ50mほどの距離まで近づいてきた。
「まだです…」
ルーズルートは小声でそう告げる。
憲兵たちとはおおよそ40mほどの距離まで近づいてきた。
「まだでふ……まだです」
「噛むな!」
何という噛み方だろうか。
降参する意思が見られないのか、憲兵たちは軍刀や拳銃を次々と取り出し、伍長の方に向ける。
距離にしておよそ30mほど。
「もうすぐです……25mあたりで射撃してください」
「おう」
そう指示される伍長閣下。
そして、距離として25mほどに到達したその時、
「発射!」
ルーズルートの合図とともに、7.62㎜のヴァイツァー20が轟音と共に連射された。
120発もの弾丸がヴァイツァー20から勢いよく発射され、憲兵たちをなぎ倒していく。ヴァイツァー20の恐ろしいところは腰だめ撃ちで射撃してもあまり反動がないという事にもある。
それもそのはず、衝撃吸収装置が旧式とはいえほかの物よりかは断然反動を抑えられる。
そのおかげで、伍長はフルオート射撃にもかかわらず弾詰まりを起こさずに前段射撃を加えられることが出来るのだ。
だが、黙ってやられている憲兵たちではなかった。
仲間の敵と言わんばかりに拳銃の引き金を引き始め、伍長達に向かって発砲してくる。弾切れを起こすと後ろに待機していた仲間と交代し、継続的な射撃を加えてきた。
「弾切れ! 再装填!」
伍長がそう叫ぶ。
あたりは銃声によって、隣の人の声を聞くのもやっとであった。
その時、
一発の銃弾が伍長の背負っている荷物を直撃した。
小さな穴が開いた程度で、伍長や荷物が落ちてくることは無かったが、この場に突っ立ていることを危険と判断したルーズルートによって、憲兵が取り囲む際急いで逃げ出したのか歩道に乗り捨ててあった青い車の後ろに滑り込むように身を隠す。
使い切り、スッカラカンとなった弾倉を重力に従うように落下させ、スーツのポケットに詰め込んでいた予備弾倉を取り出し、カチャと音を出しながら再装填する。
そして、車のボンネットから迫りくる憲兵たちに射撃を加えようとしたその時、ルーズルートが手を伸ばし伍長を引っ込ませた。
「ど、どうした?」と、戸惑いながら尋ねる伍長。
「伍長さん、ここにいては時間の無駄です。危険です、いずれ弾も切れ、捕まるのがオチです。なので車を使いましょう。伍長さんはスモークグレネードを投擲してください。私はエンジンがかかるか調べますのでスモークの間に後部座席へ移動してください」
「お、おう」
そう、短くも長くもない説明をした。
その指示の通り伍長は、荷物の中から手榴弾のようなものを取り出した。その中身はスモークグレネード、めっちゃモクモクしてあたりの視界が一瞬にして奪われる恐ろしい武器である。しかも色は赤!
そのめっちゃモクモクするスモークを、大体道のど真ん中で焚けるように投擲した。
カランコロン
地面にあたり反動でさらに数メートル転がっていったモクモクグレネード。
それを見た憲兵たちは、顔を蒼白にし慌てだした。
「しゅ、手榴弾だ! 避けろ! ゲッほげっほ」
「防弾ガラス! もってこい! げっほごっほ!」
最後にゲホゲホ言い出したのは別に彼らが風邪をひいているからではなく、手榴弾と思われていたグレネードから真っ赤な煙を吹き出しそれをもろにくらったからである。
あたり一面真っ赤になったことにより、視界が遮られただけではなく、混乱により誰かが味方に向かい銃を発砲し仲間同士の同士討ちが起こり始めた。
「まて! 撃つな! そのまま待機しろ!」
隊長格の男が叫ぶことによって隊員たちにも落ち着きが戻ってき、じっとあたりに目を凝らす。
と、かすかに赤い世界からブルルルルとエンジン音が聞こえてきた。
数秒後……
あくまで目くらましも兼ねたモクモクグレネードなので、効果は数秒しかなかったがそれでも伍長達には十分と言った時間だった。
モクモクグレネードを投擲後、ルーズルートは素早く青い車の右側にある運転席へと滑り込み、鍵の有無を確認する。
運よく急いで乗り捨てたようなものだったため、鍵は指しっぱなしであった。エンジンをかける。
その間に伍長閣下も軽機関銃を肩から下げ、後部座席へと滑り込んだ。
「では、行きますよ、シートベルトはきちんとしましょう」
「そんなことはどうでもいいから! 早くいけ! もう効果が薄れてきているぞ!」
どんなに非常事態であれ、道路交通法はきちんと守る精神のルーズルートに伍長は感心しながらも今はそんな時ではないので、早くいくようにツッコんだ。
キュルルル
タイヤの空回りする音が聞こえたと同時に、青い車は見た目とは裏腹にすごい勢いで加速、あっという間にあたりを取り囲んでいた憲兵数人を薙ぎ払いながら場を後にした。
薙ぎ払うと言ったが、別の言葉に変えればただただ人を引いたことになる。よいこのみんなは道交法をきちんと守りましょう。
一方で何人かが殉職してしまった憲兵たちは、モクモクが晴れたと同時に去っていった青い車に少しでもダメージを加えるべく拳銃やライフルを乱射していたが物凄い速さで去っていく車に当てるのが意外と難しく、仕方がないので航空部隊からの攻撃に回ってもらうことにした。
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