Federal Investigation Agency Investigator・連邦捜査庁の捜査官~皇帝直属のエージェントたち~

11月光志/11月ミツシ

第7章1話

 零時10分、統合軍作戦指揮参謀本部室内。
 ここは国軍である陸軍、海軍、空軍、宇宙航空軍の作戦指揮や戦闘指揮などを管轄する統合軍の中枢、大天皇帝を筆頭に、侍従武官、統合軍参謀総長、陸軍元帥、海軍元帥、空軍元帥、宇宙航空軍統帥官、国防総省統合軍出向員の計8名の国軍高官や将軍で構成される組織である。
 統合軍は陸海空宇の4軍の統帥権をきちんと維持するために初代皇帝によって作られた組織である。
 というのも、今も昔も軍隊というものは派閥争いがいっちょ前で、旧ク連時代の陸海空宇も関係が非常に悪く、ある戦争の時、陸軍が占領した都市に空軍の戦略爆撃機が大爆撃を行いフレンドリーファイヤーを起こしたほど連帯能力が欠けていた。
 その反省から、陸海空宇の4軍から戦闘権や作戦指揮権を剥奪し、統合軍によって統括されるようになった。

 その統合軍の中枢組織である作戦指揮参謀本部室には現在大天皇帝と国防総省統合軍出向員を除く6名が集まっていた。

「皆様、集まりましたね?」と、侍従武官。
「はい、陛下と出向員の人はいませんが……」海軍元帥はテーブルをはさんで空いている2つの椅子を見る。
「そうですな、まぁ今回は好都合ですわ。ではさっそく参謀会議を始めましょうかや、侍従武官説明を頼む」

 空軍元帥は笑いながら侍従武官に説明を促した。

「はい、今回陛下と出向員の方に秘密で集まった理由ですが、先ほど陸軍情報部からの情報でペルシアント惑星王国の国王ハーゼンクロイツ・アベレント2世が暗殺されました。」
「聞いた話によると、銃殺だとか?」

 空軍元帥が侍従武官に問う。

「ああ、間違いない。監視衛星アドルフで確認した。国王本人が血を流して倒れている姿をな……」

 苦笑いをしながら話す陸軍元帥。それを聞いた宇宙航空軍統帥官(元帥)は訝しみながら質問した。

「果て……陸軍元帥閣下が何故プライドが高い国防総省の管轄する監視衛星を見ることができるのかな?」
「ふ、私と国防総省の一人が古い知り合いでね、その彼はだいぶ出世して今じゃシベリア連邦守備軍第1師団師団長だ。その彼が野暮用で本省にいてね、その彼に頼み込んで見せてもらったのさ」
「なんと!」

 宇宙航空軍統帥官は心底驚いた、それほど意外だったからである。

「ええ、話を戻します。確かに陸軍元帥閣下のおっしゃる通り、国王は後ろから何者かに射殺されました。」
「侍従武官、一ついいかな?」
「はい、統合軍参謀総長」

 今まで黙り込んでいた参謀総長が手を上げ発言許可を求めてくる。それを許可する侍従武官。

「国王を暗殺した犯人はまだ捕まっていないのか?」
「はい、犯人は射殺後現場を車で立ち去ったようで、目撃者の証言では黒いワンボックスカーが銃声が鳴り響いた直後に急発進したそうです」
「そうか……わかった進行中に質問してすまない。」
「あっ、それなら私からも一つよろしいでしょうか?」

 この参謀会議の中で唯一女性の将校である海軍元帥が発言許可を求めた。なんとこの人、17歳で海軍士官学校に入校し、10年で凄まじい速さで出世を続け、海軍のトップにまで上り詰めたのである。

「どうぞ、海軍元帥閣下。」
「犯人が我が国の関係者……ということはございませんか? 私の手元にある情報ですと連邦捜査庁の人間がペルシアント惑星王国に不法入国したとか……。」
「はい、存じています。ですが、それはあり得ません。なぜなら彼らがペルシアント惑星王国に入ったときに暗殺されたのですから」
「そうでしたか……。ありがとうございます」
「いえ、お気になさらぬように。他に質問がないようでしたらこのまま進めますが……」

 特に質問もなさそうなので、侍従武官は話を進める。

「今回国軍のトップである陛下や出向員の方を除いた理由ですが……」

 軽く呼吸を整え、本題に入る。

「国軍のペルシアント惑星王国侵攻作戦、通称Invasion of versus Perushianto(ペルシアント侵攻作戦の発動を要請します。」

 参謀会議室内がざわめいた。
 それもそのはずだが、その理由は後に語る。まずこの作戦内容だが、第2次世界大戦で行われたノルマンディー上陸作戦とまったく同じようなものである。まずペルシアント惑星王国付近にいる宇宙航空軍の第2空挺軍団により戦車部隊と空挺部隊が首都郊外に降下し、前哨基地の建設。その後、海軍保有の宇宙戦艦による艦砲射撃に加え、海軍運営の永久機関波動システムエンジン搭載型の5km級空母から発艦した空軍の爆撃編隊による首都や軍需工場などの空爆を行い、夜明けを見計らい陸軍と宇宙航空が強襲揚陸艦から上陸用の不整地着陸機を前哨基地の後方に上陸し首都を占領するといった作戦である。

 ではなぜざわめいたのか。実はInvasion of versus Perushiantoは過去に2度発案されたがその都度却下された作戦である。
 最初は、スペの核戦争勃発危機の際、参謀本部内の強硬派の一人がノルマンディー上陸作戦の戦術やヨーロッパを征服していたナチスの防衛線に亀裂を入れたことに感動し、先代の大天皇帝に発案した。
 名前もノルマンディー上陸作戦の成功をあやかるために同じ名前を採用した。
 だが、先代の大天皇帝は惑統連の仲裁通告を受け取ったばかりなので、これを破棄した。

 そして次に出てきたのは、先代大天皇帝が療養のために退位し、フェルトさんが即位する直前、参謀本部でInvasion of versus Perushiantoの作戦が発案されス連領土であった衛星の奪還とペルシアント惑星王国首都の占領を明記した。
 フェルトさんは即位したばかり+まだ未熟だったもので周囲の強硬により許可しそうになったが、元侍従武官による作戦の危険性と当時海軍の戦略を教えていた現在の海軍元帥の女性の2名が強硬に反対し廃案となった。

 そんな歴史のある通称Invasion of versus Perushianto(ペルシアント侵攻作戦)がまたしても今回発案されてしまったのだ。

「ちょ、ちょっと待ってください。侍従武官殿。貴方はこの2回も廃案された作戦をやるつもりですか?!」

 取り乱し悲鳴なような声を海軍元帥が荒げた。

「落ち着いてください、閣下。もうすでに陸軍元帥閣下と統合軍参謀総長閣下両名の実行署名はもらっているんですよ」
「何ですって!?」

 悲鳴のような声から素っ頓狂な声を上げた。
 それもそのはず、大規模な作戦を実行する際には統合軍作戦指揮参謀本部で陸軍元帥などの各軍の元帥の過半数と参謀総長の実行者の署名によって実行が許可される。
 だが、最終的な作戦実行の許可はフェルトさんが下すのだが……。

「あなた方、まさか陛下のいないときに参謀会議を開いた理由って陛下の許可を待たずに実行する気だからですか?」
「ああその通りだとも、陛下は歳を重ねるごとに賢く……そして我々がもう扱得られない領域へと成長してしまった。陛下は確実にこの作戦を許可なさらない。なら我々が極秘裏にやるしかなかろう?」
「そんな……。く、空軍元帥閣下と宇宙航空軍統帥官殿も何とか言ってくださいよ!」
「申し訳ないが、海軍元帥閣下。私はこの作戦に署名する意思がある……。そう伝えておこう」
「私も同じく……」

 なんと、陸軍元帥に統合軍参謀総長に加え、宇宙航空軍統帥官や空軍元帥までもが参加を表明した。つまり海軍を除く3つの主力軍が本作戦に参戦するのだ。

「そ、そんな……。貴方たちは陛下への忠誠心を失ったのですか!?」
「馬鹿を言わんでくれ、我々は陛下への忠誠心は忘れているはずがなかろう。これは大天皇帝陛下のために行う作戦なんだよ」
「そんなの、クーデターと同じじゃないですか! それに、軍の統帥権を示す”大統帥最高位勲章”の裏にある日替わりシリアルナンバーはどうするのですか? 無人兵器を動かすには、陛下のシリアルナンバーがないと動かせませんよ?」
「知っている、なので無人兵器は使わん。有人兵器で代用する!」

 陸軍元帥はそう力強く発言した。
 ちなみにス連軍並びに列強各国軍では、戦車、航空機、砲兵、艦船などでは、後方作戦指揮所または統合軍作戦指揮所でAI操作または特コンを使って敵味方のコンピューター識別や弱点への精密射撃などを可能にした。
 簡潔に言うと、戦車や航空機、砲兵や艦船に人が乗らずに、後方からの指示だけで動かせれる。これにより人件費が抑えらえるという……。ただこれには問題があり、無人兵器を動かすためには海軍元帥閣下が言った通りそれらを動かすために日で変わるナンバーを打ち込まなければならない。

「では、海軍元帥閣下を除く皆様の賛成を持ちまして発案します。ではこちらの署名欄に署名を……」

 侍従武官は”Invasion of versus Perushianto(ペルシアント侵攻作戦)の実行書類および統合軍作戦指揮参謀本部賛成者署名”と書かれた書類を取り出した。
 まず侍従武官が自分のサインと役職を署名する。彼の本名はロシュディア・ロミッツ侍従武官だ。
 次に空軍元帥が署名をする。彼の本名はグデーリアン・フリッシュリッツァー空軍元帥だ。
 そして最後に宇宙航空軍統帥官である、高源寺 豊光が署名をする。
 なお、ハーバーブローフ・フシュガヴィリ陸軍元帥とウィングス・クルセーダー統合軍参謀総長の署名は事前にされているので、回されなかった。

「では、海軍元帥閣下こちらに署名を……」

 侍従武官が海軍元帥であるフランスィア・メルディエッタロードに署名を勧める。そう、なんとこの海軍元帥閣下、皇族であるメルディエッタロード家の娘さんである。リフェリアさんの夫の妹さんに当たる。つまりフェルトさんの親戚にもあたる。ちなみに皇位継承権序列第13位。 
 その海軍元帥閣下は首を横に振り署名を否定した。

「何故だ? 海軍には5km級空母ノーヴェンバー(空母November)を運営してもらわないと爆撃ができないではないか!」

 5km級空母November(空母November)は一応ス連国産空母だが元々は海向けに作られた普通の空母である。
 なので、他の空母とは違い着水が可能という利点があるが、上下対象ではないので、宇宙空間では向かない。
 あと、名前の由来は着工した月が11月だったからであり、別に中の人の名前をとったわけではない。
 ……うん? 中の人の名前はなんだ?

「諦めてください、海軍元帥の特権を使用し海軍は本作戦に一切かかわりません!」

 そう発言するや否や海軍元帥は、大股で部屋を退出していった。
 残された各軍の将校たちは茫然としていた。

「……。まったく、海軍元帥閣下には困ったものだ……」と陸軍元帥
「全くです、どうしましょうか、海軍の5km級空母Novemberがないと爆撃機の支援ができませんが……」
「いや、仕方がない。宇宙航空軍が空軍の爆撃機を運ぼう」

 侍従武官の質問に宇宙航空軍統帥官が答える。

「それは助かります。では、海軍を除く陸・空・宇・統の4軍でInvasion of versus Perushianto(ペルシアント侵攻作戦)を実行します。」

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