Federal Investigation Agency Investigator・連邦捜査庁の捜査官~皇帝直属のエージェントたち~

11月光志/11月ミツシ

第6章14話

 パシュッ パシュッ

 サイレンサーピストルから2発の銃弾が銃独特の発砲音を鳴らさずに発射された。 
 弾丸は一直線に、あるものへ向かい、それを断ち切る。あるものとは鎖のことであり、その鎖は鉄格子に絡まるように巻かれ、南京錠で閉じられていた。
 鎖の呪縛から解き放たれるように軋みながら開いていく鉄格子、それを開けているのは伍長とルーズルートであった。
 二人は、大きなボストンバックを背負いながら鉄格子の内側へと足を踏み入れる。
 鉄格子の中には、云千億円はありそうな大量の一万円札(日本の諭吉さんとは違い、中に描かれているのは惑統連の国章と列強国の国旗が描かれているため、日本円とは別物)と、頑丈そうな大理石の壁に埋まってある貸金庫があった。

「うわぁ……。見ろよルーズルート、あの大量の札束……。一束100万円だとして、合計でおおよそ5000億円から6000億はあるぞ。これ数十万くらいならもらっていっても大丈夫じゃないのか?」
「まぁ、いずれは燃やすものですけど、そのお金非合法的なものですよ? それでも取りますか?」
「う~む……。しかしなぁ、勿体ないんだよなぁ……。だって非合法な方法で手に入れたといっても、云千億円の札束だよ? 勿体なくね!?」
「……はぁ、わかりましたよ。ちょっと待ってください」

 ため息を深々と吐きながらポケットから先ほど使ったルーズルート愛用の携帯電話を取り出し、電話帳からある人への電話を掛けた。
 何回かのコールのうち……

『はい、もしもし』

 電話の奥から声がした。

「あっ、どうもすいません陛下。ルーズルートです。お時間今大丈夫ですか?」
『あ! ルール先生! いえいえ、大丈夫ですよぉ』

 なんと、陛下改めフェルトさんもといフェルトさん大天皇帝陛下であった。
 現在は深夜の零時、こんな時間まで一体子供が何をやっているのか? まぁそりゃぁフェルトさんは一応国家元首でもあったりする。というか本業?が国家元首なので、色々と公務が溜まっていたり、いなかったり……。
 一晩中机に向かって事務仕事や書類の制作、国軍の人事や戦術を立てるなど暇そうに見えて実は結構忙しかったりする。

「こんな時間まで一体何をされていたんです? もしかして寝ていましたか?」
『うぅん、さっきまでメイド長からお説教食らっていて……』
「メイド長からお説教食らうなんていったい何やらかしたんですか……?」
『アハハ、ハハ……』

 徐々に薄ら笑いへと変わっていき、今電話の向こうで4時間淡々と説教していたレミレアさんの姿を思い出してしまったフェルトさん。

『それで、こんな時間にどうしたんですかぁ? まさか任務に何か負傷が起きたとか?……』
「いえ、実はですね……」

 ルーズルートは、今まで起こったことと踏まえ、伍長が地下金庫室内にある現金がどうしても欲しいと恐縮しながら伝える。

「というわけで、一応陛下としては持って帰ってきてもいいのでしょうか……?」
『う~ん、まぁどちらにしても焼却する予定のお金なんで、総額千万円未満くらいなら大丈夫だと思いますけど……』
「けど、ですか?」
『連邦捜査庁の給料ってそんなに悪いんですか?』
「……。……フフフ、いえいえ違いますよ、十分なほどにもらっています。伍長さんはもったいないから持って帰りたいだけだそうです」
『そうですかぁ、ならいいですよ~』
「そうですか、ありがとうございます」

 そう一言礼を述べ、電話を切り、伍長のほうへ振り替えるルーズルート。
 伍長閣下は、もうさっそく作業を開始しており、持ってきていたボストンバックに一束一束を強引に押し込むように詰め込んでいた。

「伍長さん、陛下から許可が下りましたよ。数百万円までなら大丈夫だそうです」
「ほぉ、そうか。1000万円未満なら9束(おおよそ900万円分)を持って帰ってもいいんだな?」
「はい、そうですが、全額で1000万未満という意味なので、私と伍長さんで9束ずつという訳にはいきませんよ」
「う~むなるほど……。って知れっと自分の名前も入れたよな? ルーズルートも欲しいのか?」
「ええ、もちろんです。侍従長と局長を兼任していますけど、お金というものはすぐに無くなるものなんですよ。」
「そ、そうか」

 あれ? こんなにルーズルートって腹黒かったっけ? というか侍従長という役職に加え特殊諜報捜査局の局長という管理職的立場を2つ持ってきているルーズルートがお金を持っていないわけではないよな!? と2つをツッコんだ。
 なお、前者はともかく、管理職を兼任しているルーズルートが貧乏なわけがなく、実際普通の人よりかは倍以上貯金を持っていたりする。ただ、それでも欲しがるというのは、もしかしたらルーズルートの意外と知らない腹黒さから来ているものかもしれない。

「となると私とルーズルート、そして爺ちゃんとチャーチムで分配すると、一人225万ほどか。いや、陛下の分も必要か?」
「ああいえ、陛下の分は要りませんよ。陛下ああ見えまして大富豪でもありますから」
「そうなのか?」

 皇居の固定資産や皇宮財閥の利益等を合わせると京を超える資産があるという噂がある。 
 というのも、皇居の広さというのが下手すれば小国並みになる恐れがあり、その中に絶滅危惧種などの動植物が数多く生息している。それらを住まわすためには結構な広さの土地が必要で、さらに首都圏にも近い場所にある。
 これだけでもだいぶ資産はあるのだが、さらに絶対に倒産しない会社である皇宮財閥のオーナーでもあったりする。
 CEOではないので、経営方針には関われないのだが、CEO自体が皇族であり、更に皇族経営なので利益の一部は皇族に充てられる。
 これは独占禁止法に違反しそうだが、まず独占禁止法事態この世界にはないので違反はしていない。

「ささ、取り分は後にして、早く詰め込んでください。私は貸金庫のほうを担当しますので」
「わかった」

 伍長は札束が大量に置かれているカートからボストンバックに詰めれるだけの大金を詰め、残りはカートで上まで運ぶことにする。
 ルーズルートはというと、何やらドライバーにも見えなくはない器具で貸金庫の中から貴金属類や書類などをあさっていた。
 ここまでくると諜報員じゃなくて工作員である。諜報員どこ行った!?

「なぁ、ルーズルート。貴金属類をあさるのはまだしも、なぜ書類をあさる必要があるのだ?」

 疑問を感じルーズルートに問う。

「いえ、もしかしたら国家機密文章とか企業の機密文章とかが仕舞われている可能性もありますしね。」
「そういうもんか?」
「ええ、たまにあるんですよ、企業の機密文章が銀行の貸金庫に保管されているということは……。しっかしありませんね、やはり民間用の貸金庫にはないんですかね」
「その言い方だと民間用以外があるようだが?」
「ええ、あります。国家機密文章などは普通はそこに入れられています。まぁそういう場合は銀行よりも国会の地下など政府の主要機関の地下にあることが多いですが……」
「そうなのか、で? 何か見つかったか?」
「いいえ、大体の書類は個人的なものか何かの契約書が多いですね。あとは……うん?」
「どうした?」

 お金を積み込むのをやめ、書類をあさっていたるルーズルートの手が止まったのを訝しむ伍長。

「AP 1 3 1 9 3 1 5 4 7? なんですかこれは?」
「何かのパスワードか?」
「どうでしょう……。一応持って帰りましょか?」
「任せる」

 その資料を折りたたみ、引き続き貸金庫の中をあさるルーズルートたちであった。

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