Federal Investigation Agency Investigator・連邦捜査庁の捜査官~皇帝直属のエージェントたち~

11月光志/11月ミツシ

第6章8話

「……あ! あれですね」

 アンデス森林から国道沿いを歩いて20㎞、ようやっと市街地が見えてきた。
 ペルシアント惑星王国首都パリス・ペルシャアントは人口およそ1200万人、その西はダ・ローゼンクロイツ公爵領が東はブランテン山脈と呼ばれる巨大な山脈があり北には王宮省が管轄する私有地が広がり、南には同惑星内で一番を誇る巨大な湖を有する場所にある。
 人口密集度的には惑統連加盟国内で1位を誇るが(ス連邦は首都自体が広いので密集度的には3位)生活環境は制裁の影響で加盟国内では下から10位。
 そしてこの首都、ほかの国家の首都とは違う事がある。それはパリス・ペルシャアントが要塞都市であることが挙げられる。
 これは主にこの国が昔から睨まれやすいからというのがあるが、一番の理由はス連邦からの最終防衛として築かれたらしい。だが、近年では戦略爆撃や最終破壊兵器(核・生物・化学・超新星・D弾)といった兵器によって要塞は無意味になってきた模様。
 で、伍長さんたちはというと、第1要塞というべき壁を超えるために西門の近くに来ていた。

「検問所か……。どうする? 私達はこの国の国民ではないからな、さらにパス(地球で言うパスポート)も持ってきていない。さらに自衛用として持ってきた銃も検問で引っ掛かるだろうが……。」
「えっ?! 検問所ですって!?」

 検問所と聞いて驚愕をあらわにしたルーズルートを伍長は訝しむ。

「どうした? まさか検問所の存在を知らなかったとか……」
「ええ……。ちょっと……」

 ルーズルートはあたりを見渡し、誰もこちらを見ていないことを確認すると、近くにあったバス停のベンチに腰を下ろし伍長に手招きした。

「で? なんだ?」
「はい。実は私もついさっきまで検問所の存在を知りませんでした。」
「おいおい! 事前に陛下から聞いていなかったのかよ!」

 不満を口にする伍長に、ルーズルートは首を横に振る。

「いいえ、陛下も知らない雰囲気でした。というより私はパリス・ペルシャアントへは門を普・通・に・通・る・だけという情報しかありませんでした。もちろん衛星写真で確認しても検問所らしきものは確認できませんでした。さらによく見てください。今日、しかも検問所の状態から見て急遽設置されたような作りですからおそらくはこの中で何があったのでしょう。先ほどからの軍用車両の頻繁な移動からしても、間違いないでしょう」
「そうか……。ただルーズルート、私達が中に入るためには本来ならばあそこを通らねばならなかったのだろう? 今言ったことが本当ならば一日くらい待てば解除されるかもしれないが、そんな時間はない。どうする? 強行突破するか?」

 強行突破とは、武器の中の一つにある旧世代型粘着爆弾C4を設置し爆破することである。
 万が一、金庫へアクセスできなかったときのために、強行突破用で持ってきていたのだ。
 だが、ルーズルートはこう答える。

「いえ、それは危険です。C4をこちら側の壁に着けて起爆したら向こうにある民家、民間人に怪我を与える可能性がありますし、明らかに外部からの侵入者があるとして警備が一層厳しくなるでしょう。」
「では、どうする? 検問所に堂々と向かうか?」
「それこそ、危険な行為ですよ。ですからあの穴を使います。」

 ルーズルートは鉄筋コンクリート壁の高さ1mほどにある横穴を指さした。
 ちょっと遠すぎるので、穴の様子を伍長は双眼鏡で確認する。

「高さ1mのところに縦15cmほど、幅云十メートル……。おそらくあれは、銃眼だろうな……」

 銃眼とはトーチカや城壁などに弓矢や銃弾などを構えるために備えられた小さな窓のことを示す。日本では狭間と呼ばれている。

「さすがです伍長さん、伊達に元歩兵だった人は違いますね」
「何を言うか、ルーズルートお前も元歩兵だろう? まぁ今はそんな話はさておき……あの銃眼がどうした? まさかあそこから入るとは言わんといてな……。さすがにあそこに入る自信はないぞ」
「ええ、さすがに無理ですよそれは。肩とかお腹がつっかえると思いますしね。私が言いたいのはあの銃眼から内側に手を入れそこにC4を付けて起爆すると言いたいのですよ」
「それを行っての利点は? 破壊したらしたでめんどくさいことがあるぞ」
「そうですね、まずそのめんどくさいという事ですが、確かに爆破すれば憲兵やらが気が付いて向かってくるでしょう。なので起爆は南西方面の銃眼にしましょう。そうすれば、西門の憲兵たちが爆破に気が付いても中に入れるだけの時間は稼げます。」
「ふむ、それは分かった。ではもし仮に起爆した地点に憲兵がいたらどうする? 入れないではないか?」
「確かに憲兵がいたら厄介ですが、この都市の南西側は湖が近いので倉庫群が密集しています。憲兵はおろか一般人への被害もないでしょう。」

 ドヤ顔で語るルーズルート、だが伍長はさらに問う

「しかし、銃眼となると壁の向こう側は軍が管理したいる可能性だってあるぞ、爆発の影響で軍がくる可能性だってないか?」
「その心配は無用です。衛星写真でもあの辺りは銃眼の奥にコンクリートの敷居があるだけで軍もいません。さらに伍長さんも見ましたよね? あの軍用車両の数……。」
「ああ、見たぞ。それがどうした?」
「全部それらはこの首都へ向かっていましたよね? 軍も動く事態が中で起こっているとしたら、その犯人が逃げるために爆破した……。そう考えてくれるはずです」
「ほぉ~、その根拠はどこにある?」
「ありません、すべて勘と運です」
「運だのみかよ!? しかも勘だけでよくそこまで考えることが出来たな?!」

 ルーズルートの頭の良さに改めて気づかされた伍長閣下であった。


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