Federal Investigation Agency Investigator・連邦捜査庁の捜査官~皇帝直属のエージェントたち~

11月光志/11月ミツシ

第5章4話

 連邦捜査庁のコンクリート打ちっぱなしの室内、ここは地下なのだろうか? 大の大人がやっと手を届くぐらいの高さに鉄格子が取り付けられ、そこから太陽の光を室内へと取り込んでいた。
 ちなみにこの鉄格子を付けたのは、暇だったから仕事を姉から押し付けられたフェルトさん。神学を使うのもあれだというので脚立を使い取り付けようとしたが、上った瞬間に足を滑らせ地面に転がり、やっとの思いで登り切ったと思えば、脚立が揺れ見事なまでに地面へと落ちた。
 これを見ていた筆頭事務次官兼フェルトさんの育て親のようなアリスティンは、フェルトさんに脚立に対するドジっ子属性があったことに何とも言えなくなった。……男の子なのに……

 だいぶ話がずれてしまったのだが、そんな地下室らしき場所、中央には事務机に電気スタンドが取り付けられており、部屋の右奥の扉付近にも同じく事務机が置かれている。
 まるで取調室と言わんばかりの配置だった。

 その地下室の中央に置かれた事務机を挟むように、格子側に置かれたパイプ椅子で項垂れる男がいた。伍長が間違いメールに苛立たせ、スマホをバッキバキに壊してしまい、その腹いせで逮捕した、例のホテル放火殺人および皇帝暗殺事件の容疑者の金髪の男である。

 男の眼もとにはくまが出来ており長時間眠っていないことを示していた。金髪の髪もより一層ぼさぼさになり、逮捕された時来ていた服も見事なまでにしわくちゃになっていた。

 そんなぐったり項垂れる金髪男を監視する男がいた。黒髪を7:3分けにし、ちょび髭を生やした男がマジックミラー越しで男を観察している。
 一見するとどこかの総統閣下にも見えなくはないこの男……、何と! 伍長閣下もといアドルフ・アルベルトであった! 
 ルーズルートからもらった変装ネクタイをしているので、今はこんな姿だが、ネクタイを外せば、3:7分けでちょび髭ではなく何とも立派な髭を蓄える伍長さんへと戻ることが可能なのだ!
 なおたまに伍長さんは、7:3分けと3:7分けを使い分けたり、髭の形が変わったりするので、3:7分けが伍長さんのトレードマークとは思わない方がいいらしい。……ち、違います。違います。別に伍長さんの設定を忘れてしまうとかじゃ、ないんです。

「刑事さぁ~ん、いい加減に出してくださいよぉ~、今日で1週間ですよ…」

 不意に、男がそう嘆く。
 そう、男が逮捕されてからかれこれもう1週間がたとうとしていたのだが、法的手続きやなんやらもあってか未だに男は拘束されたままだった。
 基本的人権が無視されている用も見えなくもないが、それが特殊諜報捜査局の仕事でもあり、なにより男は皇帝の暗殺に関与した疑いがある。連邦捜査庁としても薬物所持(略)だけで検挙はしたくなかった。

「薬物の所持は認めているというか、現行犯何だからいい加減に検挙してくださいよ~」
「そうは言うがな、君にはそれだけの罪で検挙したくないんだよ……」

 さすがの伍長さんも生まれて初めてやる取り調べを連続7日やることになるとは夢にも思わなかったので、いい加減に苛立っていた。
 誰もがピリピリしている状態である。

「いやね、僕は確かにあのホテルでフロント係をしていましたけど、あの時僕はロビーにいて火災が起こった後もロータリーでけが人の手当てや避難誘導をしていました」
「わかってる、でもね今頃逮捕されている実行犯たちを誘導したり知ってても黙認したりしても国家元首暗殺罪っていう大罪なんだよね。そして君の指紋とDNAが焼け残ったパイプから検出され、目撃証言から君と数名の男たちが3階の火災元へ向かうのを見たという証言があるんだぞ! それはどう説明するんだ!?」
「だから、知りませんって!」
「なんだと!?」

 伍長の声が室内を響き渡らせ、ちょっとキーンって耳が痛くなる。

 ちなみに国家元首暗殺罪は国家反逆罪同様の重罪で最高刑が死刑・辺境惑星永久追放・終身刑・シベリア永久凍土生命活動停止刑などが適用される。証拠が十分にあるか現行犯ならば無罪はあり得ない。
 ちなみに国家反逆罪の中には国家最重要機密事項漏洩も入るので、もし外国へこれに指定された文章を売ろうもんなら首が2個ほど吹っ飛んだり切られる覚悟でやらねばならない。
 一つ目の首は物理的な生首だが、もう一つの首は家族親族、知人、恋人・家族関係との縁を完全に断ち切ることが求められる。
 もしいずれかの縁が残っていた場合、その人たちは夜な夜なノックされ、覆面をかぶった公安警察の人達に連れていかれるという都市伝説めいた噂がス連内ではささやかれていた。

「いい加減、自白しようよ。故郷のお母さんとお父さんと私が泣いているよ」
「刑事さんは泣いてないでしょ!? というか母さんも父さんももう亡くなってるし……」

 すべて否定され、伍長が泣きそうになった。

「……。……。かつ丼食うか?」
「急に!?」
「食べるか?」
「まぁ、腹も減ってますし……。」
「食べるなら自白しような」
「酷い!」

 死刑に近い刑期を過ごす代わりにかつ丼を食うか、死刑に近い刑期を免れる代わりにかつ丼を食わず美味くも不味くもない飯を食うか……。究極の選択肢に男は立たされた。
 ちなみにこの選択肢を強いられた場合、中の人はかつ丼を食う事を選ぶ。
 ……と、その時。

 ダンダンダン

 扉を殴るように叩き、かつ丼を金髪男の前で食べようとした伍長が、ファッ!? とかなった。

「失礼する、総督省公安警察警備第2課の風見川だ。…………だな?」
「は、はい。…………ですが……」
「お前を貴族追放令を逃れた残党として国際指名手配されていたバルスティアフロード家とのDNAが一致したため国家準反逆罪の容疑として令状がある。
 今は……13時13分だな。再逮捕する」
「はっ!?」

 パイプ椅子に腰縄と共につながれていた手錠が外され、その代わりに重々しい手枷がはめられた。
 唖然とする伍長と金髪の男。
 連れていかれる金髪男の鎖を持っている風見川に伍長が割って入った。

「ちょ、ちょっと待ってくれ。その男は私達が逮捕した男だろう!」
「ああ、法律どころか憲法ギリギリの捜査だったがな」
「ぐっ…、しかしその男は我々の管轄内のはずだ! 何故あなたたちが再逮捕するのだ? その理由は……」
「ゴゴれ!」

 そういい放ち風見川たちは取調室から出ていった。
 風見川が別に午後にレモンティーを飲みたいから、ゴゴれと言ったわけではない。
 ちなみにゴゴれと言うのは、大手インターネット会社の略名で正式にはゴーゴレというらしく、これは皇宮財閥傘下の企業と思いきや実は会社の登録では、惑統連本星となっている。

 ちなみにだがこの世界……銀河系ではインターネットがあまり普及していない。代わりに中の人が説明しにくい……というより説明しようのない”何か”がフェルトワン銀河惑星国との通信を支えている。
 ここで重要なのは、あくまで”あまり”なので多少なりとも存在はしている。ただその活用方法も日スおよび惑国(惑星統合連盟と国際社会または国際連合)の国交開通により地球社会との通信用に用いられている。そのほかにもゲーマーやヲタクなど特定の趣味をお持ちの方や、記者やジャーナリストが地球の記事を書くときに用いられており、中でも日本の国民的ゲーム……。赤い配管工と緑の配管工が姫を助けるために冒険するゲームはこちらでも大人気だったりする。
 そのゲームを配信したり統括しているのが、ゴーゴレなのだ。
 なので住所的には惑統連に入るゴーゴレだが、特定の国家に加担しない中立企業としてやっている訳だ。

 ただ、伍長達が公務や私用で使っているスマホ・携帯・パソコンその他”何か”を使う電子機器しか使ったことないのでインターネットを専門に扱う会社のことなんてさっぱりわからないので、首を右に……45度傾けるしかなかった。
 なお200度以上傾けた場合、それはもはや左になるのだが首だけを傾けれるお前はいったい何者なんだ?!




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