Federal Investigation Agency Investigator・連邦捜査庁の捜査官~皇帝直属のエージェントたち~

11月光志/11月ミツシ

第5章1話

 無人機動兵器暴走事件および皇居職員殺人事件から数日が過ぎた。
 皇居職員殺人事件は現在も犯人の手掛かりを掴めていないまま泥泥沼沼略して泥沼化してきた。なにせ犯人につながる指紋もDNAも被害者の遺留物からも犯人につながる証拠は検出されなかった。それどころか凶器すらわからないままである。

 そんな泥沼化となりそうな事件を捜査している守備軍と警察庁と一部連邦捜査庁の皆様とは少々無縁の存在の特殊諜報捜査局では、機動兵器の胴体内で発見され、一時病院へ運ばれた後責任もって育てることになった双子の兄妹たちがすくすくと育っており、局内でマスコットキャラとして愛されていた。
 そんな兄妹の面倒を見ているのは、A班の班長でもあるアドルフ・アルベルト…伍長閣下である。
 あれだけ駄々をこねていた伍長閣下だったが、なんだかんだで兄妹の面倒をしっかり見ていた。
 お腹がすいて泣いた二人にきちんとご飯(惑統連開発の乳児専用食と乳児専用ミルク)を上げ、きちんとオムツも替え、9時になったらきちんと支給してもらったベットで二人を寝かすなど、イクメンと化してきていたのであった。
 だが仕事中はさすがにずっと面倒を見るわけにいかないので、女性職員や暇な職員が代わりばんこに面倒を見ていた。実に良い職場である。

 そうそう、腰を痛め入院していたヨシフおじいちゃんなのだが、めでたく退院し、現在は療養のため仕事をお休みし兄妹たちを曾孫可愛がりをしていた。
 そのヨシフおじいちゃん。退院早々自分の孫が子供を育てるといったもんだから、相当びっくりして倒れかけた。





 ピーンポーンパーンポーン~

 呼び出しを告げるチャイムが鳴り聞き覚えのある声が特殊諜報捜査局の局内でのみ流れた。

『A班班長アドルフ・アルベルトさん。アドルフ・アルベルトさん。お伝えしたいことがございますので至急職員室…じゃなくて特殊諜報捜査局局長室までお越しください』
「学校の校内放送じゃねぇか!」

 伍長が椅子から勢いよく立ち上がりスピーカーの方を向いて勢い良くツッコんだ。

『…伍長さん、そんなツッコんでる暇なんてないので、急 い で ! 局長室まで来てください』
「えっ! なに聞こえてんの!?」

 まさかの話す側も聞こえる放送だった。

『そうですよ、ばっちり聞こえてます。伍長さんが『職員室ってどこだよ!?』ってツッコんだ部分もばっちり…』
「いっとらんわ!」

 本当は伍長の心の中でなのだが…。

『はいはい、という事で伍長さん。あと2分以内に来なかったら貴方の机の上に置いてある本をすべて逆さまにしますよ』
「地味だなおい…」

 この国の歴史から法律から推理小説など伍長の机の上には様々な分野の本が置かれていた。
 これを使ってこの世界…宇宙の事を学ぶつもりなのだろうか? 
 にしても本当にやることが地味だな! 

『さぁ、伍長さん。早く来てくださいよ、さぁ、さぁ!』
「ああ! もう、わかった! ちょっと待ってろ! すぐに向かうから!」

 伍長は椅子に掛けていたスーツの上着を取りダッシュでお隣の局長室へと向かった。
 隣なら放送掛ける必要なかったじゃん…。と局員はそう思ったがツッコんだら世界が終わりそうな気がするので諦めた。世界が終わるの!?


 局員室を飛び出した伍長は流れるように隣の局長室にノックなしに勢いよくドアを開けた。

「あっ、意外と早かったですね。そんなに急がなくてもよかったのに…」
「どっちだ!?」

 ルーズルートが局長室の奥の窓際の席でにっこり笑いながら伍長を出迎えた。

「ははは、冗談ですよ。まぁお掛けください」

 何やら嫌な予感を感じながらも来客用のソファーへ腰かける伍長。

「さて……伍長さん。貴方に上層部……ああいえ、陛下からの貴方直々の非・公・式・の依頼です」
「私直々? というより非公開ってどういう意味だ?」
「そのまんまの意味ですよ。あまり公には出したくないので国家機密扱いにはなりますが…。貴方直々なのはまぁ……陛下からの信頼からでしょうか?」
「なるほど……。で? 今回は何を盗めばいいんだ?」

 諜報員=窃盗というイメージが伍長の中にはあるようだった。
 まぁ実際、先日の国際統一連邦化計画の機密資料の奪還も言い換えてみればただの窃盗である。

「いえいえ、今回は諜報活動ではありません。この局のもう一つの仕事ですよ」
「もう一つの…仕事?」
「忘れたんです? 特殊諜報捜・査・局ですよ?」
「まさか……。捜査の方か?」
「はい」

 『そっちかぁ~』とつぶやく伍長に『そっちです』とすました顔でルーズルートが答える。

「んで? 何を捜査すればいいんだ?」
「……伍長さん」
「なんだ?」
「今から捜査内容を話しますけど、くれぐれも口外してはいけませんよ」
「? わかった」
「……先日……ああいえ、私と伍長さんが久しぶりに再会したホテル覚えてますか?」
「ああ、あの時火災があって、今の職業につくことになっているからな」
「はは、そうですね。……話は戻しますが、伍長さんが陛下を助けに向かったその直後に私たちがいたロータリーに軍が来たのですよ」
「軍が?」

 伍長さんの脳内で戦車師団が大通りを進んでくるシーンが思い浮かんできた。

「あぁいえ、そんな戦車師団が……とかじゃなくてですね」
「……お前はあれか? 私の脳内が見えるのか? エスパーか? エスパーなのか!?」

 思い浮かんでいたシーンがルーズルートに筒抜けだったので、いよいよ伍長はルーズルートの人間説を疑い始めた。

「いえ、貴方とはもう何十年もの付き合いじゃないですか。そりゃあ貴方の考えていることぐらいわかりますよ」

 どうやら人間説は正しかったようだ。

「まぁそんな冗談はさておき……その火災の原因がどうやら放火である可能性が高いんですよね」
「なん……だと!?」
「そこでですね。警察庁と国防軍治安維持庁は合同捜査本部を設置し捜査を開始、近隣の防犯カメラや哨戒ドローン、火災付近である3階付近を調査したところ、3人の男が容疑者として絞り込めました。
 ハッキング防止のため紙の書類という形ですがそれが火災現場の報告書と容疑者の名前住所などが書かれています」

 そういうとルーズルートは一つの資料集を提示した。
 それを一ページ一ページじっくり時間をかけて黙読する伍長閣下。ただその目は時折見開いたり反対に目を細めたり表情豊かですね……。とルーズルートが思ったほどだ。
 そして最後の容疑者の名前や顔写真を見た伍長は、3人目の男の顔写真に見覚えがあるのに気が付いた。

「なあ、ルーズルート。この男、どこかで見たことあるような気がするんだよな……」

 ぼさぼさな金髪に緑色の眼……。年齢は27歳でぼさぼさ頭でなければそこそこの好青年だろう。
 だが伍長はこの顔に何か物足りなさを感じていた。

「気が付きました? ではその男に眼鏡とある服装を着せた時の写真がこれです」

 伍長はその写真受け取り見た瞬間、顔色が変わり、絶句した。

「おい、この男…!」
「ええ、気が付きましたか。そうですこの男は、あのホテルで……フロントでチェックインを担当している……つまりフロント係の人間だったという事です。今回伍長さんにやっていただきたい任務ですが、この男に放火の他に余罪があるかもしれません。それを暴き現行犯で逮捕してください。
 どんな罪でも構いませんが、くれぐれも警察を呼ばずに路地裏などで逮捕してください。
 電話をくれればハウニブⅡがそちらに向かいに行きます」

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