Federal Investigation Agency Investigator・連邦捜査庁の捜査官~皇帝直属のエージェントたち~

11月光志/11月ミツシ

第4章8話

 あの事件から翌日。
 前日の無人機動兵器の暴走事件はフェルトさんにより箝口令が引かれ皇居外に流出することは無かった。
 だが、その直後、瓦礫処理をしていた守備軍の兵士数人が裏にある雑木林の獣道付近で崩れ落ちたレンガと共に、木に寝そべるように倒れていた女性を発見した。
 だが現場に医師が来た時にはもう手遅れだった。
 直ちに皇宮財閥本部内の医療棟へ送られ司法解剖の結果、死因は首を絞められたことによる窒息死だった。
 しかも索条痕の角度が自殺ではありえない形で付いているので、他殺だろうと判断された。
 これにより警察は守備軍と合同捜査本部を設置し、犯人の捜索を始めた。

 ……………はいいのだが、彼らには問題が残っている。
 それは…

「だぁかぁらぁ! 何で私がこの子たちの里親にならなければいけないんですか!?」

 双子の兄妹が一体だれが預かるかである。
 現在絶賛会議室で誰が預かるか討論議論中だったのだが、事前に誰かが手回しをしていたおかげで満場一致で伍長さんが預かることになった。

「まぁ実質的に里親ですけど…。伍長さんお願いしますよ」
「いや…。何も私じゃなくルーズルートとか…ほかの人がいるじゃないか!」

 確かにこの部屋には、ルーズルート夫妻、フェルトさん、伍長さん、チャーチム首相、シェリアさんのの6名が座っていた。
 考えてみれば物凄い顔ぶれである。
 超国家の最高元首のフェルトさんに、元米国国防省長官と上院議員でもあり侍従長でもあるルーズルート、その妻であり皇宮省筆頭事務次官でもあるアリスティン、元西ドイツ首相でもあり特殊諜報捜査局A班班長であるアドルフ、元英国首相であり特殊諜報捜査局C班班長のチャーチム。
 凄いな…。元も含めるが、首脳会談レベルではないか!

「だってねぇ~。私もアリスティンも共働き状態ですので育てるなって無理です。陛下はまだまだそんなお年頃じゃないですし…。シェリアさんは子育てより仕事派なので棄権しましたし…、ヨシフさんはこの件とは無縁に近いです。チャーチムさんは仕事が忙しいので無理だそうなので、結論的に伍長さんが…」
「ちょーっとまてぇ! いろいろおかしいよな!?」
「おかしいって?」

 ちょっと何言ってるかわかんない…。ととぼけるルーズルート。

「いやいや、ルーズルート夫妻はまぁわからんこともないよ! チャーチム! お前私とおんなじ仕事場だろう!? そんな忙しいわけないだろう!」

 矛先はチャーチムへ…。

「まぁまぁ伍長さん。諦めましょうよ、結局みんな忙しいのですから」
「あっ、チャーチム! てめぇ話そらしやがったな!」

 わかりやすすぎていっそ清々しく話を逸らす首相。ついでに目も伍長からそらし、口を尖がらせ口笛を吹く真似をしている。

「ねっ、頼みますよ伍長さん。私達もサポートはしますし…」
「サポートって…。てか私一応国家公務員ですよ? そんな育てる暇も余裕もないです」
「うん、知ってる。だから国家公務員法の改正案を国家評議会に提出してもらうよう手回ししておくからさ」
「それ、内政干渉の憲法違反じゃね!?」

 伍長さんはしれっと言われた衝撃発言に衝撃を受けた。
 連邦最高憲法によると大天皇帝はス連国内の内政に直接干渉してはいけない…。とはっきり明記されている。
 そこを指摘した伍長さんだったが、フェルトさんは、フフフと子供ながら不敵な笑いをしこういった。

「直接干渉はだめなだけで、直接じゃなければ大丈夫!」
「それ! 言っちゃいかん奴や!」

 『私はあの日…国家の闇というものをはっきりと見たような気がするよ…』と伍長はこの時のことを後日こう述べた。
 ちなみに、皇宮財閥は実質上ス連の国政や経済を裏で操っているとも捉えられる。しかも皇宮財閥は役員全員が皇族関係者が占めるので、この国の民主主義はもしかしたら普通の民主主義では無いのかもしれない。つまり本当の国家の闇はこっち…。

 それを聞いていたルーズルートが最も周りの人達が疑問になっていたことを代理で問う。

「ちなみに陛下、憲法違反をせずにどうやって提出するのです?」
「えーっとね、皇宮大臣(皇宮省)に改正案を総督大臣(総督省)に回してもらって、そこから首相に回してもらう予定」

 手を折り曲げたりして説明しているフェルトさん。

 これを世間一般的に見れば、国民のほとんどが憲法違反だろ! と思うだろうが、実際は黒ではないグレーゾーンなので中の人も言ってみれば微妙なものである。
 直接内政干渉はしていないが、直截でなければいいのだろうか? これは誰にも分らない。
 ついでにいうと、過去同じような事をして国家評議会に強制召喚された大天皇帝がいたのだが、その時、直接内政には干渉してないので、憲法違反ではない! と言ってしまった。
 また今回も同じような事が起きるんじゃないか? そう皇帝陛下の最側近でもあるルーズルートは思ったそうだ。

「というわけで、ね。伍長さんこの子たち預かってあげてよ。法律は私の方で何とかしておくし、私達もできるだけサポートするから…。ねっ」

 フェルトさんは伍長へ軽く頭を下げた。
 それに続けと残りのお方たちも軽く頭を下げたり数人は懇願していた。

「グヌヌ…はぁ、わかりました。」

 周りの人達が一瞬にして明るい顔へ変化させた。
 というか、グヌヌっていう人本当に要るのかね?

「ただし! 条件があります。
 一つ、もう少し広い宿舎を用意してください。これ大事ね。
 二つ、諜報・捜査活動中は誰か預かってください。これも大事ね
 三つ、手当出して!」

 毎回毎回、これ大事ねというのは彼の口癖だからなのだろうか?
 結論から言うに、一つ目と二つ目の条件は呑まれることになったのだが最後のは渋に渋られ拒否された。その時の伍長の顔ときたら、世界の終わりを知ったかのような絶望で満たされていた。
 まぁ、断られるのも無理はなく、連邦捜査庁の職員の月給が良くて100万悪くて50万というなかなかの待遇の良さだった。
 これには理由があり、いかんせんこの仕事には死に関わることが多いので保険というのもあるそうだ。
 しかも食住の保証付き。
 まぁ、給料をもらっていない伍長にとっては手当てが無いのはショックだったようだが、気にすることは無かろう。

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