Federal Investigation Agency Investigator・連邦捜査庁の捜査官~皇帝直属のエージェントたち~

11月光志/11月ミツシ

第2章9話

大天皇帝がお目覚めになられて1日が過ぎた。
 伍長はいまだにカプセルに眠ったままである。
 昨日の火事はス連全土…いや、フェルトワンを構成する惑星国家すべてに緊急速報で伝えられ、思わぬ反響を呼んだ。
 国内世論では国家の象徴たる存在の皇帝になんてことを! と怒りが蔓延し、反対に自分の命を顧みず火災現場へと突っ込み皇帝を救助しようとした伍長に称賛や絶賛の声が上がった。
 しかし対照的に、ぺ王国では暗殺を英雄視する声が多く、伍長のことは報道されなかった。

 それもそのはず、ペルシアント惑星王国はス連邦が最も嫌う国家でもあり、一度本気で核戦争をしようとしていた過去があった。
 その時は惑星統合連盟の賢明な判断により仲裁することが出来たが、もし仲裁がなければペルシアント惑星王国はこの世から消えていただろう。
 なぜス連邦が負けないかというと、負けないじゃなくて負けれないといった方が正しい。
 何せこの国には変態的なマッドサイエンティストや変態的な軍事技術やインフラ整備を受け持つ巨大財閥、皇宮財閥があるもんでね…。
 何かの計算によれば皇宮財閥が世界を引きずるという計算が…

 話はすごい戻すが、カプセルがある部屋には3人の男がいた。

「まだ…目を覚ましませんか?」とルーズルート。
「ああ、もう少しだと思うがね…」と首相
「アドルフ、死んだら遺体をシベリアに埋めるぞ!」なんか脅迫に近い怒り方をしているヨシフ。

 実際はス連邦の最極東の衛星惑星にシベリア連邦という地球のシベリアとまったく同じ気候をした惑星があるのだが…まぁそんなこと彼らが知る由はなかろう。
 なおス連邦はこのシベリア連邦を重要防衛地点と位置付けているのだが、なんか永久凍土の下に大量の天然資源が埋まっているかららしい。
 ス連邦や一部惑星国家では、永久機関動力エンジンやその派生型のおかげで、エネルギー問題を解決できたのだが、まだまだ石油などを使っている国もあるので、それらが渡ると一大事!
 ってかそこに埋められんのか…怖!
 と、入り口の扉が開き、一人の医師が入ってきた。その医師は何かを言いたそうにしていた。

「…皆さん、私から提案があるのですが…」
「なんでしょうか?」
「この装置は本来1日の使用で脳の組織から何まで回復するはずです、ですがアドルフさんは…」
「…」
「この事態を打破する方法が存在します。それを使いますが…」
「その方法は…?」

 医師はためらいながらもこう発した。目の視点は伍長の入ったカプセルの方へ向いていた。

「強制帰還です。平行世界とのアクセスを断ち切り意識をもとに戻す方法です。ただこれは…」
「問題があるんですか?」
「ええ、確実に意識はこちらに戻ってくるでしょう。ですが彼の向こうでの記憶が消え去る恐れがあります。正確にはこのカプセルにつながれて約1日間の記憶は残るでしょうが…」
「それは、あれですか? 伍長さんの記憶は平行世界についてから1日分の記憶しか残らないと…?」
「いえ、平行世界にきてから数時間分の記憶でしょう。それ以降は残っていない可能性が高いです。」
「そうですか…少々話をさせてください…」
「では、私は廊下で待っています」

 医師は廊下への扉を開け、そのまま待合用のいすに座った。
 残された首相たちは伍長のカプセルに近寄り議論を始める。

「閣下、ルール先生。私は強制帰還させた方がいいと思います」
「なぜですか?」
「…フェルトベルク陛下の記述を拝見させていただきました。そして昨日、医師に帰還時は向こうにいた人は死に、そこから意識が戻ってくるのか? と聞いてきました」
「結果は…」
「…はいと答えました。」
「それは強制帰還もか?」
「いえ、記憶がないのでわからないそうです。死んだことは間違いないはずなのですが、本人の記憶にも死んだときは分からないそうです」

 考えた末…

「そうじゃな、アドルフが悲惨な死を遂げその記憶を持ってくるよりかはいいじゃろう」
「分かりました、私も意義はありません」

 その後、首相が代表して医師にその意思を伝え、強制帰還を行ってもらうことにした。
 医師は何やら電子機器を少々いじってから…

「では、今から強制帰還を行います。よろしいですね」

 医師は電子機器の赤いボタンを1回押した。
 中の人はここで爆発するオチを期待していたのだが、そうなると話が進まなくなるので…いやカプセルはそこそこ頑丈なはずなので、伍長は生きているだろうが、爆発落ちはまたの機会に…

 ボタンを押して1時間たった。
 伍長はまだ眠ったままだ。陛下が帰還した時のような警報音も一切ならない。

 ボタンを押して2時間たった。
 伍長はまだ眠ったままだ。陛下が帰還した時のような警報音も一切ならない。

 ボタンを押して2時間半たった。
 伍長はまだ眠ったままだ。だがようやく、ビービービーと警報音が鳴り、脈拍や脳神経そして伍長の意識が戻ってきた。

 ボタンを押して3時間たった。
 伍長はまだ眠ったままだ。

 ボタンを押して3時間半たった。
 伍長はまだ眠ったままだ。

「……って! 早く起きてこんかぁーい!」

 ヨシフおじいちゃんがしびれを切らして、カプセルを杖でこじ開け、伍長に一発殴った。

「! 痛でえええええええ!」

 伍長が目を覚ました。
 だがその伍長はカプセルの中でうずくまり雄たけびを上げていた。

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