Federal Investigation Agency Investigator・連邦捜査庁の捜査官~皇帝直属のエージェントたち~
第2章7話
「はあ、はあ、はあ…し、死ぬかと思った!」
ここはスウェットハーヴェン特別自治区内の少し郊外、小高い山の上に立つ巨大病院の来客用の出入口前の駐車場である。
その駐車場には1台のパトカーが止まっており、パトカーにもたれかかるように首相が倒れこんでいた。
そしてこの病院、一見するとどこか巨大な軍事施設にも見えなくはない。
それもそうだろう、ここはもともと旧ク連時代戦争でけがや病気にかかった人々を隔離するために作られた軍事病院だからである。正確に言えばもともとあった場所にこの病院が立ったわけだが…。
軍事病院時代の名残というか現在の病院の設計元が軍事病院とまったくもって同じ外見なので、余計な部分…例えばレーダーとか、対空砲格納所とかがあったりする。
もちろんそれらは病院の奥の旧館にあるのだが…夜になると、その旧館でうめき声が…
まっ、そんないわくつきの病院の駐車場になぜ彼らが死んだような顔をしているかというと…、
「大丈夫ですか? ってわぁ! おじいさん、口から出てはいけない何かが出ている!」
悲鳴を上げているこの女性のせい。
なにせこのリフェリアさん、見た目に似合わず運転が下手というか、豪快というかなんというか…とにかく乱暴な運転で、緊急車両用のサイレンを鳴らしながら、交差点を見事なまでにドリフトするわ、小さな坂道では思いっきりエンジンかけて空中に吹っ飛ばすわ、坂道なんかカードレールぎりぎりでハンドルを切るから危なっかしいわで、ここまで来たわけ。
もちろん後部座席に首相とヨシフおじいちゃんが座っていたのだが、もう二人とも何かアクションを起こすたびに悲鳴を上げ、顔を凹ませているというね…。
この言葉ではっ! とした首相は慌てて後部座席のドアを開ける。
そこにいたのは老紳士のようなヨシフ…ではなく、後部座席で横になったまま動かないヨシフの姿だった。
しかも、そのお口からは何か…人間が出てはいけない白色の…よく見ればヨシフの顔をした塊が口からヒョロヒョロと出ていた。
「ええ! 閣下! しっかりしてください!」
ご老体にはやってはいけないだろうが緊急事態なので、致し方なく体を揺さぶる首相
横では、こんなことになった当の本人がアワアワしていた。
「はっ! わ、私は何を」
「か、閣下! ご無事でしたか」
どうやら目を覚ましたようである。
「う、うむ。何か巨大な川の向こうに私の亡き妻が立ってこちらに招くように手を振っていたが…」
「「えっ?!」」
2人はあと数分遅れていたら帰らぬ人になっていたかもしれないヨシフの体験談に冷や汗を垂らした。
「って! それより2人とも! 早くフェルトちゃんたちのところに…」
ポンと手を打ち出入り口に駆け出して行ったリフェリアさん。
「あ、そうだった。閣下立てますか?」ヨシフの体を支える首相!
「うむ、何とか…」後部ドアから杖を突きながら降りてくるヨシフおじいちゃん
肩を支え来客用の入り口からエントランスホールへと踏み入れる。
病院の内装は立派なものだった。
巨大な吹き抜けホールがあり、その天井から豪華なシャンデリアが吊り下げられている。
待合椅子も数え切れないほどあり、沢山の人であふれていた、はずだったが…
今日はやたら人の数が数えれるほど少なく対照的に医者や看護師が先ほどから右往左往していた。
夜明けの6時少し前ということもあるのだが、この病院は5時に一般来訪が始まり、6時代でもこんなに少ないことは無かった。
「あっ! 2人とも! こちらです!」
リフェリアさんが奥へと向かう廊下付近で手を手を振っていた。
だが、病院内なのにそこそこの大きな声を出してしまい、近くにいた看護師から注意を受け頭をぺこぺこ下げている。
それを苦笑いを浮かべながらヨシフおじいちゃんを肩を支える首相だった。
広くて長い廊下を右へ左へ進むこと数百メートル。
首相! ヨシフ、リフェリアがたどり着いたのは集中治療室…ではなく、何も書かれていない扉の前だった。
これに困惑する3名。
「ここ…ですか?」困惑を隠せない首相!
「みたいですね…」あたりを見渡すリフェリアさん
「……………」無言のヨシフ。
と、ちょうど扉が開き中から一人の医者が出てきた。
30代前半の…イケメンというよりかは清楚な感じの医者だった。
「…病院ではお静かに…」
ぼそぼそと喋る医師。
3名は顔を見合わせ…
「私はフェルトベルクの姉のリフェリアです。こちらは、えっと…」
まさかの名前も聞かずに今までいたという。
「ジェームズ・チャーチムです。アドルフの友人です。こちらはアドルフの祖父であるヨーゼフさんです」
ヨシフは静かに礼をした。
「ああ、貴方方ですか。こちらです…さ」
医師は何かに納得したかのように部屋の中へ通す。
中へと通された3名はその異様とも見れる光景に己の目を疑ってしまった。
それは…
カプセル状の大きな入れ物が壁に掛けられており、その中に白く濁った液体とともに…伍長とフェルトさんが搬送された時と同じ服で中に入っていた。
カプセルには様々なコードが繋がれ、その一つは、中に入っている伍長たちの口に固定されていた。
「なんですか…これは…」
その普通の病院では絶対に見られないであろうその光景を呆然と見ている3人。いや、リフェリアさんはこの装置が使われていることはさほど驚かなかった。
「これは、脳が異常事態で機能を停止した際、それを治療するための装置です。
御2人の意識は一時的に平行世界にアクセスし、脳の構造を治療中です。ただ…」
「ただ…?」
何かを言いずらそうにする医師に怪訝な顔をする首相。
「陛下の意識は一時的にこちらの記憶を遮断することに成功しました。ですが何故かアドルフさんだけは部の記憶を平行世界に持っていってしまったようです」
「それは…何か問題があるのか?」
「いえ、大丈夫なはずですが、本人からしてみればいきなり見知らぬ場所で知っている人たちが自分を知らないと、混乱する恐れも…」
ガクリと肩を落とす首相にヨシフ。
だが、その時、
ビー ビー ビー
一つの電子機器から警報音が鳴り響く。
慌てた医師はそれを原因を確認した瞬間、驚愕しそして笑顔を見せた。だがそれを訝しむ3名。
「どうしましたか?」
「へ、陛下の脈拍や脳の組織が完全回復しました! 平行世界との意識を切断しこちらに戻ってこようとしています!」
「なんですって!」
これに驚いたのはリフェリアさんだった。
歓喜のあまり一筋の涙を流すリフェリアさん。
数分待ち…
中に入っていた白く濁った液体が徐々に消えていき、カプセルのドアがゆっくりと静かに開いた。
そこに近づく一向。
そして皇帝の目はゆっくりゆっくりと開いていった。
「あ…れ…? ここ…」
かすれるような声で焦点の定まっていない目であたりを確認する陛下。
「り、フェリア…姉様?」
ようやく意識がはっきり目の前にいる女性の顔をしっかりと確認する陛下。そしてゆっくりとカプセルから降りてきたその瞬間、
「フェ~ルゥ! よかった、生きていて本当に良かった!」
「え? え!?」
号泣しながら小さな少年の体に思いっきり抱き着くリフェリアさん。妹…じゃなっかった、弟が一時は意識不明の重体と聞かされた時は、彼女は勤務先の警察庁から飛び出してパトを乗り回して来たそうだ。その時ことの詳細を無線で聞かされ、更に偶然弟を助けに行ってくれた恩人の友人がタクシーの運転手と話していたためその彼を無理やり後部座席に乗せ今に至ったわけだ。
姉妹…じゃない姉弟の感動的な再開に首相もヨシフも医師も涙ぐんでいた。
ここはスウェットハーヴェン特別自治区内の少し郊外、小高い山の上に立つ巨大病院の来客用の出入口前の駐車場である。
その駐車場には1台のパトカーが止まっており、パトカーにもたれかかるように首相が倒れこんでいた。
そしてこの病院、一見するとどこか巨大な軍事施設にも見えなくはない。
それもそうだろう、ここはもともと旧ク連時代戦争でけがや病気にかかった人々を隔離するために作られた軍事病院だからである。正確に言えばもともとあった場所にこの病院が立ったわけだが…。
軍事病院時代の名残というか現在の病院の設計元が軍事病院とまったくもって同じ外見なので、余計な部分…例えばレーダーとか、対空砲格納所とかがあったりする。
もちろんそれらは病院の奥の旧館にあるのだが…夜になると、その旧館でうめき声が…
まっ、そんないわくつきの病院の駐車場になぜ彼らが死んだような顔をしているかというと…、
「大丈夫ですか? ってわぁ! おじいさん、口から出てはいけない何かが出ている!」
悲鳴を上げているこの女性のせい。
なにせこのリフェリアさん、見た目に似合わず運転が下手というか、豪快というかなんというか…とにかく乱暴な運転で、緊急車両用のサイレンを鳴らしながら、交差点を見事なまでにドリフトするわ、小さな坂道では思いっきりエンジンかけて空中に吹っ飛ばすわ、坂道なんかカードレールぎりぎりでハンドルを切るから危なっかしいわで、ここまで来たわけ。
もちろん後部座席に首相とヨシフおじいちゃんが座っていたのだが、もう二人とも何かアクションを起こすたびに悲鳴を上げ、顔を凹ませているというね…。
この言葉ではっ! とした首相は慌てて後部座席のドアを開ける。
そこにいたのは老紳士のようなヨシフ…ではなく、後部座席で横になったまま動かないヨシフの姿だった。
しかも、そのお口からは何か…人間が出てはいけない白色の…よく見ればヨシフの顔をした塊が口からヒョロヒョロと出ていた。
「ええ! 閣下! しっかりしてください!」
ご老体にはやってはいけないだろうが緊急事態なので、致し方なく体を揺さぶる首相
横では、こんなことになった当の本人がアワアワしていた。
「はっ! わ、私は何を」
「か、閣下! ご無事でしたか」
どうやら目を覚ましたようである。
「う、うむ。何か巨大な川の向こうに私の亡き妻が立ってこちらに招くように手を振っていたが…」
「「えっ?!」」
2人はあと数分遅れていたら帰らぬ人になっていたかもしれないヨシフの体験談に冷や汗を垂らした。
「って! それより2人とも! 早くフェルトちゃんたちのところに…」
ポンと手を打ち出入り口に駆け出して行ったリフェリアさん。
「あ、そうだった。閣下立てますか?」ヨシフの体を支える首相!
「うむ、何とか…」後部ドアから杖を突きながら降りてくるヨシフおじいちゃん
肩を支え来客用の入り口からエントランスホールへと踏み入れる。
病院の内装は立派なものだった。
巨大な吹き抜けホールがあり、その天井から豪華なシャンデリアが吊り下げられている。
待合椅子も数え切れないほどあり、沢山の人であふれていた、はずだったが…
今日はやたら人の数が数えれるほど少なく対照的に医者や看護師が先ほどから右往左往していた。
夜明けの6時少し前ということもあるのだが、この病院は5時に一般来訪が始まり、6時代でもこんなに少ないことは無かった。
「あっ! 2人とも! こちらです!」
リフェリアさんが奥へと向かう廊下付近で手を手を振っていた。
だが、病院内なのにそこそこの大きな声を出してしまい、近くにいた看護師から注意を受け頭をぺこぺこ下げている。
それを苦笑いを浮かべながらヨシフおじいちゃんを肩を支える首相だった。
広くて長い廊下を右へ左へ進むこと数百メートル。
首相! ヨシフ、リフェリアがたどり着いたのは集中治療室…ではなく、何も書かれていない扉の前だった。
これに困惑する3名。
「ここ…ですか?」困惑を隠せない首相!
「みたいですね…」あたりを見渡すリフェリアさん
「……………」無言のヨシフ。
と、ちょうど扉が開き中から一人の医者が出てきた。
30代前半の…イケメンというよりかは清楚な感じの医者だった。
「…病院ではお静かに…」
ぼそぼそと喋る医師。
3名は顔を見合わせ…
「私はフェルトベルクの姉のリフェリアです。こちらは、えっと…」
まさかの名前も聞かずに今までいたという。
「ジェームズ・チャーチムです。アドルフの友人です。こちらはアドルフの祖父であるヨーゼフさんです」
ヨシフは静かに礼をした。
「ああ、貴方方ですか。こちらです…さ」
医師は何かに納得したかのように部屋の中へ通す。
中へと通された3名はその異様とも見れる光景に己の目を疑ってしまった。
それは…
カプセル状の大きな入れ物が壁に掛けられており、その中に白く濁った液体とともに…伍長とフェルトさんが搬送された時と同じ服で中に入っていた。
カプセルには様々なコードが繋がれ、その一つは、中に入っている伍長たちの口に固定されていた。
「なんですか…これは…」
その普通の病院では絶対に見られないであろうその光景を呆然と見ている3人。いや、リフェリアさんはこの装置が使われていることはさほど驚かなかった。
「これは、脳が異常事態で機能を停止した際、それを治療するための装置です。
御2人の意識は一時的に平行世界にアクセスし、脳の構造を治療中です。ただ…」
「ただ…?」
何かを言いずらそうにする医師に怪訝な顔をする首相。
「陛下の意識は一時的にこちらの記憶を遮断することに成功しました。ですが何故かアドルフさんだけは部の記憶を平行世界に持っていってしまったようです」
「それは…何か問題があるのか?」
「いえ、大丈夫なはずですが、本人からしてみればいきなり見知らぬ場所で知っている人たちが自分を知らないと、混乱する恐れも…」
ガクリと肩を落とす首相にヨシフ。
だが、その時、
ビー ビー ビー
一つの電子機器から警報音が鳴り響く。
慌てた医師はそれを原因を確認した瞬間、驚愕しそして笑顔を見せた。だがそれを訝しむ3名。
「どうしましたか?」
「へ、陛下の脈拍や脳の組織が完全回復しました! 平行世界との意識を切断しこちらに戻ってこようとしています!」
「なんですって!」
これに驚いたのはリフェリアさんだった。
歓喜のあまり一筋の涙を流すリフェリアさん。
数分待ち…
中に入っていた白く濁った液体が徐々に消えていき、カプセルのドアがゆっくりと静かに開いた。
そこに近づく一向。
そして皇帝の目はゆっくりゆっくりと開いていった。
「あ…れ…? ここ…」
かすれるような声で焦点の定まっていない目であたりを確認する陛下。
「り、フェリア…姉様?」
ようやく意識がはっきり目の前にいる女性の顔をしっかりと確認する陛下。そしてゆっくりとカプセルから降りてきたその瞬間、
「フェ~ルゥ! よかった、生きていて本当に良かった!」
「え? え!?」
号泣しながら小さな少年の体に思いっきり抱き着くリフェリアさん。妹…じゃなっかった、弟が一時は意識不明の重体と聞かされた時は、彼女は勤務先の警察庁から飛び出してパトを乗り回して来たそうだ。その時ことの詳細を無線で聞かされ、更に偶然弟を助けに行ってくれた恩人の友人がタクシーの運転手と話していたためその彼を無理やり後部座席に乗せ今に至ったわけだ。
姉妹…じゃない姉弟の感動的な再開に首相もヨシフも医師も涙ぐんでいた。
「SF」の人気作品
書籍化作品
-
-
4503
-
-
267
-
-
353
-
-
15254
-
-
52
-
-
75
-
-
52
-
-
238
-
-
34
コメント