女嫌いと男嫌いの勘違い青春

あさにゃん

43.口論


   雄也が気を失っているとき

文子
「いきなり気を失って。本当に大丈夫なのよね?」

現在学園長屋のソファーで横たわる雄也。その横には、柊家の執事「大輝」が脈や呼吸を調べている。

大輝
「はい。大丈夫だと思います。脈拍、呼吸は正常。問題ないです」

慣れた手つきで雄也の様態を調べ、報告する様には無駄がない。
後で発覚したことではあるがこの執事は、レスキュー救助の資格を保持していた。

大輝
「しかし、どうしたのでしょうか?失神しているようにも見えますが…」

文子
「私にも分からないわよ。貴方は何か知っているのかしら?」

目線を隣に向ける。

そこには、ばつが悪そうにたたずんでいる黒井凛音がいた。

凛音
「分かりませんが…私が不用意に近づいてしまったからでしょうか?」

そう。これが凛音が落ち込んでいる理由。
凛音は雄也の事が大好き。
しかし、その雄也をたった今傷つけてしまった。
それも、雄也が女嫌いという理由を知っていたのにも関わらず。

文子
「その辺りでしょうね…。まぁ、大事なくて良かったじゃない」

流石の文子も同情する。文子も、女性である以上恋も人並みにしてきた。
だから、愛する人を自分の手で傷つけた。
ということにへの罪悪感が痛いほど分かってしまう。

凛音
「同情は結構です。それよりもお話がまだです

つかの間に一転。同情されたことに気が障ったのか、恋人の話に戻る。

凛音
「私は、雄也様と柊花蓮さんの恋人関係に疑問をもっています。なぜ、女性嫌いの雄也様が女性の方と付き合うことができるのか?どうしてですか?」

目が半分据わっている。敵意を隠そうとしない。

文子
「それは答えられないわ」

凛音
「やはり打算ですね?なにか裏があるんですね?それ、やめていただけませんか
?」

文子
「打算かどうかはともかく、同意の上よ」

凛音
「そうですか。やはり裏があったんですね。…そうですね…。大方、お見合いやら婚約のお誘いやらで鬱陶しくなったので、フェイクでごまかそうと」

なにか確信があるのか。この凛音の口調には明らかに確信明たものがあった。

文子
「…それは草彅君から聞いたのかしら?」

凛音
「いえ。雄也様からは何も。しかし、お昼休みに花蓮さんとお話をしましたね。ご存知ですよね?」

文子
「ええ…」

凛音
「そのときの反応。頑なに私の婚約依頼を拒んできた雄也様の態度。そして、雄也様の体質。これらの事から導きだしました」

文子
「そう…。しかし、これは合意の上なのよ?部外者の貴方にどうこういわれたくないのよね」

凛音
「くっ…」

ここで凛音の口撃が緩んだ。
やはり凛音には雄也を絡めていくのがいいと判断した文子は、今までさんざん言われたツケを返していく。

文子
「確かに打算があるのは認めましょう」

凛音
「それを…」

文子
「でも、何度も言っているけど、これは同意の上なの。もし疑っているなら草彅君が起きたら聞いてみなさいな」

凛音
「それは、雄也様のためにはなりません!」

文子
「そう?貴方自身も分かっているでしょう?彼の強さを。彼を信じてあげることができないの?」

凛音
「…」

文子
「彼にも考えがあるの。例え打算だとしても」

凛音
「…」

完全に沈黙した。
少し大人げなかったかなとも思ったが、このまま話続けると、花蓮の男嫌いなどボロがでる恐れがあった。
草彅君の事を信じてあげられないの?
これが聞いたようだ。

キーンコーンカーンコーン

文子
「…そろそろ帰りなさい。遅いわよ」

凛音
「分かりました。今日はひとまず帰ります」

静かに席をたつ。鞄をさげてドアまで歩き出す。

文子
「フゥ-」

疲れた。
静かにため息をつく。
こんなに喋ることは全校朝会でもない。

凛音
「また後日に。今度は花蓮さんもご一緒に。『私はあの事を知っています』」

最後に『まだ諦めていない』と言い残し理事長室を、後にした。

文子
「私はもうけっこうよ…」

最後に言い残した言葉。あれが、指す言葉の意味とは?なにを知っている?あの会話の流れ的には花蓮のこと?どこまどばれている?

考えるのは後でいいや…

まだまだあの子には悩まれされそうだと落胆に浸る文子。

文子
「冷たいわね…」

覚めた紅茶を啜りながら、雄也の目覚めを待つのであった。


        次に続く

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