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女嫌いと男嫌いの勘違い青春

あさにゃん

27.ストリートファイト

タタタタタタタ!

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁー」

すっかり日が沈み、街灯必要となる程に暗くなった夜道を全力で駆け回っている人がいた。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁー」

必死に足を前へ前へと回す。顔には大粒の汗をかき。肩を激しく上下させているところから見ると息も苦しそうだ。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁー」

それでも止まらない。止まる事ができない訳がある。

「おい!待てや!」

「くっそ、おい!そっちから回り込め!」

「わ、分かった!」

声が聞こえる。私を追いかけてきている人の声が聞こえる。

私は現在世に言うヤンキーに追われている。

細い脇道を使いながら徐々に近づいて来る複数の男。

裏路地でこの逃走劇を行っている為、声を上げた所で誰も気づかないだろう。携帯だって出してかける暇がない。

臭い、汚い…
今走っているのはビル街にある裏路地。
衛生面で問題が多々ある雰囲気だった。

でも、そんなこと気にしてたら捕まる。

(とりあえず通りに出なくちゃ!)

一心不乱に走る。走る。走る。

(!光が!)

街のイルミネーションが見えてきた!

キラキラと輝く街の街灯はまさに彼女の希望そのもの。

希望というものが具体化したように彼女には感じていた。

ちらりと後ろを振り返る。男達の姿はなかった。さっきまで追ってきていた二人• •の男は姿を消していた。

歓喜に包まれた。切れていた息も、足の疲れも一気吹き飛んだ気分だった。

さー街まで一直線!

のはずだった…

後少しというところで壁が現れた。

建築物ではない。現れたのは人。
ただの会社帰りのサラリーマンなどだったら良かった。

しかし、目の前に立っている男は先程まで追ってきた男達と同じぐらいの歳の男だった。

無意識に足を止めてしまった。

男はニヤリと薄気味悪く笑うとにじり寄ってくる。

(なんで目の前にいるの?後から追いかけてきていたはずじゃ…)

そこで思い出す。このヤンキー達の会話を

『「おい!待てや!」

「くっそ、おい!そっちから回り込め!」

「わ、分かった!」』

あ、三人…いた。

この目の前に立っている男は回り込んできた奴だった。

彼女の表情が希望に満ちた笑顔から、顔面蒼白の絶望変わった。

足の震えが止まらない。

「はぁ、はぁ。中々走るの早いじゃないか」

「たく、無駄に汗かいたぜ」

後ろから追ってきていた男達も合流してしまった。

前からも後ろからも男が迫ってきてる。

声を出せば助かるかもしれない、だがそんな正常な判断ができないほど恐怖に陥っていた。

男達に囲まれることは馴れた。だがそこには的確な違いがあった。

好意をもって接してくるか、敵意をもって接してくるかだ。

過去にこんな恐怖を覚えたことはない………

いや、一度いちどあった。私には直接関係なかったけれど、あの時確かに恐怖した。

それは最愛• •の人が死ぬほど苦しむ姿を見た時。どこかにいなくなってしまうんじゃないか?という恐怖が私を襲った時だ。

その時私は側にいながら何もできなかった。
ただ苦しむ姿を見るだけだった。

「ほら!来いよ!」ガシ

ヤンキーが彼女の腕を掴む。

その時彼女は覚悟した。これからこのヤンキー達の卑下た欲望に体をけがされることを。

思い出すのは、いつも一緒にいてくれた人。いつも私の為に不器用に笑いかけてくれる人。

私の大好きな人。

「おにぃちゃん……」

頬を涙が伝う。



「おい、そこのクズ共!その汚え手で鈴乃すずのに触れてるんじゃねー!」

なんで?なんで?ここに居るの?

「なん…で……?」

「おい!聞こえなかったのか!?そこの社会不適合者!鈴乃すずのから手を離せって言ってるんだよ!」

夢じゃないよね!?夢じゃないんだよね!?

「はぁ?喧嘩売ってんのか?お前はコイツの何なんだよ?」

「おにぃちゃん!」

「鈴乃!?」

「おにぃちゃん!?助けて!」ポロポロ

「!!?鈴乃…泣いて……てぇめーら」グッ!

ついに彼女………。鈴乃と呼ばれる女の子は溢れんばかりの涙を流す。

「ハハハはー。コイツマジ?妹相手にこんなにキレてる〜」

「それ!マジキメ〜」

「シスコンとかリアルにいたんだ〜。俺初めて見たぜ〜」

「「「アハハハハー」」」

三人が三人大笑いする。

鈴乃
「おにぃちゃん!」

「待ってろよ。すぐに助ける」

「………ウン」

「おいおい(笑)勝手に世界作んなって(笑)」

「それ、てか、勝てると思ってるの?(笑)」

「いい事思いついた!コイツをボコって、コイツの目の前で妹犯さね?」

「あ、それいい!最高に笑える!」

「だろ?」

「お前天才だな!」

「んて事で早速……って!」

バーン

路地裏に乾いた事が響いた。

それはヤンキーの一人を男が……。雄也が頬を殴った音だった。

雄也
「一瞬で意識を刈り取ることもできるが…。俺は性格悪いんでな。ジワジワやるとしよう」

「は、随分と自信化だな?おい」

雄也
「そのまま返す」

「チッ!三人で殺るぞ!」

「おう!」

「クッソが!」

寄る遅くの脇道。
誰も知らない決闘が始まった。


鈴乃
「………ごめん。おにぃちゃん…」

雄也
「いや、良かったよ。間に合って」

現在草彅兄妹は裏路地から離れたところにあるレストランで休憩をしていた。

鈴乃
「うん…。ありがとう。……でも、どうして分かったの?」

雄也の隣横から声がする。そう、現在草彅兄妹はレストランに入り、テーブルを挟んだ長椅子にすわっているが座る位置がおかしい。

なぜか向かい合わせではなく隣同士なのだ。

雄也
「それは鈴乃の声が聞こえたからだ」

雄也七の特技の一つ「妹の声はたとえ一キロ離れていれも聞き逃さない」だ。

雄也
「それよりなんであんなことになったんだよ?」

鈴乃
「声かけられて、適当にあしらったら追いかけてきていた」

体を震わせながら雄也の腕を抱く• • • •

雄也
「怖かったんだな…」ナデナデ

もう片方の手で妹の鈴乃の頭を撫でる雄也。雄也は妹限定!鈴乃になら触れても発作を起こさないのだ!

肉親だからなのか鈴乃にはいくら触れても過度なじんましんがでる発作が起こらない。

鈴乃
「……うへ…ありがとう」

撫でられたのが嬉しいのか雄也の腕に顔をうずめる鈴乃。完全に震えは止まっていた。

そして、それを微笑ましい顔で見る雄也。

何を隠そう!この二人は超ド級のブラコン、シスコンなのだ。

それは二人の幼馴染である真が
「そのうち二人で結婚するって聞いても不思議じゃないわ」と言わすほどである。

雄也
「今日は家に来るか?あんな事があったし」

鈴乃
「多分寮もしまってるから…。うん。おにぃちゃんと久しぶりに寝たいな」

雄也
「そうかそうか。俺も一緒に寝られて嬉しいぞ鈴乃」

現在鈴乃は、柊国立中学のスポーツ特待生として寮も生活を送っている。そのため実家には土日のどちらかにしか戻れない時が多い。

鈴乃
「やった!んじゃ寮に連絡するね!」

雄也
「ああ」

隣でピコピコ携帯をイジる鈴乃。寮の人にでもメールしているのだろう。

雄也
「はぁー」

頬杖をして最近の疲れを噛みしめる。こんな日々が毎日なら雄也の過労死は間近だな。

雄也
(眠たくなてきた…)

昨日の寝不足やさっきの『軽い運動』が相待って眠気はピークに。

でも、今日は最高の抱きまくら鈴乃があるなーとか思っていた頃。

鈴乃
「おにぃちゃん?疲れてるの?」

ちょこんと顔を出して雄也の顔を覗き込んでくる。

(可愛い〜!)

じゃなくて。

雄也
「そうだよ。今日の兄はとてもお疲れなのだよ」

鈴乃
「ふーん。何があったの?また女の子に告白されたの?」

雄也
「なんだ?嫉妬か?可愛い奴め〜。てか、もっとひどいな〜」

眠気がひどく、真の口調に似てきて語尾に『〜』とゆるい口調になっていた。同時に頭も回っていなかった。

この発言に鈴乃は嫌な予感を覚えた。

鈴乃
「!それってなに?ま、まさか。ないとは思うけど、あり得ないとは思うけどプロポーズでもされた!?……なんてね?」

「そんなことないあるわけねーじゃん」いつもの軽い口調でそう言ってほしかった。

でも、帰ってきた答えは

雄也
「お〜。正解正解。いや〜、なんかもう爺がな〜。勝手に承諾までしたんだよ?変だよな?」

鈴乃
(あー、やっぱりー)

この発言で鈴乃の周りから殺気にも似たプレッシャーが放たれた。

雄也もヤバイと感じたのか一瞬で目が覚める。

鈴乃
「は?今のほんと?」

最愛の兄でも聞きたことがないような声がレストランに静かに響く。

まるで一瞬だけ鈴乃以外の世界の音が消えたよう。

このとき…後悔した。もっとしゃきっと頭を回していれば良かったと思った。

だがもうおそい。雄也のこの発言で始まる草彅家の悲劇。

それは、雄也の苦労をまた一つ増やすものだった…。



            次に続く

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