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女嫌いと男嫌いの勘違い青春

あさにゃん

9.事件勃発

雄也と花蓮がキスをする少し前。





カァーカァーカァー

夕日もほとんど沈みカラスの鳴き声か鳴り響く帰り道。

スクールバッグ片手に呑気のんきに口笛を吹いている男がいた。


「ん〜♪あいつ上手くやってるかなー」

彼は新真。呼び方はシン、マコト。愛称はシンシンだ。

いつも砕けた感じの雰囲気の男で、よく馬鹿騒ぎを起こす問題児でもある。

幼い頃から雄也と一緒で、何をやるにしても雄也と共に行動してきた。

しかし、このチャラついた雰囲気の裏には誰よりも友だち想いで、誰よりも雄也の事を想っている、熱い男でもある。

雄也を想っているからこそ今日、ある【事件】がきっかけで、女嫌いになった雄也の為に女嫌いを克服できるようにするための状況を作り出したのだ。

真は雄也には人並みの恋愛をしてほしいと強く願っている。

そのための今回のセッティングだ。

しかし、この状況を作り出した上で一つ、気がかりな事が真にはあった。


「少しは女の子に慣れれな  ば、【あの発作】も出ないと思うんだけどなー」


ある事件のせいで雄也は、ある条件を達成してしまうと激しい発作が起こってしまう。

病院の検査には一種のアレルギー反応と似た病気という診断結果が出ている。

そして、その肝心かんじんの発作の条件…

そう、それは…






「いやー、雄也は頭いいから流石にまだ【触れない】よなー」




絶対に女の子に触れてはいけないということだ。










雄也
「………」パチパチ

花蓮
「………」パチパチ

夕日の光が差し込むジメジメしている薄暗い部屋。部屋の所々には、まだ使われていない真新しいノートが散乱さんらんしている。その、散乱さんらんしているノートの中心にいる二人。

草彅雄也と柊花蓮だ。

二人の距離が異様に近い。

というかもう、ゼロ距離だ。

花蓮が雄也に覆いかぶさるような形で唇と唇が触れている。

俗に言うキスだ。

お互いに目を見開き、いま何が起きているのか理解できているような、理解できていないような顔で固まっている。

人間は極度の恐怖やプレッシャーになると身動きが出来なくなり、判断力が失われる。

または、理解したくないことは理解できないように人間はできている。記憶喪失などはこのようなケースに当てはめられる。精神状況が不安な事で引き起こされる記憶喪失とは辛いことを忘れたいために脳が自分の身を守るため判断して忘れさせるという。

今この雄也達の場合は後者だろう。

今目の前で起きている現象を、理解できているが理解したくない。脳では分かっている。分かってはいるが気持ちが追いつかない。

いや、もっと分かりやすく表そう。二人は単純にパニックになっていたのだ。

雄也
「………」

花蓮
「………」

キスをしながら至近距離しきんきょりで見つめ合う二人。

未だ静止したままだ。

しかし、その均衡きんこうはついに破られた。

雄也
「…ッく…ゴォゴォ」

突如とつじょ激しい咳をした雄也によって。

花蓮
「うっ!」

慌てて雄也の顔から、いや体から一瞬で跳ね上がり逃げるようにして雄也から距離をとる花蓮。

花蓮
(え?今何が起きたの?何をしていたの?)

雄也そっちのけで気持ちと状況整理を始める花蓮。

花蓮
(たしか…とても重いダンボールをもって…雄也が近づいてきて…それにちょっと驚き…足がもつれ…気がついたら…)スゥー

やっと頭と気持ちが繋がったようだ。花蓮の顔からみるみる生気が抜けた様に真っ青になっていく。

花蓮
(男と…男と…男と!)ギリッ

歯と歯のきしむ音が少し聞こえる。

花蓮が最初に感じたのは絶望。続いて感じたのは怒りだった。

本来なら雄也イケメンとキスができることを喜ぶ女はたくさんいるだろう。

しかし、柊花蓮は男嫌いだ。

訳がかわってくる。

花蓮
(よくも…よくも…私の唇を…!この類人猿が…!)キッ

花蓮は過去に受けたことがない屈辱と湧き上がったことのない怒りを生んだ雄也にらみつける。

雄也
「………」

花蓮
「……?」

タップリと十秒ほどにらみつけた時であろう。

なにやら、雄也からただならない雰囲気を感じた花蓮。

花蓮
(?私とキスができた事を喜んでいるのかしら?……………私は最悪な気分だけれど…)

あまりに反応が無いために仕方なく花蓮から雄也に話しかける。

花蓮
「………草彅くん?」

草彅
「………」

花蓮
「ちょっと、草彅くん!」

雄也
「………」

やはり反応がない。

雄也からの反応があるとすれば先程から息が荒いことだけだろう。

花蓮
(……一体?)

雄也に恐る恐る近付く花蓮。

花蓮
「えっ!?」

雄也の表情を見て驚く花蓮。

顔は完熟トマトの様に赤く。左右に上手く視点が定まらない視点。全身にびっしりと汗をいており。極めつけにはのど周りには赤く少し腫れ上がっている。

花蓮
(これって…蕁麻疹じんましんの症状!?でもどうして?)

花蓮
(今考えられる事は…ハウスダスト?)

この教具準備室はかなりジメジメして部屋の周りには綿ぼこりが溜まっている。

そう思うのも無理ないだろう。

雄也が女の子と触れたために発作を起こしたとは、花蓮には、いやこの場合は事情を知らない人が立ち会えば誰も思わないだろう。

花蓮
(でも、私の知っている蕁麻疹じんましんとは少し違う気も…)

病状を当てようと雄也の顔を覗きこむ花蓮。

花蓮
(じゃなくて!早く他の人に知らせないと!)

花蓮には自分でも自覚している悪い癖がある。

なんでも頭で考えすぎることだ。

しかし、今回は事の重要性を理解していたために早い決断が出せた。

花蓮
「早くしないと!」

花蓮
(これがもし蕁麻疹じんましんなら最悪死に至るケースもあるわ。急がないと…)

花蓮は嫌いな男とキスをしてしまったからといって、人を見殺しにするほど悪女ではない。

男とキスをしたことは後悔してもしきれないが………



外からの助けを呼びに行こうと慌てて立ち上がり、部屋の扉に手をかける花蓮。



ーーーーーガッ



花蓮
「え!?」

返ってきたのは固い感触。

もう一度手をかけて行きよいよく開こうと力を込める花蓮。

そうして、勢い良く扉を開こうとすると…



ーーーーーガッ



またも扉が開く感じのしない感触が返ってくる。

全く開く様子のない扉。開こうとすると固い感触が返ってくる事実。

そこで花蓮はある一つの可能性にたどり着いた。

この状況では最も可能性が高く。最悪な可能性…

その可能性とは………



花蓮
「もしかして…開かない!」

雄也
「……ッ」ゼェーゼェー



              次に続く

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