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女嫌いと男嫌いの勘違い青春

あさにゃん

5.そして…また…

花蓮
「ですので……この学園で……色々……」

今は入学式。
会場は体育館。総勢千人以上は入れるかなり大きめの体育館だ。
新一年を迎えている真っ最中だ。

(女はお断りだがな………)

しかし今年は【アイツ】がくる予定だ。

(憂鬱だ)

この柊国立第一高等学園は、男女生徒の割合はほぼ同じ。中には【柊】や【草彅】などの上級社会の出の者もいるが、それでもかなり少数だ。
式の途中から参加して、今俺の目の前でいびきをかましている真の話を聞けば、さっきの俺が二度蹴り飛ばした奴も、そこそこの家の出らしい。
だからといって雄也は全く心配していない。
【草彅】とはそのくらいでは揺らがないからだ。

(それにしてもあの柊花蓮め。いつまで無駄話をしている)

花蓮の話はかれこれ20分は続きているだろう。
しかも原稿を一切読まずにだ。

雄也とて分かってはいる。彼女がとてもすごい才能を持っていることを。この挨拶の為に何十時間も練習したことも容易に予測できる。
新入生歓迎の挨拶は二年の学年で一番頭のいい首席が話すものだ。
雄也も学年二位という好成績だが。
一位と二位、つまり花蓮と雄也の間にはそれなりの差があるのだ。
雄也も頭はかなりいい方だ。三位とは二十点くらいの差は毎回ある。

だからといってヤラレっぱなしは性に合わない。特に女に関してはなおさらだ。
いつか追い抜いてやる。
そう、
胸に復讐心を燃やしていると視線を感じる。

ん?


「………」ニヤニヤ

真がいつの間にか起きて後ろを振り向いていた。


「おやおや〜。そんなに柊さんのこと熱心に見つめてどうしたのかニャ〜」ニヤニヤ


「もしかして、見惚れてたのかな〜」ニヤニヤ

…とんでもない事を言いやがった。
しかも割と大きな声で。これが冗談だと分かってはいる。分かってはいるが…

雄也
「なっ、そんなわけ無いだろ!」

いきなりのことでつい感情的になり、雄也は軽いパニックになっていた。この時いつも冷静な雄也がパニックになったのは、無意識に柊花蓮を見つめていた…もとい、観察していた自覚があったからだ。

そこで雄也は気がついた。今自分がかなりの注目を集めてしまったことを。

雄也
「………」ダラダラ

やってしまった。これでは草彅家の家に傷が入ってしまう。

(そうなれば…そうなれば…)

花蓮
「…どうしましたか?草彅さん」

壇上から声をかけられる。
いきなの俺の登場に会場がざわつきだす。

この場で怪しまれずに立ち去る方法…

雄也は頭をフル回転させて解決方法を考える。

そして導き出した答えが…

雄也
「式中に失礼します。俺の友人が体調が悪いって言ってるんで…」

あくまで平然とそして自然にそう言って真の片腕を掴む。


「へ?そんなことないけ…」

ドン。

真の肩を抱くフリをして、みんなに見られない角度を算出し、意識を刈り取れるだけのパンチを顎に食らわせる。
そしたら、どうでしょう〜。一瞬で意識がなくなりましたよ。

(真、こうなった原因はお前にもあるからな。痛くは無いようにしたから、許せよ)
意識がない親友に、心で謝罪した。


雄也
「式の途中にすみませんでした…」

(これ以上注目されたくない。はやく逃げないと…)

花蓮
「え……ええ…………。お大事に」

最後に頭を下げて雄也と雄也に抱えられた真は、体育館からでていった。



「最悪だ…」

雄也は一人で誰にも聞こえない愚痴をこぼした。







花蓮
「ですので……この学園で……色々……」

私は今新入生歓迎の挨拶をしている。どうして挨拶をしているかって?

私はそんじょそこらの人とは違うわ。
特に!
そこのアホ丸出しで私の事を見ている男子共!

分からなくもないわよ。私は自分でも一般的に美人だと思うくらいは自覚しているつもりよ。

でも、

そんな、下品で下品で下品な表情を浮かべられるのは流石に嫌ね。『猿』といった表現がヤッパリ一番しっくりくるわね。
何時でも何処でも発情する低能共。

本当は歓迎したくもないアナタ達の為に、何十時間もかけてこの原稿を覚えて来たのよ!
それをほとんど聞きもしないでいる者もいる始末よ。
さっきから喋り疲れるよりも、作り笑顔を作る方で疲れてくるわ。

でも、
我慢しなくちゃね。

これも、昔からの数多くの大臣や官僚を輩出してきた、【柊】だものね。ここで何が派手な失敗をしては叔母様だけでなく、柊にも傷がつくわ。

よし!
っと心の中で気を引き締め直した花蓮。

会場を見回しながら覚えて来た原稿に集中し直した。

チラリと会場にある時計を見た。
花蓮が挨拶を始めてからもう20分以上話している。

挨拶も終盤を迎え最後の挨拶をしようとすると…

花蓮
「では、さいごに……」

???
「な、そんなわけ無いだろ!」

邪魔をされた。

花蓮
(なんなの!誰!?邪魔をしたのは!?)

自分の締めくくりとも言える最後の挨拶を邪魔をされた形になった花蓮は激しい怒りにみわまわれた。それでも、顔に出さなかったの長年の作り笑いの成果だろう。

一体誰です?邪魔をしたのは!

花蓮は挨拶を突如邪魔をした人物を探す。

花蓮
「…どうしましたか?草彅さん」

程なくしてその人物は見つかった。
そう、なんと邪魔をしたのは草彅雄也だった。花蓮は怒りをさらに爆発させた。

それもそうだろう、【草彅】とは、名前の通り
あの名刀『クサナギ』を代々保有するとしており、
それこそ【柊】よりも昔からある古い家だ。
昔こそではないが、今も軍とは密接な関係があるらしい。
それ以上はあまり知らないが…

そんな名家のの者がこんな公式の場を荒らしていいはずがない!

花蓮は同族嫌悪にも似た感情を覚えた。

雄也
「式中に失礼しました。俺の友人が体調が悪いって言ってるんで…」

雄也
「式中にすみませんでした…」ペコ

最後に頭を下げて体育館から出ていった。

花蓮
「え……ええ…………。お大事に」

花蓮は怒りで声を少し震わせて、そうつぶやくのが限界だった。

会場はいきなりの事で少し騒がしくなり、数秒で静かにはならなかった。

それでも花蓮は会場を鎮めようとはしなかった。この会場のどこからも見えない角度で例の【黒手帳】に今の出来事、怒りを書いていたからだ。表情は笑顔を保ったまま。

数分たった頃だろうか。やっと会場が静かになったので先程しようとしていた挨拶の続きを喋ろうと、
これまた皆に見られないように
スカートのポッケに黒手帳をコッソリと入れた。

花蓮
「…それでは、この学園で素敵な学園生活をお送り下さい。新入生歓迎代表挨拶。二年A組、柊花蓮」

最後に自分の名前で締めくくると会場全体から拍手が飛び交う。

花蓮はやり終えたという顔をしてい歩いているが、
内心…

花蓮
(くさなぎ!ゆうや!)

奥歯を噛み締めながら怒っていた。




こうして、さらに草彅雄也と柊花蓮の溝は深まったのだった。





              次に続く

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