女嫌いと男嫌いの勘違い青春

あさにゃん

4.雲行きが怪しく

モブ(男2
「死ねや!」

ブン!

重量ある腕がムチのようにしなり女子目がけてふるわれる。

ボーン…ガシャーン

放たれた一撃は人を吹き飛ばした。飛んでいった衝撃でキレイに整頓されていた机、椅子が乱雑に吹き飛ぶ。先程までの騒がしさはない。クラスは一様に皆、今何があったのか理解しようとしている。
しかし、理解しようにもあまりの出来事に思考が追いついていない。
雑に乱れた机、椅子の中から人影が現れる。

足が震えながらも懸命に立ち上がろうとする。
しかし、上手く力がはいらない。
その目には未だ尚強い意志が宿っている。

そう、
暴れている男の放った一撃で、
吹き飛ばされた物は、
一撃を放った男であった。

雄也
「間に合ったか…」フゥー

モブ(男2
「…なにをした……」

男は荒い呼吸で片膝をつき、上半身を起こし雄也を見る。

雄也
「………」

雄也は男を無視し絡まれていた女子達の方に、振り返る。

雄也
「ケガははいか?」

雄也は短く言い放つ。恐怖でなのか唖然としているのか女子達は放心状態だった。しかし、学園のアイドルの一人とも言える雄也に話しかけられたことで、放心状態がとけたようだ。

モブ(女1
「あ、はい!」

モブ(女2
「う、うん」

ある女子達はいきなり話しかけられたことで、おざなりの返事になったり。

モブ(女3
「………」ボー

ある女子は雄也のカッコ良さに心を奪われたままの娘もいる。

雄也
「………。大丈夫そうだな」

改めて状況確認が終わったとき。

花蓮
「伏せてください!」

雄也
(柊花蓮!)

雄也は柊花蓮の言葉のまま。急いで胸が付くギリギリまで腕をついて伏せた。雄也は自分ではそこそこ人を見る目があると自負している。
その雄也から見た柊花蓮は、意味のない事を言う女ではないと評価している。好みと信用は別物だ。だからこそ雄也はとっさに身を伏せた。

案の定地面で伏せた雄也は横目で見た。先程までのあった自分の頭の位置に、椅子が通り過ぎた事を。
よくよく見れば、先程までの片膝を付き立ち上がる事すら難しかった男が椅子を持っていることを…

雄也
(相手の力量を見誤ったか。俺もまだまだだな)

雄也にはもう冷静な判断ができていた。そして、この態勢からの対処方法も考える。そしてすぐに結論を出す。

シュッ…クルッ!ガン!ダン!

自分の腕をコマの足の様に固定し、180度手首を回す。その手首に力を入れて体ごと180度回転させる。その回転力そのままで男の足に自分の足をかける。
足をかけられた形になった男は尻もちを付き後ろへ転ぶ。

雄也は、すぐさま立ち上がり追撃に備えるが…

モブ(男2
「な、な、な…」

どうやら杞憂だったようだ。相手は完全に戦意を喪失している。しかし、もう油断はしない。

雄也
「下半身の鍛えが足りなかったな」

敵に塩を送るのもどうかな?かと思ったが、これは癖のようなものなので仕方がない。

さて、この男をどうするかとも思ったが…

???
「何をやっている」

いきなり中年の野太い声がクラスに、響き渡った。

???
「おい!草彅!」

雄也
「なんですか?熊野鉄男先生」

彼は熊野鉄男、ここ柊国立第一高等学園の先生だ。先生は熱血系として知られる。もう、30歳を越えているというのに趣味がトライアスロンという、その名前の通り鉄人のような男だ。隣に真がいるという事は呼びに行ってくれたのだろう。

熊野先生
「入学式そうそうなんの騒ぎだ!?」

雄也
「詳しい事は解りませんが、暴力事件になりそうだったので未然に防ぎました」

これ以上は面倒だと言わんばかりに矢げやり気味に答えた。これ以上関わるなという種の暗号だ。

熊野
「どういうことだ?」

全くこの先生は俺の言葉の意味を理解出来きないらしい。全く疲れる…

雄也はどうしようか考えていると

花蓮
「草彅くんは、女子と男子のケンカを止めていただきました」

花蓮
「彼(モブ男2)も被害者のようなものなのであまり大事にしないでください」

熊野先生
「だがね、柊。こうして問題が起きているのだが…」

熊野先生
「生徒の事は私達学園の大人がしっかりと把握しておく必要が…」

花蓮
「熊野先生、これは理事長の言葉だと思ってください」ニコ

熊野先生
「………」

熊野
「………。そろそろ入学式の参列の時間だ」

熊野先生は誰がどう見ても言いくるめられた結果になった。
「…私は先にいっている」
とだけ言い残しクラスから出ていく。

「「「おぉぉぉー」」」
クラスがまた騒然とする。
「すごい」だの「怖ぇー」などと、騒いでいるが
一様に熊野先生を追い払った花蓮を称える声がほとんどだ。

少し教室が静かになったことで、

花蓮
「さぁー、皆さん熊野先生がおっしゃったとおり入学式があります。移動しましょう」

クラスメイト
「「「はーい」」」

皆もう先程までの暴力沙汰の事は忘れているようなテンションだ。
ちなみに雄也に倒された男は熊野先生とクラスから出ていった。真もこれに付き添っている。

雄也は、「薄情な奴らだ」と素直に思った。他にも色々と考えていると柊花蓮が近づいて来た。
一体なんの様だと考えていると声をかけられる。

花蓮
「草彅さんと呼んでも?」

雄也
「ああ、好きに呼んでくれ」

花蓮
「では、草彅さんと呼ばさせていただきます」

花蓮
「用件は2つです」

用件?何かの頼まれごとか?どの道面倒だな

花蓮
「一つはありがとうございました」

なるほどさっきの男を倒したときのことだろう。
いちいちそんなことのために礼を言われるとは。叩き上げのウチとは違いしっかりしているようだ。
まぁ、誰であろうと礼を云われるのは嫌いじゃない。

雄也
「別に気にしなくてもいい。いちいちそのくらいで…」

花蓮
「二つ目は…」

なんだこの女は!人がせっかく喋っている時に口を挟むとは!前言撤回。
この女はご令嬢はご令嬢でも、やはり女はだったな。話を聞かない。
しかし、俺はそのくらいでは怒らない。そこまで俺は小物ではない。
さてなんていう?

花蓮
「先程のはやりすぎです!」

はぁ?
何を言い出すかと思えば…。俺を罵倒するだと!?

花蓮
「分かりませんか?女子生徒を助けるとはいえ、そこの机に跳び乗り、あまつさえ空中で回し蹴りですよ!?」

花蓮
「非常識にも程があります」

(これだから男は野蛮なんです!!!)

どうやら俺のやり方が気に入らなかったらしい。適当に合わせて流しておくか。

雄也
「悪かった。でも、あの場合らはこの方法しか思いつかなかった」

雄也
「それと熊野先生への言い訳ありがとう」

これでいいだろ。いくら【柊家】とはいえこれ以上関わりたくない。

花蓮
「お礼は必要ありません。次からはやめてください。この学園での叔母様の顔に傷をつけないでください」

(それと男の分際でその反抗的な態度も気に入りません!)

…!こいつもやはり女だな。
どうやら人の心が分からないらしい。

雄也
「…すまなかった」

雄也がわざと申し訳なさそうに頭を下げると柊花蓮も、ハッとしたように我にかえった。

花蓮
「わ、私こそ…。その少し熱くなりすぎましたわ」

お互いに頭を下げる。

この光景は傍から見ればなかなか不思議な光景だろう。それ故に二人も自分たちがなかなか変なことをしていると思ったのだろう。

この後はどちらとともなく自分たちも入学式にいこうということになり、二人でお互いに雑談をしながら移動した。

お互いの嫌いなものはなにか?という話になったときに、
お互い「お前だよ」 「あなたですわ」
と言いかけたのはまた別の話である。





                 次に続く

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