魔術学院の二重奏者

田村タム助

赤い髪、紅い眼

 何時いつ何処どこかも分からない、ざらついた映像。
 雨が降り、視界が悪い廃墟。
 逃げる赤い髪の少女と、追う黒服たち。
「助けは必要かい?お嬢さん」
 そこで映像は切り替わる。
 その場に黒服たちの姿は無く、へたりこんだ赤い髪の少女の前に紅いの少年が立っていた。
「俺は■■■■、お嬢さんの名前も教えてくれないか?」

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「んぅ……なんで、こんな夢を……?」
 時計を見ると午前4時。まだ起きるには早い時間だ。よし、二度寝でも──
「おはよう、ソウト。さあ、私と愛を深め合おう?」
 いや、やっぱり起きよう。たまには早起きしてもいいんじゃないか。
「逃がさない。今日こそは既成事実を作る」
「既成事実って何のだよ!」
「何のって……ナニの?」
「質問に疑問形で返さないでよ!」
 こうなれば仕方がない。魔術も使って自身に馬乗りになっている少女、無月むつきユキネを引きはがす。
身体強化エンチャントまで使って嫌がる私を力ずくで動かすソウト……たぎる…………」
「変な言い方するな!」

「はぁ……朝から大変な目にあったよ……」
 僕こと黒鉄くろがねソウトとユキネは幼なじみで、今日から魔術学院の2年生になる。
 ユキネは3年前、14歳の時から急になつき始めた。それこそ今朝みたいにベッドに入ってくることもしばしばあった。
 窓ガラスに映る自分の姿。黒い髪に黒い瞳。そして魔術学院の制服。だがその制服はユキネのものとは違っていた。
「おい、あれが例の……」
「うそ、Fランクってホントにあったんだ……」
男子と女子というだけでなく左胸、そこに院章が存在しなかった。まるで、学院に見捨てられたかのごとく。

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