ゆるふわ系乙男召喚士、異世界に舞い降りる

ノベルバユーザー188303

第13話 オムライス

日本から異世界リンドグレーンにトリップしてから今日で1ヶ月が過ぎた。

この1月の間、冒険者ランクをFからEにあげ、ヴァルファードの地理にも詳しくなると同時に顔見知りもでき、はじめはどうなることかと不安だったが楽しく過ごすことが出来ている。


朝からスハイルと一緒にこの頃恒例となってきている、運動不足を解消する為のランニングを終えると、今日は冒険者活動を休みの日としているので、忙しくてなかなか行けていなかった仲良くしている武器屋さんに行くことを決めていた。


「こんにちわー」


挨拶をしながら、鉄扇を購入したガルムさんの武器屋に入る。

ガルムさんは強面な顔をしているが、メンテナンスや楽しい話をよくしてくれる優しいドワーフさんだ。

ドワーフというのは、リンドグレーンにたくさん存在する種族の内の一種族だ。
手先が器用なのが特徴で、殆どのドワーフが剣や槍、盾など金属を扱う鍛冶屋をしていることが多く、ここヴァルファードにもガルムさん以外に数名住んでいる。

また、お酒好きでよく都市内にある酒場で度数の強いお酒を飲んで陽気に踊っているところをみたことがあるが、ガルムさんはドワーフ族では珍しくお酒に弱いタイプなので全く飲まないらしい。


「あきしゃーん!いらっしゃーい!」


中に入ると店番をしていたらしいガルムさんの息子のべルム君が、満面の笑みを浮かべながら抱きついて来た。

可愛らしく見上げてくるので、べルム君の頭を撫で、もふもふした耳の後ろをかくように触ると気持ちの良さそうな表情を浮かべる。


みなさんもお気づきの通り、べルム君とガルムさんは種族が違う。

べルム君はフォックス族というリンドグレーンの中でも特に珍しい種族らしい。

フォックス族は火魔法を使うことに優れており、一族特有の赤色の体毛をしているのだが、べルム君は赤色ではなく金色の体毛だったためか、二年前にガルムさんの家の前に捨てられていたと聞いた。

僕も他の人と違う見た目でいじめられていたが、両親やお姉ちゃん達にたくさん可愛がって貰ったので特に寂しく思ったことはない。

ガルムさんからたくさんの愛情を受けていて、種族は違えどもべルム君とガルムさんはとても仲良しな親子だ。


べルム君はまだ3歳と幼く、昴広と呼ぶのが難しいらしく、舌っ足らずな声で僕のことをあきちゃんと呼ぶ。

ここで暮らしている中での僕の1番の癒し要員で暇さえあればべルム君に会うためによく遊びに来ている。


「おぉ、昴広。いいところに来てくれた。」

「ガルムさん、こんにちは。
いいところにってどうかしたんですか?」


べルム君を撫でてその可愛さに癒されていると、裏側の工房にいたガルムさんが顔をだした。

なにか頼み事でもあるのかな?と首を傾げながら問いかける。


「さっき近くにいる仲間に応援を頼まれたんだが、なにぶん急な話だったんでベルムを預けれるやつがいなくてな。
次回のメンテナンス料を無料にするし、今日は店は休みってことにするから、べルムのことを見ててやってくれねぇか?」


頼むと頭を下げながらお願いされる。

ここに来ることが目的で、このあとは何も予定はないのですぐに了承すると、待ち合わせの時間がせまっていたらしく、ガルムさんは家の中のものは勝手に使ってくれと早口に言うと仕事道具を持って慌ただしく出ていってしまった。


<慌ただしいやつだ。
いくら仲がいいとはいえ、万が一昴広がベルムを攫ったりする悪いやつだったらどうするつもりなのだか。>


ガルムさんが慌ただしく出ていくところを僕がポカンと見送っていると、べルム君に触られているスハイルはフスンと鼻息を出し、呆れたようにつぶやく。

もちろん僕はそんな最低な行為はしないが、人のいいガルムさんはすぐ信用しそうなので帰ってきたらそれとなく注意しておこうとスハイルの言葉に苦笑をもらしながら、心に決める。


「あきしゃーん、べりゅむ、おにゃかしゅいたのー!」


ガルムさんはお友達のところにお仕事に言ったからとベルム君に話し、スハイルと2人で遊んでいるうちに散らかっていた台所を綺麗にしているといつの間にかお昼の時間になっていたようで、べルム君が空腹を訴えて来た。


「ちょっとまってね?なにか材料あるかな??」


濡れている手を拭き、ガルムさんの家の冷蔵室を開けて中を覗いてみる。

こちらの食材や調味料等は少し名前は違うけど、不思議と日本で売られているものと殆ど同じなので、料理を趣味としている僕はクラウディオさんのお家でよくご飯を作っている。


「あ、オムライスなら作れそうかな?」


冷蔵室の中にあった鶏の卵より少し大きめの卵とケタップ、味が鶏肉に似ている魔物の肉を取り出す。

ケタップはよくスーパーなどで売られているケチャップと同じもので、若干ケタップの方がトマトの風味が強い。

こちらの世界でも家畜のお肉はあるが値段が高いので、一般市民は比較的安価な魔物の肉を食べている。

はじめは僕も魔物の肉と聞いて驚いたけど、食べてみたら案外美味しく、魔物の種類によって豚や牛、鶏肉などの様々な部位を楽しめるのでこちらの方に馴染んできた。


「えーと、確か玉ねぎもあったし、ご飯も炊けてるのがあったから・・・・・・。
うん。今日のお昼ご飯はオムライスに決定です!」


掃除をしている時に発見した、野菜が置かれているところから玉ねぎに似ているタマネイを取り出し、べルム君に向かって笑いかける。


「おみゅりゃいしゅー?」

べルム君はオムライスを知らないみたいで、コテンと大きく首を傾げる。


「そう、オムライスだよ。」


とっても美味しいんだよと微笑みながら言うと、どんな食べ物なのか考えているのか、べルム君はキラキラと目を輝かせている。

その様子をみながら綺麗に手を洗うと、早速調理をし始めた。

まずは鶏肉の下処理から入り、べルム君にも食べやすいように一口サイズより小さめにきりわけ、同じように玉ねぎも小さくするためにみじん切りにする。


「あきしゃーん、べりゅむもにゃにか、しゅりゅー!」


鶏肉と玉ねぎを炒める前に卵を割ろうとすると、危なくないように横で見ていたべルム君が手を上げる。


「手伝ってくれるの?
うーん・・・・・・じゃあ、べルム君に卵を割ってもらおうかな?」


折角のやる気を削ぐのも可哀想なので、比較的簡単なことをお願いすることにした。


「平らな所で卵さんをコンコンってして、このボールにパカって割っていれてね?」


べルム君が綺麗に手を洗うのを確認して、卵をひとつお手本で割ってみせると、真剣な表情で卵を小さな手に持ち、僕がしたように真似をする。

卵を平な所にあてるまでは上手くいったが、割り入れる時に力を誤ったらしく、ぐしゃりと卵が割れ、殻が大量に入ってしまった。

ピンっと元気よく立っていた耳と尻尾がしょんぼりと徐々に下がり始める。


「べルム君、落ち込まないで?
ほら、こうやってザルで濾したら綺麗に殻だけとれるから大丈夫だよ。」


べルム君が落ち込まないように上手だよと褒めてあげると、元気を取り戻したようでもうひとつあった卵を緊張気味に割り入れる。


「できちゃー!」


今度は殻も入らず綺麗にわることができ、パタパタと高速で尻尾を動かし喜びを露わにする。


「上手上手!ありがとう、とても助かったよー」


一仕事終えたように満足気なべルム君の頭を撫で、お礼を言うとお箸で卵を溶きほぐす。

ある程度溶いた時点で、フライパンを熱してバターを溶かし、鶏肉に色が変わるまで炒める。

鶏肉の色が変わるとそこにタマネイをいれて、透き通るまで炒め火がきちんと通ったら、塩コショウ、ケタップで味付けをする。

(碓氷家では鶏肉とタマネイの他に市販のミックスベジタブルを入れていたけど、ここではないのでシンプルに鶏肉とタマネイだけでつくる。)

味付けをした鶏肉とタマネイに炊いてあったご飯をいれ、水分を無くすようによく炒めたら、お椀を使ってお皿に丸く盛り付ける。


「おいししょー!」


べルム君はクンクンと空気を匂って、可愛らしくお腹を鳴らしながら自分の頬を両手で覆う。


「ふふっ。後は卵だけだからもうちょっと待ってねー?」


我慢しているべルム君を待たせないように、急いで卵を半熟くらいに焼き上げ、盛り付けていたチキンライスの上に被せる。

出来上がったオムライスを既に椅子に座って待っているベルム君の前におき、卵の上に猫の顔をえがく。

オムライスだけだと栄養に悪いので、タマネイと一緒にあったコーンに似ているコーべルとレタスに似ているレタベル、キュウリに似ているキュベルを使って作った簡単サラダも一緒におく。

僕の分とスハイルの分も急いで作り上げ、べルム君の横に座る。


「じゃあ、手を合わせてー?いただきます。」

「いたらきましゅ!」


行儀よく食前の挨拶をすると、美味しそうな匂いで待ちきれなかったらしく、勢いよくかぶりついた。


「ふぁっ!あきしゃん!
おみゅりゃいしゅおいしー!!!」


べルム君は初めて食べたオムライスの味に感動し、プルプルと身を震わせる。


「口にあってよかった。スハイルはどう?」


べルム君の口の端につけている米粒をとって柔らかく笑みを浮かべると、スハイルにも問いかける。


<うむ。オムライスとやらは初めて食べるが、味がしっかりしていて美味しいと思うぞ。>


ガツガツと一心不乱にオムライスを食べていたスハイルは顔を上げて答えると、また食べ始めた。


オムライスを綺麗に完食し、昴広が片付けをしていると、満足気な表情で寝転んでいたスハイルとべルム君はいつの間にか仲良く眠りについてしまっていた。

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