ゆるふわ系乙男召喚士、異世界に舞い降りる
第7話 冒険者登録
前を見れば美の女神様の化身ではないかと言っても過言ではない、どこにも欠点が見当たらない程の清楚感漂う絶世の美女。
その美女の後ろを見れば、40代半ばの執事のような服装をしたダンディな男性。
その男性の横を見れば、ドラゴンと並ぶ程の強大な力を持つと言われている黒毛のフェンリル。
ヴァルファードの冒険者ギルド1の美人で有名なギルド嬢であるルイーゼは、突如現れた美形集団を前に呆然と立ちすくんでいた。
自分以上の美人はいないだろうと、自身の美貌に絶対的な自信を持っていたのだが、ルイーゼは昴広を見たことによってその自信がガラガラと崩れ去ってしまう。
(事実、ルイーゼ目当てにこの都市のギルドにわざわざやってくる冒険者も大勢いる。)
「あの…すみません、はじめまして。昴広と申します。
今日は冒険者として登録したいと思うですが大丈夫でしょうか?」
甘く鈴の音のように澄んだ声で話しかけられ、ハッと意識を取り戻す。
「失礼致しました。担当させていただきます、ルイーゼと申します。本日はギルドへのご登録をなさりたいとの事ですが、お間違いはございませんか?」
ギルド内は未だいつもの騒がしさはなく、静寂に満ちているが、涼やかな笑みを浮かべ、プロのギルド嬢としての職務をし始めた。
「はい、間違いありません。あと召喚獣の登録も一緒にしたいのですが大丈夫でしょうか?」
コクンと頷き、スハイルの首元を撫でながら問いかける。
「大丈夫ですよ。こちらの用紙を元にギルドカードを発行致しますので、必要な箇所のみ御記入頂きます。召喚獣のお名前は下の方にございます、別枠のところに御記入くださいませ。
任意のところは空欄でも大丈夫です。」
書く欄が予め用意されている紙を昴広の前に置く。
昴広はルイーゼから羽根ペンを受け取り、ほかの欄より太い線で囲われている必要な箇所をうめ、ルイーゼに紙と羽根ペンを手渡す。
必要な箇所と言っても、名前や年齢、職業など日本で書かされる用紙などとほとんど同じで、違うところといったらスハイルの名前を書くことくらいだ。
「・・・・・・はい、こちらで大丈夫です。
カードを発行する際には、不正に使われないように登録者様だけのものだと固定化させる必要がございます。
固定化させるために、登録者様の血液を一滴こちらの方にお願い致します。
あと、召喚獣の登録もご一緒に致しますので、スハイル様の体毛を2、3本お願い致します。」
きちんと書かれているか確認し終えたルイーゼからフルーツナイフのようなものと理科の実験で使うスライドガラスのようなもの、スハイルの体毛を入れる用の小さい箱が渡される。
個人情報の管理がしっかりしてるなーと関心しながら、何のためらいもなく白魚のように綺麗な人差し指を切り、血を一滴採取した。
意外なところで男らしさを出す昴広である。
「スハイル、聞いてた通り体毛が必要なんだけど、3本くらいとってもいいかな?」
〈む。構わぬぞ。〉
自分の血をとり終えた昴広はスハイルの方に体を向け、断りを入れてから首を寄せてきたスハイルの体毛を採取した。
「こちらで大丈夫でしょうか?」
自身の血とスハイルの体毛をルイーゼに手渡す。
「はい、大丈夫ですありがとうございます。
これから登録を致しますので、約5分程お待ちくださいませ。」
ルイーゼは昴広からそれらを受け取ると、幾人もの冒険者を虜にしてきた花のように可憐な笑みを昴広に向けた。
両親や姉たちで美形に慣れている為、昴広にはその笑みは効くはずがなく、普通にわかりましたと言葉を返され、ルイーゼは心に傷を負いながら席を立つ。
(数多もの男を落としてきた私の完璧な笑顔が効かないなんて信じられないわ・・・・・・。
というより、男のくせに私よりも美人なんて悔しい!
ふん!なにか事件でも起きてあんなやつの顔なんて醜い顔になってしまえばいいんだわ!!)
ルイーゼはギルド嬢としての仕事をしながら、内心では昴広の美人さに嫉妬の炎を燃やし、呪い事をはく。
そのようなことなど知るはずもない昴広は、初めて訪れたギルドの中を物珍しそうにキョロキョロとみまわしていた。
「昴広様、失礼致します。」
後ろで用事が終わるまで静かに立っていたセバスチャンが、先程切った昴広の人差し指にいつの間にか用意していたらしい布を巻く。
「あ、ありがとうございます。でもちょっとしか切ってないのでそのままほっといても大丈夫ですよ?」
お礼をいいながら、へにょんと眉を下げセバスチャンを見上げる。
「いいえ。昴広様に少しでも傷が残ることがあったら、このセバスチャン、己を許すことなど出来ません。」
登録するために必要なこととはいえ、セバスチャンにとっては許せないことだったらしく、悲しげな表情で昴広を見つめる。
気難しいクラウディオの秘書をしているのだが、礼儀正しい昴広に好印象を抱いており、許されることならば昴広に仕えたいと考えていた。
数時間前にあったばかりなのに天然で人をたらしこんだ昴広。
これからどれだけの人や魔物がたらしこまれるのか末恐ろしい。
「大変お待たせ致しました。こちらが昴広様専用のギルドカードになります。」
五分を僅かに過ぎて戻ってきたルイーゼから、藍色のカードを受け取る。
「ありがとうございます。・・・・・・こちらのカードの方にFと書かれているのですが、どういう意味なのでしょうか?
あと、ほとんど分からないので説明をしていただけませんか?」
受け取ったギルドカードをマジマジと見て不思議に思ったことを問いかけた。
「畏まりました。
まず初めに、昴広様がおっしゃっていたFとは冒険者ギルドでのランクを表しております。
新人冒険者はF・E、中級冒険者はD・C、上級冒険者は、B・A・S、そして最上級のSSがあり、昴広様はご登録されたばかりですので1番下のFランクからのスタートになります。
あちらにございます掲示板からランク毎にある魔物の討伐依頼か、護衛や薬草採取などの細かな依頼を受けるかを一定数して頂きますと、ギルド側の判断でギルドランクをあげさせていただきます。
現在の最高ランクはSランクが3名ほどおり、最上級SSランクはここ数十年ほど獲得したものがおりません。
頑張ってランクをあげてくださいませ。
依頼等はギルドランクがFランクでしたらひとつ上のEランクまで選択することができ、上のランクに行くほど依頼内容や、報酬が高くなっていきます。
依頼遂行中に起こった出来事、例えば怪我や死亡については冒険者ギルドの方では一切の責任を負いませんのでご注意ください。
また、略奪行為や一般民への暴行、恐喝などを行うと軽くて罰金の支払い。
重くてギルドカードを破棄し、冒険者ギルドでの登録内容の抹消となり、犯罪奴隷となってしまいますのでお気をつけくださいませ。
以上で説明を終わりますがなにかご質問はございますか?」
口頭での説明を受けながら、セバスチャンに借りた用紙に重要なところを書いていく。
「いえ、大丈夫です。丁寧な説明ありがとうございました。
疑問に思ったこととかあったら再度聞きたいと思います。」
特に質問することはなかったので、ふわりと笑みを浮かべ頭を下げながらお礼を言い席を立つ。
「・・・・・・本日は依頼を受けていかれないのですか?」
帰る支度をする昴広をみて、ルイーゼは首を傾げる。
ほとんどの冒険者達は登録をするとすぐその日のうちに依頼を受けるのだ。
「はい。待たせている人がいて、依頼内容を詳しくみることが出来ないので今日は登録だけで帰ります。」
「そうですか・・・・・・。昴広様、本日は冒険者ギルドへのご登録頂きありがとうございました。」
幸せそうに微笑みながら(ルイーゼにはそう見えている。)言う昴広に、待たせている人がいるとか誰だよ、リア充かよ!と心の中で吐き捨てる。
昴広が言う待たせている相手はクラウディオなのだが、当然の事ながらルイーゼが知るはずもない。
「いえ、こちらこそお騒がせして申し訳ありませんでした。
明日は依頼を受けに来たいと思いますので、よろしくお願いします。」
明日また来るといい、ルイーゼや他のギルド嬢、冒険者達に見送られながらスハイルとセバスチャンと一緒にギルドの外に出て、クラウディオのお店へと戻り始めた。
その美女の後ろを見れば、40代半ばの執事のような服装をしたダンディな男性。
その男性の横を見れば、ドラゴンと並ぶ程の強大な力を持つと言われている黒毛のフェンリル。
ヴァルファードの冒険者ギルド1の美人で有名なギルド嬢であるルイーゼは、突如現れた美形集団を前に呆然と立ちすくんでいた。
自分以上の美人はいないだろうと、自身の美貌に絶対的な自信を持っていたのだが、ルイーゼは昴広を見たことによってその自信がガラガラと崩れ去ってしまう。
(事実、ルイーゼ目当てにこの都市のギルドにわざわざやってくる冒険者も大勢いる。)
「あの…すみません、はじめまして。昴広と申します。
今日は冒険者として登録したいと思うですが大丈夫でしょうか?」
甘く鈴の音のように澄んだ声で話しかけられ、ハッと意識を取り戻す。
「失礼致しました。担当させていただきます、ルイーゼと申します。本日はギルドへのご登録をなさりたいとの事ですが、お間違いはございませんか?」
ギルド内は未だいつもの騒がしさはなく、静寂に満ちているが、涼やかな笑みを浮かべ、プロのギルド嬢としての職務をし始めた。
「はい、間違いありません。あと召喚獣の登録も一緒にしたいのですが大丈夫でしょうか?」
コクンと頷き、スハイルの首元を撫でながら問いかける。
「大丈夫ですよ。こちらの用紙を元にギルドカードを発行致しますので、必要な箇所のみ御記入頂きます。召喚獣のお名前は下の方にございます、別枠のところに御記入くださいませ。
任意のところは空欄でも大丈夫です。」
書く欄が予め用意されている紙を昴広の前に置く。
昴広はルイーゼから羽根ペンを受け取り、ほかの欄より太い線で囲われている必要な箇所をうめ、ルイーゼに紙と羽根ペンを手渡す。
必要な箇所と言っても、名前や年齢、職業など日本で書かされる用紙などとほとんど同じで、違うところといったらスハイルの名前を書くことくらいだ。
「・・・・・・はい、こちらで大丈夫です。
カードを発行する際には、不正に使われないように登録者様だけのものだと固定化させる必要がございます。
固定化させるために、登録者様の血液を一滴こちらの方にお願い致します。
あと、召喚獣の登録もご一緒に致しますので、スハイル様の体毛を2、3本お願い致します。」
きちんと書かれているか確認し終えたルイーゼからフルーツナイフのようなものと理科の実験で使うスライドガラスのようなもの、スハイルの体毛を入れる用の小さい箱が渡される。
個人情報の管理がしっかりしてるなーと関心しながら、何のためらいもなく白魚のように綺麗な人差し指を切り、血を一滴採取した。
意外なところで男らしさを出す昴広である。
「スハイル、聞いてた通り体毛が必要なんだけど、3本くらいとってもいいかな?」
〈む。構わぬぞ。〉
自分の血をとり終えた昴広はスハイルの方に体を向け、断りを入れてから首を寄せてきたスハイルの体毛を採取した。
「こちらで大丈夫でしょうか?」
自身の血とスハイルの体毛をルイーゼに手渡す。
「はい、大丈夫ですありがとうございます。
これから登録を致しますので、約5分程お待ちくださいませ。」
ルイーゼは昴広からそれらを受け取ると、幾人もの冒険者を虜にしてきた花のように可憐な笑みを昴広に向けた。
両親や姉たちで美形に慣れている為、昴広にはその笑みは効くはずがなく、普通にわかりましたと言葉を返され、ルイーゼは心に傷を負いながら席を立つ。
(数多もの男を落としてきた私の完璧な笑顔が効かないなんて信じられないわ・・・・・・。
というより、男のくせに私よりも美人なんて悔しい!
ふん!なにか事件でも起きてあんなやつの顔なんて醜い顔になってしまえばいいんだわ!!)
ルイーゼはギルド嬢としての仕事をしながら、内心では昴広の美人さに嫉妬の炎を燃やし、呪い事をはく。
そのようなことなど知るはずもない昴広は、初めて訪れたギルドの中を物珍しそうにキョロキョロとみまわしていた。
「昴広様、失礼致します。」
後ろで用事が終わるまで静かに立っていたセバスチャンが、先程切った昴広の人差し指にいつの間にか用意していたらしい布を巻く。
「あ、ありがとうございます。でもちょっとしか切ってないのでそのままほっといても大丈夫ですよ?」
お礼をいいながら、へにょんと眉を下げセバスチャンを見上げる。
「いいえ。昴広様に少しでも傷が残ることがあったら、このセバスチャン、己を許すことなど出来ません。」
登録するために必要なこととはいえ、セバスチャンにとっては許せないことだったらしく、悲しげな表情で昴広を見つめる。
気難しいクラウディオの秘書をしているのだが、礼儀正しい昴広に好印象を抱いており、許されることならば昴広に仕えたいと考えていた。
数時間前にあったばかりなのに天然で人をたらしこんだ昴広。
これからどれだけの人や魔物がたらしこまれるのか末恐ろしい。
「大変お待たせ致しました。こちらが昴広様専用のギルドカードになります。」
五分を僅かに過ぎて戻ってきたルイーゼから、藍色のカードを受け取る。
「ありがとうございます。・・・・・・こちらのカードの方にFと書かれているのですが、どういう意味なのでしょうか?
あと、ほとんど分からないので説明をしていただけませんか?」
受け取ったギルドカードをマジマジと見て不思議に思ったことを問いかけた。
「畏まりました。
まず初めに、昴広様がおっしゃっていたFとは冒険者ギルドでのランクを表しております。
新人冒険者はF・E、中級冒険者はD・C、上級冒険者は、B・A・S、そして最上級のSSがあり、昴広様はご登録されたばかりですので1番下のFランクからのスタートになります。
あちらにございます掲示板からランク毎にある魔物の討伐依頼か、護衛や薬草採取などの細かな依頼を受けるかを一定数して頂きますと、ギルド側の判断でギルドランクをあげさせていただきます。
現在の最高ランクはSランクが3名ほどおり、最上級SSランクはここ数十年ほど獲得したものがおりません。
頑張ってランクをあげてくださいませ。
依頼等はギルドランクがFランクでしたらひとつ上のEランクまで選択することができ、上のランクに行くほど依頼内容や、報酬が高くなっていきます。
依頼遂行中に起こった出来事、例えば怪我や死亡については冒険者ギルドの方では一切の責任を負いませんのでご注意ください。
また、略奪行為や一般民への暴行、恐喝などを行うと軽くて罰金の支払い。
重くてギルドカードを破棄し、冒険者ギルドでの登録内容の抹消となり、犯罪奴隷となってしまいますのでお気をつけくださいませ。
以上で説明を終わりますがなにかご質問はございますか?」
口頭での説明を受けながら、セバスチャンに借りた用紙に重要なところを書いていく。
「いえ、大丈夫です。丁寧な説明ありがとうございました。
疑問に思ったこととかあったら再度聞きたいと思います。」
特に質問することはなかったので、ふわりと笑みを浮かべ頭を下げながらお礼を言い席を立つ。
「・・・・・・本日は依頼を受けていかれないのですか?」
帰る支度をする昴広をみて、ルイーゼは首を傾げる。
ほとんどの冒険者達は登録をするとすぐその日のうちに依頼を受けるのだ。
「はい。待たせている人がいて、依頼内容を詳しくみることが出来ないので今日は登録だけで帰ります。」
「そうですか・・・・・・。昴広様、本日は冒険者ギルドへのご登録頂きありがとうございました。」
幸せそうに微笑みながら(ルイーゼにはそう見えている。)言う昴広に、待たせている人がいるとか誰だよ、リア充かよ!と心の中で吐き捨てる。
昴広が言う待たせている相手はクラウディオなのだが、当然の事ながらルイーゼが知るはずもない。
「いえ、こちらこそお騒がせして申し訳ありませんでした。
明日は依頼を受けに来たいと思いますので、よろしくお願いします。」
明日また来るといい、ルイーゼや他のギルド嬢、冒険者達に見送られながらスハイルとセバスチャンと一緒にギルドの外に出て、クラウディオのお店へと戻り始めた。
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