僕らのダンジョンアタカッーズ!

石神もんすとろ

ようこそ!ファンタジア学園へ!~特待生は注目の的でした 2~

僕達はそれぞれに当てられた部屋へ荷物を置いた後、船の様々な場所を一緒に回ることにした。カジノやプール、食事に買い物。あらゆる施設が揃いに揃ってるこのマーヴェラス号の全ての施設を回るのは何時間合っても足りない。そのため、行きたい場所がある人はそちらを優先しようという提案をロデルがしたところ、ミファーはレティアを連れ回してブティックを梯子しながら彼女を着せ替え人形にしてしまった。

「キャー!可愛い!レティアちゃん似合ってる!」
「なんだこの格好!?ゴワゴワして超絶やだ!」
「そう?じゃあこっちの動き易さを重視した服ならどう?」
「それも何かフリフリしててやだ!何時もの格好がいい!」
「何時ものってあの男の子っぽい格好の事?ダメよそんなの!レティアちゃんも女の子なんだからオシャレに気を使わないと!だ・か・ら~、私がコーディネートしてあげる!」
「むわー!!助けてクニハルー!!」

……無理です、ごめんなさい。いや、最初は何とか止めようとしたんだけど、こういう時の女子の強引さって何か抗おうとするだけ無意味というか、逆に論破されるというか、とにかくミファーを止めることは出来ないというわけだ。

「あーあ、結局こうなっちまった。女の買い物はこっから長いぞ~」
「あのチビスケ生きてかえってこれっかな。ミファーは一度こうなると妥協しねぇもんな」

どうやらちょっとやそっとじゃレティアは解放してもらえないらしい。
その後も二人の言うとおり、レティアは即座に解放されず、ミファーによって何件もの店を梯子することになり、その度に服を着せ変えられていく。そして僕達はそれを遠巻きに見ることしかできず、その結果ーー

「…………。(ムッスー」

ーーレティアが凄いふてくされてしまった。それほどまでにミファーの可愛がりが鬱陶しかったのか。当の本人は今、ロデルとバスターから「やり過ぎだ!」と絶賛怒られ中である。本人も調子に乗りすぎたと思っていたらしく、二人の言葉に反論できずに縮こまっていた。

「えと、その~……レティア?大丈夫?」
「…………れな……た」
「え?」

「クニハル助けてくれなかった」

そう言ったレティアの顔は涙目だった。
この時ようやく僕はやってしまったという気持ちになった。
そうだよね。レティアはこういう事になれてないし、ちゃんと助けを呼んでいたんだ。
なのに僕は助けられなかった。
たかが買い物といえど嫌な物は嫌なんだよね。僕だってあの時レティアに助けられなかったらここにいなかっただろうし、きっと色んな事を恨んでた。レティアもベクトルは違えど同じ気分なのだ。
……反省した。僕がこの中でレティアが一番頼れる人ように、この中でレティアが一番に頼るのは僕なのだ。その事を失念していた。
いや、今は僕の反省よりとにかく機嫌をとっておかないと。ミファーだって悪気があった訳じゃ無いのだから、変な溝は作らないでおかないと。

「レティア?何か欲しいものとかある?買ってくるよ」
「……ホントか?」
「うん。だから何でも言って?」

浅ましいとは自分でも思うけど今僕ができるご機嫌取りなんてこれくらいしかない。それにレティアの事だ何が欲しいかの見当は大体ついてる。そう難しい物は要求しないはずだ。


「…………アイス」
「何だぁ?アイス?お前さっきたらふく昼飯食ったばかりだろうがよ」
「ホンット分かってない!女の子にとってデザートは別腹なのよ」
「なにぃ!マジか!女ってデザート用の胃袋があるのか!?お前それ牛と一緒じゃねぇか!」
「それどういう意味かしら……」
「いやいや、そういう意味じゃないからな。だから落ち着けー」

バスターのデリカシー皆無な発言にキレかけるミファー。そしてそれを嗜めるロデルという図。何というかロデルの対応を見ると何時もの光景だとわかる。やっぱり彼は苦労人なんだな。
まぁ、別腹かどうかはともかくとして、バスターの言う通り、レティアは昼にまたとんでもない量の料理を食している。僕は朝に明らかに食べ過ぎたため、昼は控えたけど、レティアはピグラットを丸々3頭食べても「まだいける!」と言ったほどの大食漢だ。正直、昼御飯もあれだけじゃ物足りないのだろう。
しかしアイスか……。なんとも見た目相応の可愛らしい欲求だ。口にしたら怒られそうだから言わないけど。さて、探せばあると思うけど近くにあるかどうか。あ、あそこにあった。

「それじゃあアイス買ってくるから皆は何か欲しいのある?」
「おっ!俺らの分もか!スカッとするソーダがいいな!俺は」
「ちょっと遠慮無さすぎよ!あんたってばもう!」

バスターの遠慮の無さに食って掛かるミファー。別に聞いてるのはこっちなんだから遠慮は要らないんだけどな。

「……甘いのならなんでもいいぞ」
「俺はいいよもう腹一杯だし。……あとコレそこの遠慮知らずのアホの分な。んでこっちはミファーの分」
「ちょっとロデル!私は別にーー」
「いいからお前も何か頼んどけ!冒険者足るもの、いつ訪れるかわからないチャンスは物にするもんだぜ?」
「バスター……。あんたは無遠慮なだけでしょうもう。でもそうね、下手に遠慮がちなのは逆に失礼か……。じゃあクニハル君?イチゴ味お願いできる?」
「了解」
「んじゃこれ。改めて代金な」

そういってロデルから二人分のアイスの代金を貰う。うん、やっぱりこの三人は幼馴染なんだなって改めて思う。

「それじゃあ行ってくるよ」
「おう、気をつけてな」




「すいませ~んアイスクリーム下さい」
「あいよ。なに味にする?」

うーん、ざっと見るといろんな味があるな。イチゴにメロン、グレープ、チョコ、んん?この『スペシャル』とは一体?

「あのー?このスペシャルってなに味何ですか?」
「ああ、それかい?ウチの店の看板商品さ。特別な果実を使っていてねぇ、味に関しては食べた本人の一番好きな果物の味に変わるんだよ。だから特別スペシャル

すごいなそれっ!コレならレティアも喜ぶだろうな。早速買っていこう。

「それじゃあ、あばちゃん!このスペシャルアイスとイチゴとソーダの三つで!」
「あいよ。お兄さん運が良いねぇ。このスペシャルアイスは限定商品だから客足が凄くてねぇ。お兄さんの分で最後の一個だったんだよ」

うわあ、それは何というかお得感がある。ちょっと値段は張るけどコレならレティアの機嫌治るのは間違いないな。本当にタイミングがいいな。

「ハイよ、これソーダとイチゴとスペシャルね」
「有難う御座います!」
「あの……」

ーーうん?あっ。

「もうスペシャルアイスは無いんでしょうか」

この人は、ルシィクさんの店ですれ違った女の人!ルシィクさんから同じ学園へいくとは聞いていたけど、まさかまた会えるとは。

「スペシャルならもうないよ。お兄さんので最後さ」
「そう、ですか……」

金髪の人はあからさまに落ち込んでしまう。う~ん、何か後味悪いな。……レティアがここにいたらどう反応しただろう。……きっとレティアならこうするだろうな。そう思うと僕の体は自然と動いていた。

「それじゃあ、メロンアイスをーー「あのっ!」……っはい?」
「スペシャルアイス良ければどうぞ」
「……ええっ!?」

驚いてるな。うんまぁ普通はそうだよね。見ず知らずの人からいきなりアイスあげますと言われて驚かないわけがない。

「おやおや、紳士だね。お兄さん」
「な、なりません!それは貴方が買ったものです!私が何の見返りもなく貰うなど……」
「うん、でもこのアイス食べたかったんでしょ?」
「それは、その…………はぃ」

目の前の金髪の少女は恥ずかしそうに頭を小さく縦に振る。うわ、今ちょっと一瞬変な高揚を感じた。けどすぐに気持ちを切り替えて僕はアイスを彼女に差し出す。

「大丈夫だよ。このアイスをあげる娘って、多分全部の果実が好きとかいう人だからそこまで有り難みを感じないと思うんだよ。それにあの娘がここにいたら同じ事をしてたと思う。だからこっちのメロンで十分」

と理由を適当に並べて見るけど実際レティアの場合、果物全部好きとか本当に言いそうなんだよな。失礼な気もするけど。

「それは……い、いやしかし……」

うーん、中々受け取らない。このままだとアイスが溶けるんだけどな。うん、じゃあ仕方ないか。


「ならこうしよう!君もファンタジアに行くんだよね?」
「え?あっはい。そうですけど」
「ならその時にまた会ったら、何か頼むよ。それでいい?」
「えと、具体的には何を……」
「うーん、勉強とか、かな。僕はちょっと冒険者について知らない事が多いから」
「そう、ですか……わかりましたそれなら」
「うん、交渉成立だ。それじゃはいこれスペシャルアイスね。でこのメロンアイスは僕が貰うよ」
「はいそれで。あの、貴方はーー」

『attention please!attention please!当船はまもなくファンタジア学園島へと到着致します。御乗船の皆様は荷物をまとめ、下船の準備をお願いします。繰り返します。当船はまもなくーー』

うわっ!?ヤバい!?もうこんな時間だ!急いで皆に合流して荷物をとってこないと!

「それじゃあ僕もう行くね!!学園でまた!」
「えっ!?待ってまだ名前をーー」

急がないと皆を待たせてる!これ以上遅れるとバスター辺りが凄く騒ぎそうだな。それよりもいよいよ学園だ。ここからだ。何をするにしてもここから始まる。今はとにかく急ぐ!



「…………まだ名前をお聞きしてないのに」
「(青春だねぇ)」




「ごめん!遅れた!」
「おせーぞ!アイス買うのにどんだけ時間かけてんだ!」
「ちょっとゴタついてて、ああはいこれ。アイス買ってきたよ」
「おお!サンキュー!」
「ありがとう。何かゴメンね?」
「いいよ。もののついでだったし」
「うん。レティアちゃんもさっきはゴメンね?」
「ん。謝るのなら許す」

レティアも本当はちゃんと気付いていたんだろう。ミファーのお節介が彼女が楽しむだけでなく、ちゃんと自分のためでもあるのだと。僕はレティアにアイス渡そうとレティアと向き直る。

「ほらレティア……それと、僕からもごめん。君が助けてって呼んだのに助けられなかった」
「ん。なら次は助けてくれるか?」
「絶対助けるよ。」
「ん、じゃ、約束な」

そういってレティアの小さな掌が僕の掌に重なってくる。これは一体なんだろうか?

「レティア?」
「シショーが教えてくれた約束の時のおまじないだ。約束を破ったらこの手が合わさる事は二度とない。でも約束を守ったらこの手はまた合わせられるって。約束するか?」

僕の世界での指切りのようなものか。約束を違えたら、この手が二度と合わさる事はないか……。約束を破るという裏切り行為は人との絆を容易く壊す、という事なんだろうか。うん、でもそれぐらいの覚悟は必要だよね。

「うん、約束する」
「絶対だぞ」
「うん、絶対」
「……なら、約束だ」




「レティア、アイスの味はーー」
「……んん~♪」

聞くまでもないか。幸せそうな顔してる。

「お前らー!悠長にアイス食ってる暇ないぞー!早く荷物取りに行くぞ」

三人がアイスに舌鼓を売っているとロデルが催促してくる。おっとそうだった!もうすぐ下船するんだった。

「うおお、そうだった!急ぐぞお前ら!」
「ちょ、あんたもうアイス食べたの!?」

バスターが即座に移動を初め、ミファーもアイス片手にそれに付いていく。僕もレティアと一緒に二人の後を追いかけていく。

「クニハル!いよいよだな!」
「うん!ようやくたどり着いた」
「ここからだな!」
「うん!何が起こるかわからないけど、やるだけやってみるさ。それもふくめて冒険だもんね!」
「おおっ!」

ーーそうだ、ここからだ。ようやくこの場所に着いた。あの声のことも、この世界の事も、僕がこの先どうすればいいのかも、全部!あの学園に行くことでようやく分かる!
天国の父さん、どうか見守ってて下さい。僕はこれからこの場所で、自分の意思で、自分の道を決めます。
ーーこの、ファンタジア学園で!

ああ、そうだった。一つ聞いておきたいことがあったんだった。

「ねえレティア!」
「なんだ!?」
「果物は何が好きなの!」

「全部!」

ーー君ならそう言うと思ったよ。




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