僕らのダンジョンアタカッーズ!

石神もんすとろ

ようこそ!ファンタジア学園へ!~特待生は注目の的でした 1~

ザワザワ……アレガ……ザワザワ……エーナンカフツウ……

ーーあぁ、一体何故こんな事になってしまったのか……。

『それでは新入生代表挨拶。シンドウ クニハル!』

僕は何が悲しくてステージに立って全生徒の前でスピーチをしなくてはならないのか……。
全ては数時間前に遡ります。




~数時間前~

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「ーー凄い」

今僕達ふたりの目の前にあるのは巨大な豪華客船だ。学園に行くために港へとやって来て見ればこの船が堂々と待っていたのだ。

「おっきい!クニハル凄くおっきい船だぞ!」
「うん。予想してたものよりもかなり大きい。これがファンタジア行きの船」
「その通り~!」
「「うわぁ!(うひゃあ!)」」

船を見上げてる僕らの背後から突然間延びした声がかけられて二人してびっくりしてしまう。反射的に振り向くとそこにはツアーガイドのような格好をした女性が小さな旗をパタパタさせながら、にこやかな笑みで立っていた。

「はぁ~い!初めまして~!ワタクシはこのファンタジア学園が独自に保有する豪華客船『マーヴェラス号』の船員クルー兼ガイドを務めますシャーリィ・メルサと申しま~す!以後お見知りおき願いま~す!」

いきなり現れて、いきなりの自己紹介に僕とレティアは一瞬固まってしまう。
そして僕達がポカンとしてるにも関わらず得意気な顔で女の人は自己紹介終える。そして直ぐ様此方に手を差し出してきた。

「はぁ~い!御二人ともファンタジア学園の新入生ですよね~?でしたらここで切符代わりに合格通知書の確認を行いま~す!」

……はっ、あぁ成る程切符の確認ね。硬直した意識が戻って直ぐ様、僕は鞄の中からあの忌々しい思い出しかない通知書を取り出す。レティアも同じように鞄から通知書を出して既にガイドさんに手渡していた。

「はぁ~い!確かに、それでは本人確認しま~す!」

そういってガイドさんはレティアの合格通知書に手をかざす。すると通知書にレティアの顔が浮かび上がった。

「はぁ~い!確かに本人確認が完了しましたよ~!それでは次は貴方の番……っ!?これって……!」

僕が通知書を手渡すと、ガイドさんがそれを凝視して動きを止めてしまう。
ーーえっ……何?何か不味いことでもあった?もしかして僕は入学出来ない!?
そんな不安感が襲ってきて我慢できずにガイドさんに何があったか恐る恐る訪ねてみる。

「あ、あの~……どうかしました?」
「ーーへっ!?いいい、いえいえ~!何でもありませんよ~!そ、それでは~早速本人確認~!………………は~い!異常な~し!」

明らかに何かあるとしか思えない反応によってますます不安になってしまったが、どうやら入学自体には何らか問題はなかったようで安心した。
ガイドさんから手渡された通知書には確かに僕の顔が浮かび上がっていた。まるで証明写真みたいだが、一体どういう原理何だろう。

「は~い!それでは御二人とも無事ファンタジア学園に御入学出来る様子なので、改めまして……豪華客船マーヴェラス号へようこそ~!学園につくまでの間、当客船内部のレジャー施設にて御ゆるりとおくつろぎくださいませ~!」

まぁ、今考えていてもしょうがないか。それより早く船に乗り込まないと。レティアもいい加減待ちきれない様子だし。


「それでは!良い旅を~!」

「ぉおおおおお!!クニハル行こう!!楽しそうだぞ!!」
「はいはい、わかってるよ。あんまり羽目を外さないようにね」

「ごゆっくりどうぞ~!」




「ごゆっくりどうぞ~!……………………」

二人を見送ったシャーリィは突然先程までのにこやかな笑顔を真面目な物へと変え、懐から通信機のような物を取り出し耳に取り付ける。そして何処かに繋ぎ、静かに会話を始めた。

「……私です。えぇ、はい、現れました。シンドウ クニハル、少年です。一見何の変哲もない様子でしたが……。はい、はい、直に確認したので間違いないかと。はい、了解しました。では、そちらは準備をお願いします」

会話を終え、通信機を外す。そしてゆっくりため息をつき、件の少年が歩いて言った方角を目を細くして眺める。

「ふ~。特待生……か」
「あのーすいませーん」

後ろの方から声がする。おそらく別の新入生だろう。シャーリィは即座にそちらへと振り向く。先程までの空気が無かったかのようににこやかな笑顔を浮かべながら。

「はぁ~い!此方マーヴェラス号へようこそおこし下さいました~!」




「「おおおおおぉぉぉぉ~!!」」

マーヴェラス号に乗り込んだ僕らが見たものは、絶景だった。外側で見た時よりも広く感じるエントランスホールに、オレンジ色の光に照らされて、まるで宝石のように輝く大階段。
いくつも存在し、かつそれぞれに専門の料理があるレストラン。
全面ガラス張りの日当たりの良いテラス。加えて外には巨大なプールまでついており、既に何人かはそこで泳いでいる。
更にカジノや、一体どういう遊びかは解らないけど、見てると参加したくなりそうなゲームの数々。
見れば見るほど別世界としか表現出来ない光景に自然と固唾を飲み込む。
初めてこの世界に来て良かったと思った。それぐらい自分は今感動している!
それは隣にいるレティアも同じようで、僕の袖をぐいぐい引っ張って、目をキラキラさせ、更には涎を垂らしながらレストランの方へと指を指している。
ーーレティア、言わずとも解るよ。

「マーヴェラス号全施設制覇いくぞぉぉぉぉぉぉぉ!!先ずは目の前のレストランだぁぁぁぁぁ!!」
「うおおおおおおおお!!」

えっ?羽目を外すなって言ってなかったかって?知らんな。




「プハー!旨かった!」
「朝食食べたばかりなのにすんなり胃の中に入っていったよ……。すごいな、ここの料理は」

僕らは、高級料理に舌鼓をうった後、部屋に荷物を片付けるついでに、ゆっくりと船内を回ることにした。僕は改めて船内をぐるりと見渡す。
見えるのは先程と同じオレンジの光に照らされている船内に、これから自分達同様、ファンタジア学園へ入学する冒険者の卵たち。あまりキョロキョロしてると田舎者だと思われるかもだけど、観察せずにはいられない。相手方には失礼かもだが、僕の場合情報解析アナライズを使わない分まだ良識的だろうきっと。
身軽な装備の上にマントで身を包んだ人や、腕にバックラーをつけた筋肉質な人。ーーうわっ!スッゴい大きな……槍?いや薙刀か?それを背負ってるのに表情一つ変えない人もいる。
そうやって一人一人の出で立ちを観察しながら船内を徘徊していると、見覚えのあるバンダナをつけた、チンピラ風の男とノッポな男を見つける。バスターとロデルだ。二人もどうやらマーヴェラス号に乗っていたらしい。僕は先行しているレティアを呼び掛け、二人のいるところに移動しようとする。
ーーん?二人の影にいて気が付かなかったけれどもう一人いるな。遠巻きからだけど、あれは女の子だ。魔法使いがよく被っているイメージのとんがり帽子にローブ、よく見ると短めの杖が腰に差してあるのが見てとれる。

「ーーーッ!バカッーーーーイノ!!ハジーー!」
「ダレガーー!オマエハーー!ーーーーダロ!!」

そしてそんな彼女は現在バスターたちに対して怒っているように見える。というか喧嘩しているのかなあれは。三人の所に近付いていくに連れて、件の女の子とバスターの声が聞き取り安くなっていく。

「こんの恥知らずのチンピラバスターッ!!人様に剣買って貰っておいてそれを堂々と掲げてるなんて正気じゃないわ!?」
「うるせぇよ!!こいつは漢と漢の友情の証なんだよ!!俺はこの『光輝く不滅の剣シャイニング・イモータル・ブレイド』で最高の冒険者になるんだよ!!ロマンも理解出来ないくせにギャーギャー言ってんじゃねえ!!」
「……おーい、また名前変わってるぞ。つか、回りの迷惑をーー」
「なぁにがロマンよ!!ただのブロードソードに聞いてるこっちが恥ずかしくなりそうな名前つけてんじゃないわよ!!明らかに名前負けだから!勿論剣じゃなくてアンタの方が!!」
「お前それどういう意味だゴラァ!!?俺がこの剣使うのに相応しくないって言ったのかアァッ!?」
「……おーい」
「そう言ったのよこのオタンコナス!!ママもママよ!アンタ見たいな格好付けにわざわざ剣なんて売らなくても、そこら辺の良い感じに長い棒切れの方がお似合いなのにどうしてわざわざ知り合い価格で売ったのかしら!!」
「ふっざけろテメェ!!それつまり俺がそこら辺のごっこ遊びしてるガキと一緒ってことじゃねえか!!誰がガキだゴラァ!!」
「いやだからーー」
「ガキでしょうが何時まで立っても!!昔からこれっぽっちも変わらない!!あーあ、ラウルさんが可哀想!こんなお馬鹿さんの相手を毎日してるなんてその内体壊さないか心配だわ!」
「親父の話はすんじゃねぇぇぇぇぇ!!今それ関係ねぇだろうがぁぁぁぁぁ!!」
「ーーいや聞けぇ!!人の話をぉぉぉ!!」



「「デジャヴ」」






「いやー、ごめんなさいね。何だか恥ずかしい所を見られちゃった見たいね」

「……いえ、お気になさらず」

その後、少女は僕達の存在に気付いて口喧嘩を止めて此方へやって来た。
なんかこのやり取りも前にやった気がする。

「それで、貴方たちは一体……あら?そのダガーは……」

少女は僕の持っているダガー『織姫・彦星』に注目している。

「ああ!もしかして、貴方がクニハル君とレティアちゃん!?」
「え?ええ、そうですけど……」
「やっぱり!やだー、こんなに早く会えるなんて!何かゴメンねー、ウチのバカが迷惑かけた見たいで」
「誰がバカだ!」
「宜しくねレティアちゃーん」
「ーー無視かよっ!!」
「ていうかこの娘カワイー!」
「おお!?ーームギュー!」

少女はレティアの手を取るとそのまま自分の方に引き寄せてレティアを抱き締める。何というか凄く勢いの強い人だな。

「ーーで、彼女は一体……」

取り敢えず話が進まないため、僕は手っ取り早くロデルに聞く。

「ああ、彼女はミファー。俺達の幼なじみだよ」
「ミファー・レレイよ。ミファーでいいわ。貴方がそのダガーを買った店の一人娘よ。」
「ムギュギュ……」
「モリーさんの!?」

何と彼女はモリーさんの娘らしい。それで僕達の事も知っていたし、『織姫・彦星ベガ・アルタイル』を見て反応したのか。
ーーというかレティア苦しそうだから離してあげて?

「ママから二人の事は聞いてる。パパの作ったダガーを買って名前を付けて、そこのバカに剣を買ってあげた良い人だって」ダレガバカダッ!!

「確か『織姫と彦星ベガとアルタイル』だっけそれ」ウォーイ!ムシスンナサッキカラ!!

「良い名前よね~。たしか恋人同士の星の名前だっけ?何だかロマンチックだわ。どっかのバカの厨二臭い名前より遥かにいいわ!」ソレオレカ!?オレノコトカソレハ!!

憐れバスター、全く相手にされなくなっている。にしても以外とダガーの名前が好評なのが恥ずかしくあり、同時に嬉しく思う。

「あはは……。ありがとう自分でも洒落た名前付けちゃったかなって思ってたんだけど、受けがよくて何よりだよ」
「確か故郷の言い伝えか何かだっけか」
「うん。一年に一回だけしか会えない恋人の話なんだ。僕のいた場所ではその時期になると、本来なら離れている二つの星の距離が短く見えるようになるんだ。そこから二つの星は恋人同士、あるいは夫婦だって言い伝えが残ってて、その二つの星に向かって願い事をするんだ」
「やだ、聞けば聞くほどロマンチック……。一年に一回しか会えない遠距離恋愛……。されど二人は必ず一年に一度会う約束をする。あ~、私もいつかそういうロマンスがしたいわ」
「女はこの手の話は好きだよなー。やっぱそういうのに興味あんの?」
「当然よ!恋に興味の無い女の子なんていないわよ。こんなの太古な昔から決まってることよ?」
「へーへー、古代人で悪かったよ」
「そう思うんなら、早く現代に馴染まないとねぇ」
「はっはっはっ。一生馴染めそうにねぇや」

うーん、流石に幼なじみなだけあって会話がスムーズかつ遠慮がない。

「プァハ……!」
「ああ!ゴメンねレティアちゃん、すっかり忘れてたわ」
「人、一人抱えて忘れるって……」

僕もロデルと同意件である。

「うなー!はーなーれーろー!」
「あらら、レティアちゃんスッゴい力!レベルいくつ?」
「おい、失礼だぞ」
「うー!クニハルー!こいつ怖い!」

ようやくレティアはミファーの拘束から脱出して僕の後ろに隠れてしまう。

「ぅう”ー!」

そこから少しだけ顔を覗かせてミファーに威嚇をする様はさながら小動物だ。

「はぁ~やっぱり可愛い……」

しかしそれが逆効果となり、余計に興味を持たれる切欠になっている。憐れなり、レティア……。

「ところで二人はこれからどうするんだ?俺達は一旦自分の荷物を部屋に置いてくるつもりだけど」
「ああうん。僕達も同じだよ」
「なら途中まで一緒に行きますかね」
「うん。ありがとう」
「ならレティアちゃんは私と一緒にいきましょうねー!はい決定!」
「むわー!やだー!助けてクニハルー!!」

レティアがそのまま引きづられて行ってしまう。僕はロデルに顔を向けると、彼はやれやれといった風に表情を変え、二人の後をゆっくりと追う。そして僕もそれに続いた。



「だから!俺を!!無視すんじゃねぇぇぇぇぇぇ!!!」






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