僕らのダンジョンアタカッーズ!

石神もんすとろ

ようこそ!ファンタジア学園へ!~アルネイでの新たな出会いでした~

 ラウルさんの店を後にした僕達は、教えて貰った店で道具を一式と装備を整えてることが出来た。ポーションにいざという時の保存食。キャンプ道具の追加。ファンタジア学園にも店はあるらしいが、どれくらいの品揃えかわからない以上、準備をしておくことに越したことはない。といっても僕は冒険者についてはこれっぽっちもわからないため、道具はほとんどレティアに頼りっきりになってしまったが……。
道具屋である程度の準備を終えて次に服屋で僕の服を新調することになった。去らば元の世界の制服よ。

「クニハルその服似合ってるぞ!」
「そ、そうかな?ありがとう」

僕が服屋で、ワイシャツに紺色のベスト、スラックスにローブというちょっとだけ社会人を意識した服装に着替えた。といってもほとんど店員さんの、コーディネート何だけど。しかしこの服、思った以上に着心地がいい。冒険者用に調整されているらしく、動きやすさを重点的に仕立てているそうだ。こんなにも着心地がいいのに御値段全部で何と、6280リコル。お買い得であった。流石ラウルさん紹介のお店。服装を整えて気分も心機一転、最後に武器を見て、ご飯を食べて今夜の宿を探す。

「あったぞクニハル!あの店だ!」
「うん。どうやら間違いないみたい」

ラウルさんから教えて貰った店と特徴も合ってる。店の名前は『ウェポンガーデン』。うん、店の名前も合ってる。しかし、直訳して『武器の庭』か。ここも変な名前をしている。

「ごめんくださーい」


「ーーだぁかぁらぁぁぁっ!!!もうちょいまけてっていってんだろうがよぉぉぉぉぉ!!!」
「ふっざけんじゃねぇ!!!これ以上まけたらこっちが大損するだろうがぁ!!!商売嘗めんなクソガキィ!!」
「なぁ、もうその辺にしようぜ……つーか客きたぞ……」
「誰がクソガキだ糞ババァ!!あー傷ついたー!純情な少年の心が傷ついたー!!責任とってこの剣安くしてもらわないと割に合いませんなぁこれは!!」
「テメェも糞ババァっていってんじゃねえかぁ!!つーかそんな簡単に傷つく心だったら冒険者とか向いてないから!!もう買うなその剣!!」
「いやだからな?客が……」
「嫌だね!!この剣からは俺の心を刺激するパッションのような物を感じたんだ!この『偉大なる破滅の剣グレート・デストロイ・ブレード』は俺のもとにある運命なんだよ!!」
「ただのブロードソードに痛々しい名前つけんじゃねぇぇぇぇぇ!!!」
「ーー話聞いてぇぇぇ!!?」


「「カオス」」





「いやーすまないねえ!何だか恥ずかしい所を見られちまった」
「い、いえお気になさらずに……」

先程の口論、というか罵り合いが一段落した後、女の人が僕達が入店していた事に気付き、慌て僕達の接客をしようと此方へやって来た。

「へぇ、あんた達ラウルの知り合いかい」
「知り合いといいますか、この港町に来た僕達に色々と教えてくれたんです」
「あっはっはっは!!アイツらしいよ!ラウルはこの町の顔だからね、頼りにしている奴は多いんだよ。あぁ、自己紹介がまだだったね。私はこの武器屋の店番をしてるモリーだ。宜しくね二人とも」
「は、はい!よろしくお願いします。シンドウ クニハルです」
「レティア・チェ・ネッレブッルだぞ!よろしくな!」

互いに自然と握手をする。モリーさんはサバサバとした気持ちのいい感じがする。ルシィクさんのような妖艶さとは真逆な雰囲気だ。
しかし、そんなに凄い人だったのかラウルさん。そんな人にいきなり話しかけられたのは本当に運が良かったんだな。

「けっ!なーにがこの町の顔だよ!あんなもん口うるせぇだけだっつーの!!」
「おいバスター……」
「なー!ロデルもそう思うよなー!」
「いや、俺は別に……」

僕達とモリーさんの会話に、先程モリーさんと舌戦?を繰り広げていた頭にバンダナを巻いたチンピラ風の男と、背が高く何だか苦労人の気配が漂う男の二人組が会話に混ざってくる。その時バスターと呼ばれたチンピラ風の人にレティアが食って掛かる。

「むー!おっちゃんは超絶優しいぞ!色んな事を教えてくれたぞ!」
「あ?なんだこのチビッ子」
「チビじゃない!レティア・チェ・ネッレブッルだ!」
「うわ、舌噛みそうな名前!」
「なああっ!?」

あ、遂に言われた。

「むわーん!クニハル!コイツ超絶やなやつだ!」
「ああ、うん。よしよし」

レティアはチンピラ風の人に言われた言葉がショックで僕の腕に泣きついて来たので頭を撫でて宥める。何だろう、だんだんレティアが妹みたいな物に思えてきた。あるいは小動物。

「なんだよ!俺何か悪いこと言ったか!?」
「いやー言ったろ。今のはお前が悪い」
「ああ!?」
「バスター!いい加減にしな!女の子虐めて、それでも男かい!?それに自分の親父を悪く言うもんじゃないよ!」
「うるせぇ糞ババァ!冒険者辞めて野菜や肉仕入れてるような奴は親父じゃねえよ!」

親父?今モリーさんはこのチンピラ風の人をラウルさんの子供と言ったのか? 

「えと、君はラウルさんの息子さん?」
「だから違ぇよ!」
「いや、合ってるよ」
「ロデルゥゥ!!」

背が高い人が僕の質問を肯定しチンピラの人に掴みか
かられている。

「てめっ何ふざけた事言ってやがる!」
「いいじゃないか別に。事実なんだから」
「だからあんな奴親父じゃねえよ!!」
「初めまして、俺はロデル・ウェルキン。この喧しいのがバスター・グレンゾな」
「ロデルゥゥ!!無視すんじゃねぇ!!」

背が高い人、ロデル君はバスターの事を完全に無視して此方に自己紹介をしてきた。その光景に苦笑しつつ、僕らは自己紹介を返す。

「あはは……。シンドウ クニハルです。シンドウは名字でクニハルが名前です」
「……ぐすっ。レティア・チェ・ネッレブッル」

レティアが半べそをかきながらぶっきらぼうに自己紹介をしているのを見て、ロデル君は「嫌われたか~」と呟きながら苦笑する。

「よろしくロデル君」
「ロデルでいいよ。コイツもバスターでいいぜ。ところで二人はファンタジア学園の新入生?」
「あっはい。そうです」
「そうかー。実は俺たちもなんだよ」
「そうなんですか?」

どうやら二人ともファンタジア学園に入学するらしくその準備のためにこの店にやって来たということらしい。そんな中バスターが一本のブロードソードに「魂の脈動を感じる!」とか言い出し、後は先程のモリーさんとの口論になるというわけだ。

「あ、そうだよ剣!ババァ!!この剣いいから安くしろよ!知り合い価格でさあ!」
「いい加減ぶっ飛ばすよガキ!とっくに知り合い価格で売ってるだろうが!」
「まーた始まった……」

再び繰り広げられるモリーさんとバスターの口論にロデルはため息をつく。何というか苦労性何だろうな彼は。
しかし、このままだと僕達の買い物が済みそうにないな。しかし、どうするか。そう考えいるとふと、隣のレティアに目が行く。……うん、そうだなこうしよう。

「あのー?」
「ん?どうした?」
「その剣の代金少しなら僕も出しましょうか?」
「「「え!?」」」
「クニハルなんでだ!?」

僕と話してたロデルに加え、口論していた二人に、レティアまでもが僕を見て驚愕の顔をしている。勿論ただの善意でこんなことはしない。ちゃんとした理由があってこそだ。

「その代わり二人にはこの辺りで一番安いお店と美味しい食事処、あとはファンタジア学園行きの船の場所も教えて欲しいかな。港へ行けば分かるって聞いてはいるけど、案内があるのと無いのとじゃ全然違うからね」
「成る程。この町を案内してくれと」

そう、その通り。でももうひとつ理由がある。
それはコネクション作りだ。どうやらこの二人も僕達同様ファンタジア学園へ入学するみたいだし、学園の全容が分からない以上、伝を作っておいて損はない。
要するに、恩を売っておいていざというときは助けて貰おうという訳だ。自分でも少し腹黒いかなと思うが、なにせこれからいく場所は僕にとって完全に未知の世界だ。少しでも備えをしておかないと、これから何が起こるか分からないのだから。

「おぉおおぉおま、お前!本当にいいのか!?」
「うん、構わないよ。それとモリーさん」
「な、なんだい?」

若干冷や汗をかいているモリーさんに、にこやかな笑みを向ける。

「できるだけいい武器を買いますからサービスしてくれません?」
「ちゃっかり者だねぇ……」

こう見えて、独り暮らし長いですから。




「レティア見て回ろう」
「うん!」

早速店の中を見て回る。僕としてはレティアの持ってるバッグが欲しいところだけど……あ、あったあった。しかも色々なタイプがある。手提げ型にリュックサック型、ポーチ型まであるのか。う~ん、本当にこの世界ではメジャーなんだなこの便利バッグ。どうやら説明を見るかぎり大きさによって容量が違うらしい。空間を拡張してるといっても限界はあるようだ。流石にそこまで万能ではないんだな。
取り敢えず、お金には限りがあるから出来る限り安くて使いやすい物を……よし、このウエストポーチにしよう。取り外しやすいし、値段もよし。
さて次は武器だな。一応レティアからナイフを借りているけど何時までもこれを使い続けるわけにもいかない。といっても使った事の無い武器を使うのは不安が残る。そりゃあ、武器のレパートリーは増やした方が良いんだろうけど、別にそれは今すぐでなくてもいいだろう。逆にこっちが怪我したら目も当てられないしね。よって必然的にナイフやダガーが候補に上がるわけだがーーん?
目に入るのは綺麗な装飾がされた刀身が黒い二本一対のダガー。
一瞬目に付いて、そして離れない。そうやってジッとダガーを見つめているとレティアが近付いて来た。

「クニハルどうしたー?」
「レティア。うん、ちょっとこのダガーが気になって」
「へー格好いいなそれ。ま、俺の伝説の雷鳴刃レジェンド・サンダーセイバーには劣るけどな!」
「さっきと剣の名前が変わってんぞ……」


レティアに続き今度はバスターとロデルもやって来る。バスターはブロードソードを得意気に掲げている。嬉しそうで何よりである。でも、まだそれ買ってないからね。まだこの店の商品だからねそれ。

「お、良い物に目をつけたね。そいつはウチの掘り出し物さ」

ダガーを見てるとモリーさんが近付いて来た。どうやらこのダガーは店の目玉商品らしい。

「このダガーにまだ名前は無いよ。ウチの旦那が鍛えた逸品だからね」
「えっ?モリーさんの旦那さんって鍛冶屋何ですか?」
「ああ、そうだよ。自分で作った物をこうして売ってるんだ。まぁ、店のはほとんど仕入れたもんだけどさ。んで、こいつはその鍛えた物のひとつさね」

そう説明を受けて、再びダガーへと目を落とす。
このダガーの第一印象はまるで『星』だ。キラキラと光る装飾に夜空のように黒い刀身。その上を流れ星のように線が走っている。

「今それを買うなら安くしとくよ?ついでに名付け親になっておやりよ」

名付け親か……。自分だけの武器だと考えると確かに男心をくすぐられてしまうな。どうやら僕もバスターと同じ穴の狢らしい。でも、値段が少し高いな。レティアの装備も見繕わないといけないし、今後の事を考えるとあまり無駄遣いは出来ない。仕方ない、今回は諦めるしかーー

「クニハル」

ーーレティア?

「シショーが言ってたぞ。剣は良いものじゃないと駄目だ。だって剣は自分の半身になる存在なんだからって」
「へー!良いこと言うじゃねえの。その師匠」
「トーゼンだぞ!レティアの超絶すごいシショーだからな!」

……自分の半身か。気を使われちゃったかな。またしても僕はレティアに助けられちゃったようだ。彼女には、足を向けて寝られそうにないや。

「ねえ、レティア」
「ん?なんだ?」
「今回は装備、見送ってくれるかな?」
「ーーうん!」

本当に彼女には感謝してもしきれないな。
ーーよし、覚悟は決めた。

「モリーさん」
「あいよ。それじゃ早速名前をつけてやりな」

ーー名前か。実はもう決まってたりする。恥ずかしいけどね。

「僕の故郷では、とある時期にだけ一緒に見える二つの星があります。その星は恋人同士、或いは夫婦と言われていて一年に一度しか会うことが出来ないんです。このダガーはまるで夜空の星みたいだ。そして二本一対、だからその星の名前からとってーー」

僕はダガーを手にとる。そしてあらかじめ考えていた名前を告げる。

「ーー『織姫ベガ』と『彦星アルタイル』。そう名付けます」




「はいよ!『織姫と彦星ベガ・アルタイル』に拡張ポーチ、それとブロードソードだよ」

自分がつけた武器の名前を誰かに呼ばれると普通に恥ずかしい。今絶対僕の顔は紅潮している。これ後々にイタい黒歴史にならないかな。

「ふおあおぉおぉおあおぁぁおおおぁあああ!!遂に、遂に手にいれたぞ運命を支配する帝王の剣デスティニー・ドミネーション・カイザーブレードをぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

ーーコレよりかはマシか。というかまた剣の名前が変わってるし。

「うぉぉぉぉぉぉぉ!!本当にいいのかこれぇぇ!?お前いい奴だなぁぁぁ!!えーと、あー……?誰だお前は!」
「クニハルだよ、シンドウ クニハル」

バスターは僕の名前が分からず、ロデルにその事をツッコまれている。
……というか名前覚えてもらってなかったのか。地味にショックだ。

「クニハル本当によかったのかー?」

レティアが僕の服の裾を引っ張りながら聞いてくる。

「うん。案内役がいるのといないとじゃ大きく違うし、それに僕はレティアの真似しただけだよ」
「ワタシの?」
「うん。レティアの」
「えへへーそっか」

レティアはにへっと顔を緩める。
そうだ、僕はこの街引いてはこの世界に来てから優しさに助けられてばかりだ。普通ならこんな身元不明の赤の他人をここまで面倒なんて見てくれない筈だ。でもレティアは僕を助けてくれた。そしてこのアルネイに来てラウルさんやルシィクさんによくしてもらっている。だから僕も少しだけでも同じように誰かに手を差し伸べることが出来たらという、まぁ所謂自己満足みたいなものだ。
といってもさっき、またレティアに助けられたんだけどね。

「いやー助かったぜ!コイツは一目見た時からビビってきたから絶対に逃したくなかったんだよ!」
「それなら予約でも入れてとっといてもらえばよかったじゃねえか」

ロデルが正論をバスターにぶつけるが、当の本人はそれをため息で返す。

「アホか!そこのチビッ子「誰がチビッ子だっ!!」の師匠も言ってたろ!「無視かっ!?」剣は己の半身何だよ!それに明日はファンタジア学園に行くんだぞ!どうせなら最高の状態でいきたいじゃねえか!」
「無視してやんなよ……可哀想だろ。まぁ、その気持ちはわからんでもないが……」
「だろぉ!?まぁそれはいいとして悪いなクニハル!ホントに助かったぜ」
「いいよ。こっちも助けてほしくて助けた訳だし。それに君のお父さんには色々とお世話になったし」
「親父の話は止めてくれ」

バスターはラウルさんの名前が出たとたん物凄く嫌な顔をした。ここまで反抗期を拗らせてるなんて少しだけラウルさんとバスターの普段の生活が気になってしまう。

「まぁいいんだよ親父のことなんざ。それよりもアルネイの町を色々見て回りたいんだろう?任せとけよな!ここは俺たちの庭も同然だ。旨い飯屋に安い宿、何でもござれだ」

そう言うバスターの様子はどことなくラウルさんに似ているところがありやっぱり親子何だと思わされた。
そしてバスターの言葉に即座にレティアが反応する。

「旨いご飯!?」
「おぅあるぞ!取って置きの場所がな」
「クニハル!早く行こう!早く!」

レティアがピョンピョン跳ねて催促する。もし彼女に尻尾があったら今頃物凄い勢いで左右に振っていることだろう。先程までバスターに対して睨みをきかせていた表情はどこへやら、その仕草に皆が微笑ましい物を見る目をする。

「それじゃあレティアもこう言ってることだし、先に昼食をとっても言いかな?」
「おうよ!んじゃ早速行きますかね」
「「おー!」」

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