僕らのダンジョンアタカッーズ!

石神もんすとろ

ようこそ!ファンタジア学園へ!~色々とドキドキなキャンプでした~

初めてのレベルアップを果たした僕は、そのままの勢いでピグラットを討伐し続けた。勿論コイツらだけでは意味がないというレティアの助言により学園への道中で、あらゆる魔物との戦闘経験を積んでいった。

「ふっ!」
「ギュビー!?」

耳が羽になっていて空を飛ぶウサギ、『ハーピィラビット』。ヒラヒラ飛んでいたけど、みみを切り落とすことで動きを封じた。

「せああっ!!」
「ゲゲゴオッ」

二本の鬼のような角を生やすカエル、『ホーンフロッグ』。カエル特有のジャンプ力と角による攻撃が厄介だったけど、こいつは乾燥しやすいらしく、定期的に水中に戻らないと駄目で、そこを逆手にとり、長期戦で動きが鈍った所を討ち取り勝利した。

「だああああ!!」
「メェェェェェ!?」

逃げることに特化した山羊、『エスケープゴート』。攻撃こそしてこないが、とにかく逃げまくるため、落とし穴等の簡易的なトラップを仕掛け、そこに誘い込む形で何とか仕留めた。

「えい」
「シャアアア」

毒はないけど、見た目が毒々しい蛇、『ぽいズンスネーク』。ぶっちゃけただの蛇なのでフツーに倒した。


ーー最初からコイツと戦ってれば良かったのでは?


「やったぞクニハル!今日は大量だぞ!」
「ウン。ソダネー」

だがレティアの嬉しそうな顔を見るとそんな疑問が野暮に思えてしまう。結局何も言わずに僕は彼女と一緒に倒した魔物から素材等を剥ぎ取ることにした。

「うぅ、やっぱり血生臭い…」
「こー言うのは慣れだからなー。クニハルは火を着けててくれ」
「あ、うん。分かったよ」

レティアはそう言って僕に小瓶を渡してくる。この小瓶には小さく燃え続ける火種が入っており、それを薪に一つ落とすだけで即座に火をつけることが出来る。

(ライターみたいな物か。こっちでは科学は発達してないのかな?)

今まで科学技術の発達した先進国で暮らしていた自分からすれば、この世界の文明はまるで中世の時代だ。されど魔法技術が発達し、現代社会とほぼ変わらない利便性がある。といってもまだこの世界について何も知らないのだからここで答えを出すのは良くないけど。

(しかし、まさかここからファンタジア学園の距離があんなに離れているとは思わなかったな)

火を着けながら僕は今より数時間前の会話を思い出す。




「ねえ、レティア」
「なんだー?」
「修行しながら学園を目指すのは分かったけど、具体的にどれくらいの距離なの?」
「うーん。流石に何キロかまでは分からないぞー?」

 余談だけど僕のスキルの一つである異世界言語アーテリア・バイリンガルは僕にとってこの世界の言葉が理解出来る言語に翻訳されるだけでなくて、僕の知っている常識に分かり安く反映しているらしい。
 要するに近い意味、あるいは同じ意味を持つ単語に翻訳される。
 例えばレティアが今言った距離の単位、地球と単位が全く同じと言われればそこまでだけど、完全に地球とは異なる文明を築きあげているのに全てが同じになるとは考えにくい。
 それにレティアからこの世界の文字を見せてもらった時、書かれている文字が日本語で読めた。地球の専門用語・・・・・・・と一緒にだ。
 地球の専門用語が全く別の文明で存在するのはおかしい。となると答えは一つ、僕に理解が出来るようにスキルによって翻訳がされているということだ。
 恐らくレティアが実際に喋ってる言葉も単位もアーテリア独自の物だろう。だけど僕には日本語でそれが反映されるということだ。これは恐らく逆も然りだと思う。僕が言った日本の言葉はレティアから見ればアーテリアの言葉を喋ってるように見えるのだろう。まるで映画の吹き替えのように。
 だいぶ話がそれたが要するに、僕はアーテリアの言葉を自分なりに理解出来るということだ。これでこの世界での言語によるすれ違いはそうそう起きないだろう。

「じゃあさ、地図はないの?」
「あるぞー、この辺り周辺の小さいやつだけど」
「充分、充分!」

欲を言えば世界地図も見てみたいけど、それは学園に行ければ、図書室か何かで見ることも出来るはずだ。よってまずはここが何処かを知っておきたい。学園との距離を知っておかないと今後の行動が取りづらくなる。

「はいこれ」
「うん、ありがとう」

地図はアーテリアの物だが、問題はない。地図の見方なら中学で習っているし、異世界言語アーテリア・バイリンガルによって地球の物と同じ見方をしても食い違うことはないと確信している。……よし、問題なく見ることが出来るな。このスキルは少々不気味にも思うが利便性は高い。これがなければ言語の違いで速攻詰んでいた可能性もあったのだから。
……といっても、地図が読めるだけでは意味がない。僕はこの世界の地形を全く知らないのだから、自分が今何処にいるかも分からない。

「レティア、僕ら今何処にいるの?」
「んー?だいたいこのあたりかー?」

そう言ってレティアは地図の端の方にある森を指差す。なるほどここか。がっつり森の中だな。といってもそこまで大きくはないから、すぐに出ようと思えば出れそうだ。で、ファンタジア学園はーー


「ーー遠くね?」


いや、それ以前になにこれ。ファンタジア学園、島の中央にあるんだけど。

「ファンタジア学園って島にあるの!?」
「そうだぞー?この島自体がダンジョンらしくて、そこに学園建てたんだってー」

まじか。ダンジョンってあの広告にもあった冒険者の目指す危険と隣り合わせの場所だろ?そんな所に堂々と学園を建てたのか。いや、そんな所だからこそということも考えられるが。いずれにせよ何処かでこの島に行くための船に乗らなきゃいけない。と言うことは近くに船着き場、あるいは港町があるということだ。この島から一番近いのはーー

「この港町アルネイって所に先ずは行くことになるのかな?」
「そうだぞ!そこから学園に出る船があってそれに乗ったらファンタジア学園に到着だ!」

成る程。目的地は決まった。後はここから具体的にどれくらいの距離かだがーー

「ざっと2日はかかるなこれ……」
「今日は野宿だな!」
「ああ、うんそうだね……んん?」

野宿?僕とレティアで?二人っきりで?

「うぇあえぇえうぉぇえ!?!?」
「おお!?どうしたクニハル何語だそれ!?」

いやいやいやいや!!ちょっと待てぇい!?思春期真っ只中の二人が夜を共にするのは不味いぞ!?いや、それだけじゃないぞ!?

「レティア、服とかお風呂とかどうすればいい!?」
「地図見ると川が近くにあるから今日はそこで洗濯と水浴びだなー」

うへぁ!?やっぱりそうなりますかぁ!?

「ぼ、僕替えの服ないよ!?」
「それなら何とか着回すしかないな」
「慈悲はないんですか……」
「ない!」

あっさり言われた!
いや、これ冗談抜きで現代っ子には色々とキッツイすよ……?ただでさえ魔物達と戦って泥や血で服がべとべとなのに……。

いや、文句を言っても仕方がない。冒険者になるならこれくらいのサバイバル鼻で笑い飛ばせるくらいにならないとこの先生きていけないぞ!

「フッ、かかってこいよ大自然!」
「クニハルー?早く川にいくぞー?」
「アッハイ」




「川についたぞー!」
「おー!」 

あの後、地図を頼りに足を進めて特に問題もなく川に着くことができた。取り敢えず今日はここでキャンプをする事になりレティアが背負っていたリュックを卸す。そこでふと僕は気付いた点をレティアに聞いた。

「そう言えばキャンプ用の荷物って何処にあるの?」
「これだぞ」

そう言ってレティアがリュックを持ち上げる。いやいや、そんな小さいリュックにテント用具が入ってるわけーー

「よいしょっ」
「ーーってテント出てきたー!?」

レティアがリュックに手を突っ込むと、明らかに大きさが違うテント用具が勢い良く引っ張り出された。

「あぁ解析能力アナライズ!」

解析能力アナライズ

反射的についレティアのリュックに解析能力アナライズを使用してしまう。道具のためすぐに解析が完了する。


空間拡張バックパック:
内部を空間魔法により拡張されているバックパック
バックパック以上の大きさの荷物を出し入れすることが可能のため冒険者の御用達の道具


それ何処の四次元ポ◯ットだよ!!でも普通に便利!!欲しい!!

「そんなに珍しいか?これ」

レティアが首を傾げながらこっちを見てる。いかんいかん。少し取り乱してしまっていた。

「そりゃ何でも入る鞄なんて普通に欲しいよ!何処にあるのこれ!」
「フツーに売ってるぞ?コレはシショーと町に行った時に買ったからな」
「マジか……」

こんな便利な物が普通に売ってるって、やっぱり文明が違う。魔法が発達しているこの世界では、科学の代わりを魔法で担っているのか。それとも科学と魔法の両方で文明が発展しているのか。それによっては地球以上の文明が築かれていてもおかしくない。

「クニハルー?テント張るの手伝えー」
「え?ああ!うん、ごめん」

……今はそんな事を考えていても仕方がないな。町に行けばそこのところもハッキリするだろうし、今はとにかくレティアの手伝いをしよう。


「これでよし!」
「結構大きいね」
「シショーと使ってたやつだからな!じゃあ次はーー」

テントを張り終えた僕らは次の作業に移る。薪に火付け、荷物の整理、そしてーー

「水浴びの時間だー!!」
(来てしまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!)

水浴び、そう水浴びである。思春期真っ只中の僕にはかなり精神的にダメージがでかい。というかレティアさん?アナタ女の子でしょ?そう言うの嫌がるもんじゃないの普通?

「一緒に浴びるぞクニハル!」
「oh……」

駄目だっ!!この子そういうの全然解ってない!!NO性知識!!ピュア&イノセンス!!普通の男子ならもろ手を挙げる所かも知れないが僕にそんな勇気はありません!!第一あれだ!自分の自分おとこのしょうちょうを見られるのも恥ずかしい!

「駄目です!!別々に水浴びをします!!」
「えーなんでだー?」
「会ったばかりの年頃の男女が裸で一緒だなんて、間違いがあったらどうするの!!」
「間違いってなんだ?何か悪いのか?」

ーーうごぅ!それ聞いちゃう!?答えるべきか否か、なんだこの選択!?

「と、とにかく駄目な物は駄目です!せめて水着とかあればいいけどーー」
「水着ならあるぞー」

えっ、あるの?

「じゃーん!水泳の特訓用の水着だ!」

そう言ってレティアは水着を取り出した。なんだ、水着があるならまだ何とかなるな。……いや、僕はどうすればいいんだよ。

「その、レティア?男用の水着とか、ない……よねー」
「ない!」

うん、知ってる。あったらびっくりする。

「……下着でいくか?いやでも着替えがなぁ」

いっそ、1日くらい入らないというのは?いやいや、人前、それも女子相手に体を洗わずにいるというのは何というか駄目だ!それに明日は港町につくまで今日のように体を洗う機会すら無いかもだし……。うぐぉ~、でも裸は不味いだろ~。

「クニハルまた考え込んでる。いいからさっさと水浴びするぞ!」
「うぇぇぇ!?ちょっ、レティアさん!?」


ーーメンドくさいのはもういいぞ!
ーーちょおおっ!!いきなり脱ごうとしないで!!水着に着替えて!
ーークニハルもさっさと脱げ!!そのままじゃあ水浴びできないだろ!
ーーちょっ、ちょっとどこ触ってんの!?服つかまないで!
ーーうるさーい!つべこべ言わずに脱げー!!
ーーいや、それ前にも言わなかったってちょっとおおぉ!?せめて、せめて下着は!パンツだけでも履かせてぇぇぇぇぇぇぇ!!!






「うひー冷たい!」
「うー、寒々!!まだ春先だから冷たすぎだよ!」

結局あの後レティアは水着、僕はシャツとパンツという結果に落ち着いた。それでもレティア方は直視はできないのだが……。まぁ、興味ない訳じゃないからチラチラ見てしまう訳ですが……。にしても、レティアは本当にいい体をしている。いや、いやらしい意味ではなくて。何と表現すべきか、スポーツをやっている人の体つきというか。スレンダーの体にくびれ、仄かに筋肉質な四肢、程よく焼けている健康的な肌。まるで陸上選手のような体つきだ。端から見ても鍛えているという事がよく分かる。小さい見た目からは想像つきにくいなこれは。……あれ?なんか結局いやらしい意味じゃないか?

「クーニーハールー!!」
「え?わっぷっ!?うわわわわ!」

冷た!?レティアめ、水をかけてきた!いきなりのことでびっくりしてそのまま尻餅をついてしまった。あ~、せっかく下着は濡らさないように気を使ってたのに……。

「それそれー!」
「うわっぷ!」

更に追撃がやってくる!くっそ~、やられっぱなしだと思うなよ!

「やったなこのー!そりゃ!」
「わー!ちべたい!よーしならこれでどーだ!!超絶くらえー!!」
「え、ちょっ威力がおかしーー」

ーーどぱぁぁぁぁん!

衝撃。冷たいとかそういうの抜きでフツーに痛い。筋力が上がると水鉄砲も文字通りの意味を持ってくるのか。


「クニハルー?生きてるかー?」
「そう思うんなら手加減して欲しかったよ……」
「結局全部びしょびしょだな」
「そう思うんならそもそも水をかけないでよ……」

これ風邪引くかもしれない。




水から上がって即座に焚き火に辺り暖まる。ただでさえ全身ずぶ濡れなのだから今のうちに目一杯暖まらなければ本当に風邪を引いてしまう。
どうやら辺りはもう日が落ちてきているようで薄暗くなっている。僕は今日を振り替える。この一日でとんでもない体験をしたものだ。異世界に転移して、狼に喰われかけて、レティアに会って、レベルアップして、こうして彼女と夜を明かそうとしている。普通の男子なら緊張したりテンションをあげたりするのだろうが、今の僕はもうかなり疲れている。目を瞑ればそのまま寝てしまいそうだ。

「クニハル?眠いか?」
「ん。うん疲れたからね……」
「ならこっちこい」
「へ、わっ」

レティアは僕の体を引っ張り僕の頭を自分の膝に乗せた。いわゆる膝枕というやつだ。……いや何で急に!?

「あのー?レティアさん?これは一体……」
「シショーがな?よくやってくれたんだ。疲れたなら、最も安心できるように休めって」
「だからって……いや、いいや。レティアはそういう人なんだね」
「どういう意味だ?」
「お人好し過ぎるってこと。普通は今日あったばかりの異性にそこまで心を開いたりしないよ?」

そう、普通なら絶対にあり得ない。なのにレティアはそれができる。もちろん彼女にそんな下心は感じられない。あり得ないくらいの善性だ。きっと彼女の師匠という人物が今の彼女の性格を形成したのだろう。そう考えるとなんか興味が出てきたな。

「ねえ、レティア。君の師匠ってどんな人?」
「寝なくていいのか?」
「子守唄代わりということで一つ」
「ん~?そうだな~。よくわからん人だ」
「わかんないの?」

第一印象がそれって本当にどういう人物なんだ?

「剣の扱いが超絶上手い」
「それは判る気がする」

レティアの剣の師匠なんだから上手いのは当たり前だろう。

「あとよく笑う人だ。こう、がはははって」
「今更だけど師匠さんて男の人?女の人?」
「女だぞ?」

女性でその笑い方って、相当な男勝りなイメージになったぞ。

「あと超絶凄い冒険者でな?色んな知識があってな?背も超絶高くてなー?」

どんどんレティアが饒舌になっていく。師匠の事を語るのがとても嬉しいのだろう。とてもいい笑顔だ。……あぁ、そろそろ瞼が重くなってきた。レティアには悪いけれど、続きは……また……こん……ど……に……。

「でな?師匠がな?ーークニハル?」
「スー……スー……」
「…………おやすみなさいだ」


……よく覚えていないけど、あのとき何だか頭が暖かい気がした。

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