学生騎士と恋物語《パンドラボックス》

福乃ミナ

第17話 いきなり決勝戦⁉︎

その後、何故か亜紀斗の対戦相手は全員棄権するというハプニングが起きる。
そのおかげで楽々と決勝戦まで行ってしまう。
何か想像していたのと違う感じで行ってしまったが、まあ良いか。楽だし。
決勝戦の対戦相手が発表され、相手はあの月野蛍。
当然の結果だろう。試合の様子を見たが流石と言った所だろう。剣術や動きに一切の無駄がない。月野流は攻撃を研き続けた流派。無駄が無いのは当たり前か。
『一年、決勝戦が始まります。出場する選手は待機室に速やかに移動して下さい』
移動のアナウンスが流れ、亜紀斗は待機室に移動する。
待機に入ると、自分の専用武器「妖刀黒漆剣」(クロ助)を展開する。
大会前に赤月に折られてしまい、メンテナンスに出していたが、なんとか大会までに間に合ったようだ。折られた所も綺麗になっている。異常は何処も無いな。
「相手はあの月野蛍。小細工は一切通用しない」
大きく深呼吸をして、刀を腰に下げ入場門に行く。
「さあ…行くか」
入場門から闘技場まで続く長い廊下を歩く。歩いている最中に蛍の試合を見る。
蛍の強みは何と言ってもスピード。一瞬で相手の間合いを詰め、一気に畳み掛ける事が多い。
「スピードでは敵わないな」
(そんな相手にどう戦うつもりじゃ?)
キュウは唐突にそんなことを聞いてきた。
「…ノープラン」
ぶっちゃけこれって言った作戦は無い。その場で考えてから動く。ただそれだけだ。
(主らしいな)
「そうか?いつもノープランでは無い気がするが」
(いつもじゃよ。けど…今回はあるのじゃろう?)
「作戦とは言えないが、決まれば強い…かな?」
とっておきでもあるが、決まらない確率が大きいから奥の手か封印くらいの技かな?
(そうか。なら行って来い!)
「おう、行って来る」
闘技場に続く廊下を抜け、闘技場に入場する。
亜紀斗が入った途端、一気に会場の熱が伝わって来る。
闘技場にはすでに蛍が先に入場しており、亜紀斗が入って来るのをずっと待っていたらしい。
『さあ〜始まりました!学年別トーナメント戦一年の部の決勝戦が始まるぞ〜!!解説はこの私、三年の坂本キラがお送りしま〜す!」
アナウンスが鳴ると同時に会場は一気に盛り上がる。
熱気がすごいな。
『赤コーナー。剣術だけで決勝まで登り詰めた女騎士。その太刀には斬れぬ者は無し!月野〜蛍!!」
ワァ〜!!!!
歓声がすごいな。
亜紀斗は改めて思う。
『対するは、決勝まで全部運で上がってきた男。今宵、この男の実力を観れるのか!?青コーナー、月影亜紀斗!!」
ワァ〜!
歓声少な!?この差は何だよ!!
(当ぜつじゃろ。だって戦って無いからな)
歓声が少ないのもそれはそのはず。対戦相手が全員棄権して行ったからな。
「オーディエンス全員を味方に付けるとはな。やはり敵わないな」
「勝手に応援されてるだけよ。こんなの味方でも何でも無い」
「けど応援はされてるだろ?俺なんかされてもいない」
周りを見るも誰も亜紀斗を応援をする者はいない。やはり応援されないのはキツイな。
「応援なんてただのプレッシャーに過ぎない。それよりも早く試合をしましょう」
蛍は審判に始めて欲しいと合図を送る。審判も頷き、すっと手を挙げる。
挙げると同時に蛍は自分の専用武器を構える。
「リーチの長い太刀…か」
「だから何?」
「いや、別に」
そう言うと亜紀斗は右肩を回し、自分の刀に手を置く。
『両者準備ができたようです』
キラは解説席から二人を覗き、審判に指示をする。

「それでは試合開始!!」






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