【リメイク版】そのゴーレム、元人間につき
7話
突然のアイアンクローに少年は驚く暇もない。
「あだだだだだだ!?」
ギリギリと万力の様に絞まっていくランドのアイアンクローに頭蓋が悲鳴を上げていた。
金の恨みとはかなり恐ろしいものである。
「ようやく会えたな。金を払って死ぬか、それとも死ぬか選べ」
「えぇぇぇ!? 護衛じゃないんですか!?」
いかにもチンピラの様な脅し文句をしながらもその手の力を一切緩めないランドに少年も少なからず対抗しつつ軽口を叩いていた。
どうやら意外と大丈夫な様子で、ランドは少し驚いた。
「わりと本気で砕くつもりだったんだけどな。さすがは勇者って奴だ」
「本気で砕こうとしないで下さいよ!」
「冗談だ」
2度しか会っていないと言うのに、気楽に話す二人。
この気安さは勇者の少年の性格から来るものなのだろうとランドは思う。
──さては、良い奴だな? と。
「ところで1つ良いか」
「あ、はい。何か?」
「此方に武器向けてる彼女らをどうにかして欲しいんだが」
「あ、」
少年は周りを見ると苦笑いをする。
ランドを取り囲んで、少年と共にいた少女達がそれぞれが武器を持ってランドへと向けていた、それもかなりの至近距離だ。
「皆、止めてくれ。この人は知り合いだから! ちょっとしたお遊びだから!」
「そうそう、本当に殺る気なら、とっくに剣構えてぶっ指してるから」
「物騒なこと言いますね!?」
そんな冗談を言い合っている二人をみて、少女達も一呼吸奥と武器を仕舞う。
「さて、自己紹介をするか。俺はランド、しがない普通の真面目な冒険者だ。よろしくな」
片手を上げてランドは挨拶をする。
その時、勇者のパーティーは「真面目な冒険者が遅刻するか!」と思っていた。
「あ、じゃあ俺から。名前は言ってませんでしたね。俺は三神天馬と言います。先日は助けて下さりありがとうございます。天馬と呼んでください」
丁寧に礼をする少年の名は天馬、黒髪黒目の顔立ちの整った所謂イケメン。
騎士の着ていそうな鎧、それよりも質の高そうな純白の鎧に身を包んでおり腰に下がる剣もまた輝いている。
「売ったら金になりそうだな……」とか不躾なことを考えていたランドだが、盗んだら重罪だ。それくらいの自重はできた。
「私は黛アゲハです。天馬君への攻撃は許しませんけど、よろしくお願いします」
不服そうに頬を膨らませながら自己紹介をしたアゲハは、肩口まで切り揃えられた黒髪で目がパッチリとした女の子だった。
その身には白いローブを着けており、手には杖と、魔法使いのような風貌だ。
「あ、得意なのは回復とかです。攻撃はルーチェちゃんの方が得意です」
そういうと視線をその隣にいる偉そうな態度をしている女性へと向ける。
「わたくしは桐ヶ崎ルーチェも申しますわ。先程の不躾な態度は断罪ものですけど、今回の訓練が終わるまでは執行猶予を与えますことよ」
どこから取り出したのか扇子のようなものを口許に当てるルーチェと言う少女は、他の者とは違い金色の髪をしており、中々珍しいお姫様カットと言うやつをしている。
ドリルが、ドリルがついているのである!
ルーチェは、アゲハとは対極に黒のローブを纏い、ロッドと呼ばれる杖よりも長く、攻撃にも使えそうな物を手にしていることから、接近戦もこなせることが予測できる。
「最後は私だね。私は斎藤玲華だ。さっきの行動は見過ごせないね、ぜひダンジョンで挽回して欲しい」
少し男勝りな口調で喋る背の高い女性は名を玲華と言った。
黒く艶のある髪を後ろに纏めた、切れ長の目をし、凛とした女性だった。
動きやすさを重視してか、質は高いが致命的な箇所はきちんと守るようにした軽鎧を来ており、武器は持っていない事から素手で戦うのだろうかとランドは思った。
「何故か評価が低いのは分からないが、まぁよろしくな。気軽に話してくれて良いぞ」
三者三様にぶち殺すぞこの野郎的な言葉を投げ掛けられたランドであるが、微塵も気にしていなかった。
「んじゃ、他の奴らも動いているみたいだし。俺らも行くとしようか」
そういうとランドは歩きだし、勇者達が乗ってきた馬車へと向かう。
周りの冒険者達も他の勇者達と軽く会話をしたのだろう、元々冒険者達は愛想が良いものや懐に入るのが上手い者達が多い。
今回選抜された者達はそういった意味でもかなり優秀だ。
「何故に俺は選ばれたんだか……」とランドは思うのだが、気にしていても仕方ないと思ったのか、思考を放棄した。
他の冒険者達も担当の馬車に乗り込み、それぞれが違う方向へと散っていく。
そこで天馬から質問が飛ぶ。
「はい、皆バラバラ何ですけど、ダンジョンに行くんじゃ無いんですか?」
他の3人も、外をみて、天馬の質問によりランドへと視線を向ける。
「あぁ、それは説明されてなかったのか。職務怠慢だな国王も」
堂々と不敬罪に問われそうな愚痴を呟き、やれやれと肩を落とす。
「そうだな。その前にダンジョンについても説明しておこう」
「お願いします」
やや前のめりになって話しに食いついてくる天馬達に、少し驚きながらも話す。
ダンジョン、それは夢見る者達にとってはロマンの象徴と言っても良いものだ。
原理は不明だが遥か昔、出現したダンジョン。そこには階層を追うごとに出現する魔物は強くなり、深いダンジョンほど手出しが出来ない。
だが、それでも挑戦するものは現れる。それは、ダンジョンには幾つもの宝物があり、一攫千金を目指す冒険者は後を立たない。
だが当然、危険は付き物だ。
魔物の他にも強力な罠、そして要り組んだ道などにより、あまたの冒険者達を遠ざけてきたのだ。
「逆に言い換えれば上は比較的安全で、舐めてかからなければ死ぬことは無いだろう。それに今回はベテランの引率つきだし、滅多なことは起きないとは思うぞ」
「なるほど、俺たちが強くなれれば下に行けると言うことですね」
「ま、そうとも言うな」
「それで? 今回はどこまで降りるつもりなんですの?」
次の質問をルーチェが投げ掛ける。
「まぁ、そうだな。勇者様方の実力次第って所だな。ぶっちゃけどれくらい強いのか知らないからな」
「そこはダンジョンで追々見てもらうことにしよう」
「で、俺たちが行くダンジョンの話な」
この国にはダンジョンが6つ存在している。
1つは結構遠い場所にあるのだが、他の5つは距離がさほど離れておらず、また、王都付近にすべてが存在しており、活気がある。
そしてランド達が向かうダンジョンの名はソルト。
鉱物資源が豊富なダンジョンで、中も鉱山のようになっており、様々な鉱山物質がとれ、鍛治に使えるものから装飾品に使えるものまで沢山ある。
全20層とわりと浅いダンジョンで、初心者などにはうってつけだ。
「他にもダンジョンはあるんだが、そこは追々回るんじゃないか?」
「ダンジョンにも特色があるんですね……勉強になりますよ」
「勇者様方がこれから強くなるならサルサも攻略はできるかもな」
「サルサ?」
サルサ大迷宮は他5つよりも離れた場所に存在するダンジョンで、未だに攻略が進んでいない。
全100層からなると言われているが真偽は不明だった。
今現在では62層までが限界とされており、ランドもソロで潜ったことはあるが、あまりの難易度に40層で諦めた。16歳の頃の話だ。
「……何れは魔王も討伐しなきゃならないし、避けては通れないね!」
「あぁ、アゲハの言う通り。サルサをクリアしないことには魔王討伐は無理だな」
「へぇ、やっぱ勇者様方は魔王討伐に行くんだな」
まるで他人事の様にあっけらかんとしてランドは言う。実際そうなのだが。
「ランドさんは魔王について知ってる事はあるんですか?」
「……いーや、大して知らんな。それこそ一般人が知っている程度位だ。力にはなれんな」
「いえ、大丈夫です」
暫く馬車が進んだところで、玲華がふと疑問に思ったことを告げる。
「他の面々には複数の冒険者がついていた様だけど、なぜ私達には貴方だけなんだ?」
「俺は元々ソロ活動が主だからな。まぁ、それにあまり多いと連携がとれないだろうしな、あくまでも主役はおたくらだよ」
その場の会話は終え、馬車に揺られながらも目的地のダンジョン、ソルトへと向かっていくのだった。
「あだだだだだだ!?」
ギリギリと万力の様に絞まっていくランドのアイアンクローに頭蓋が悲鳴を上げていた。
金の恨みとはかなり恐ろしいものである。
「ようやく会えたな。金を払って死ぬか、それとも死ぬか選べ」
「えぇぇぇ!? 護衛じゃないんですか!?」
いかにもチンピラの様な脅し文句をしながらもその手の力を一切緩めないランドに少年も少なからず対抗しつつ軽口を叩いていた。
どうやら意外と大丈夫な様子で、ランドは少し驚いた。
「わりと本気で砕くつもりだったんだけどな。さすがは勇者って奴だ」
「本気で砕こうとしないで下さいよ!」
「冗談だ」
2度しか会っていないと言うのに、気楽に話す二人。
この気安さは勇者の少年の性格から来るものなのだろうとランドは思う。
──さては、良い奴だな? と。
「ところで1つ良いか」
「あ、はい。何か?」
「此方に武器向けてる彼女らをどうにかして欲しいんだが」
「あ、」
少年は周りを見ると苦笑いをする。
ランドを取り囲んで、少年と共にいた少女達がそれぞれが武器を持ってランドへと向けていた、それもかなりの至近距離だ。
「皆、止めてくれ。この人は知り合いだから! ちょっとしたお遊びだから!」
「そうそう、本当に殺る気なら、とっくに剣構えてぶっ指してるから」
「物騒なこと言いますね!?」
そんな冗談を言い合っている二人をみて、少女達も一呼吸奥と武器を仕舞う。
「さて、自己紹介をするか。俺はランド、しがない普通の真面目な冒険者だ。よろしくな」
片手を上げてランドは挨拶をする。
その時、勇者のパーティーは「真面目な冒険者が遅刻するか!」と思っていた。
「あ、じゃあ俺から。名前は言ってませんでしたね。俺は三神天馬と言います。先日は助けて下さりありがとうございます。天馬と呼んでください」
丁寧に礼をする少年の名は天馬、黒髪黒目の顔立ちの整った所謂イケメン。
騎士の着ていそうな鎧、それよりも質の高そうな純白の鎧に身を包んでおり腰に下がる剣もまた輝いている。
「売ったら金になりそうだな……」とか不躾なことを考えていたランドだが、盗んだら重罪だ。それくらいの自重はできた。
「私は黛アゲハです。天馬君への攻撃は許しませんけど、よろしくお願いします」
不服そうに頬を膨らませながら自己紹介をしたアゲハは、肩口まで切り揃えられた黒髪で目がパッチリとした女の子だった。
その身には白いローブを着けており、手には杖と、魔法使いのような風貌だ。
「あ、得意なのは回復とかです。攻撃はルーチェちゃんの方が得意です」
そういうと視線をその隣にいる偉そうな態度をしている女性へと向ける。
「わたくしは桐ヶ崎ルーチェも申しますわ。先程の不躾な態度は断罪ものですけど、今回の訓練が終わるまでは執行猶予を与えますことよ」
どこから取り出したのか扇子のようなものを口許に当てるルーチェと言う少女は、他の者とは違い金色の髪をしており、中々珍しいお姫様カットと言うやつをしている。
ドリルが、ドリルがついているのである!
ルーチェは、アゲハとは対極に黒のローブを纏い、ロッドと呼ばれる杖よりも長く、攻撃にも使えそうな物を手にしていることから、接近戦もこなせることが予測できる。
「最後は私だね。私は斎藤玲華だ。さっきの行動は見過ごせないね、ぜひダンジョンで挽回して欲しい」
少し男勝りな口調で喋る背の高い女性は名を玲華と言った。
黒く艶のある髪を後ろに纏めた、切れ長の目をし、凛とした女性だった。
動きやすさを重視してか、質は高いが致命的な箇所はきちんと守るようにした軽鎧を来ており、武器は持っていない事から素手で戦うのだろうかとランドは思った。
「何故か評価が低いのは分からないが、まぁよろしくな。気軽に話してくれて良いぞ」
三者三様にぶち殺すぞこの野郎的な言葉を投げ掛けられたランドであるが、微塵も気にしていなかった。
「んじゃ、他の奴らも動いているみたいだし。俺らも行くとしようか」
そういうとランドは歩きだし、勇者達が乗ってきた馬車へと向かう。
周りの冒険者達も他の勇者達と軽く会話をしたのだろう、元々冒険者達は愛想が良いものや懐に入るのが上手い者達が多い。
今回選抜された者達はそういった意味でもかなり優秀だ。
「何故に俺は選ばれたんだか……」とランドは思うのだが、気にしていても仕方ないと思ったのか、思考を放棄した。
他の冒険者達も担当の馬車に乗り込み、それぞれが違う方向へと散っていく。
そこで天馬から質問が飛ぶ。
「はい、皆バラバラ何ですけど、ダンジョンに行くんじゃ無いんですか?」
他の3人も、外をみて、天馬の質問によりランドへと視線を向ける。
「あぁ、それは説明されてなかったのか。職務怠慢だな国王も」
堂々と不敬罪に問われそうな愚痴を呟き、やれやれと肩を落とす。
「そうだな。その前にダンジョンについても説明しておこう」
「お願いします」
やや前のめりになって話しに食いついてくる天馬達に、少し驚きながらも話す。
ダンジョン、それは夢見る者達にとってはロマンの象徴と言っても良いものだ。
原理は不明だが遥か昔、出現したダンジョン。そこには階層を追うごとに出現する魔物は強くなり、深いダンジョンほど手出しが出来ない。
だが、それでも挑戦するものは現れる。それは、ダンジョンには幾つもの宝物があり、一攫千金を目指す冒険者は後を立たない。
だが当然、危険は付き物だ。
魔物の他にも強力な罠、そして要り組んだ道などにより、あまたの冒険者達を遠ざけてきたのだ。
「逆に言い換えれば上は比較的安全で、舐めてかからなければ死ぬことは無いだろう。それに今回はベテランの引率つきだし、滅多なことは起きないとは思うぞ」
「なるほど、俺たちが強くなれれば下に行けると言うことですね」
「ま、そうとも言うな」
「それで? 今回はどこまで降りるつもりなんですの?」
次の質問をルーチェが投げ掛ける。
「まぁ、そうだな。勇者様方の実力次第って所だな。ぶっちゃけどれくらい強いのか知らないからな」
「そこはダンジョンで追々見てもらうことにしよう」
「で、俺たちが行くダンジョンの話な」
この国にはダンジョンが6つ存在している。
1つは結構遠い場所にあるのだが、他の5つは距離がさほど離れておらず、また、王都付近にすべてが存在しており、活気がある。
そしてランド達が向かうダンジョンの名はソルト。
鉱物資源が豊富なダンジョンで、中も鉱山のようになっており、様々な鉱山物質がとれ、鍛治に使えるものから装飾品に使えるものまで沢山ある。
全20層とわりと浅いダンジョンで、初心者などにはうってつけだ。
「他にもダンジョンはあるんだが、そこは追々回るんじゃないか?」
「ダンジョンにも特色があるんですね……勉強になりますよ」
「勇者様方がこれから強くなるならサルサも攻略はできるかもな」
「サルサ?」
サルサ大迷宮は他5つよりも離れた場所に存在するダンジョンで、未だに攻略が進んでいない。
全100層からなると言われているが真偽は不明だった。
今現在では62層までが限界とされており、ランドもソロで潜ったことはあるが、あまりの難易度に40層で諦めた。16歳の頃の話だ。
「……何れは魔王も討伐しなきゃならないし、避けては通れないね!」
「あぁ、アゲハの言う通り。サルサをクリアしないことには魔王討伐は無理だな」
「へぇ、やっぱ勇者様方は魔王討伐に行くんだな」
まるで他人事の様にあっけらかんとしてランドは言う。実際そうなのだが。
「ランドさんは魔王について知ってる事はあるんですか?」
「……いーや、大して知らんな。それこそ一般人が知っている程度位だ。力にはなれんな」
「いえ、大丈夫です」
暫く馬車が進んだところで、玲華がふと疑問に思ったことを告げる。
「他の面々には複数の冒険者がついていた様だけど、なぜ私達には貴方だけなんだ?」
「俺は元々ソロ活動が主だからな。まぁ、それにあまり多いと連携がとれないだろうしな、あくまでも主役はおたくらだよ」
その場の会話は終え、馬車に揺られながらも目的地のダンジョン、ソルトへと向かっていくのだった。
コメント
-弧+妻
脱字が2点
一呼吸奥……✕ 恐らく一呼吸置くではないですか?
ぶっ指し……✕ 恐らくぶっ刺しではないですか?
あとは、此方(こなた)ですが、ふりがなを振った方がよろしいかと、所謂(いわゆる)に関しては漢字にするべきではないかと思います。
読みにくくなるのは当然として、此方の時とは違い洒落た漢字を使うことに意味があまりないと思われるためです。
洒落た漢字は格好がいいので乱用している人が多いですが、しすぎると文学者気取りと思われるようなマイナス評価の対象となってしまう可能性も……
洒落た漢字は、使用頻度を下げここぞと言う時に使う方がいいと思います。
偉そうどうもすみませんm(_ _)m