ノーヘブン
#13 強者の宿命2
  門を出た先には1人の冒険者がが、大量の魔獣を氷属性魔法を使い食い止めているという異様な光景だった。
「ヒョードさん…… 今行きます」
ミカドはそう呟くと大地を蹴り、ヒョードの側まで最短距離で駆け抜けた。
「ヒョードさん、大丈夫ですか!?」
「あぁ、ミカド君か。助かったよ、俺のMPもこの姿ではそう長く持たないからね」
ヒョードは汗をかきながらそう言う。
「ヒョードさん、後は俺に任せてください」
「あぁ、頼んだよ。 でも一応協力はさせてもらうよ、邪魔にしかならないと思うけれど」
「邪魔なんてとんでもない。では行きましょう!」
「あぁ!」
そう意気込んだ途端、魔獣達の動きがピタリと止まった。
「なんだ……?」
ヒョードが呟く。その直後、魔獣の群れは道を作るかのように2つに割れた。
魔獣が作った道には1つの人間のようなシルエットが見えた。
ゆっくりと、だが確実に近づく人影は次第に大きくなり、ミカド達の前に姿を現した。
「はじめまして。私の名前はアルガス・テオラと申します、アルガスと呼んでいただければ幸いです。この度は魔王様のご命令によりこの地にやってまいりました」
丁重な挨拶をしたのはタキシード姿をし、銀髪をした20台前半の若々しい顔をした男性だった。
「そこの、フードを被った冒険者さん。いや、ヒョード・テオラと言っほうが正しいかな?」
「ヒョードさん、この方は知り合いか何かですか……?」
ミカドがそう訊く。
ヒョードは呼吸を整えてゆっくりと返事をしはじめた。
「こ、コイツは俺の兄に当たる悪魔だ……」
その返事を聞きはじめに反応したのはミカドではなく、アルガスだった。
「うーん…… 兄に向かってコイツ……ですか。 フッ、まぁ今回は許してあげましょう。だが、悪魔とはなんだね?私はただの悪魔ではない、最上位悪魔だ」
最上位悪魔、上位悪魔の中でも更に選りすぐりの悪魔である。最上位と上位の力の差は歴然、上位10体でようやく互角に渡り合えると言ったところだろう。
「最上位悪魔…… ヒョードさんここは一旦引きましょう」
「私を前に逃げられると思っているのですか?今貴方達が空気を取り込み吐き出す行為をできていること自体奇跡なのですよ?」
圧倒的な力を誇示するアルガス。ヒョードはそれに怯え、腰を引き膝を笑わせている。
「大丈夫です、ヒョードさん。コイツはそこまで強くない」
「なんだと!?」
アルガスが激怒する。
「アルガスさんと申しましたか?貴方は私が今まで毎日闘ってきた相手よりも弱い」
(まぁ、爺ちゃんの事だけど……)
「ふふふ……そうですか……雑魚も調子に乗らせれば思い上がる物なのですね。よく分かりました、では貴方はここで死になさいっ!」
アルガスの姿は目の前から消え、次に目視できるときには既にミカドの背後に回り込んでいた。
「それでは、サヨウナラ。弱き者よ」
アルガスの両手がミカドのこめかみ辺りに添えられる。
「や、やめろっ!」
ヒョードの叫びも虚しく、アルガスの両手に力がこもる。
ギシギシと言う生々しい音が響く──
「やはり、弱い」
苦痛の声を上げる事なく、ミカドは落ち着いた声でそう言う。
「なにっ!?」
アルガスは慌ててミカドから距離を取る。
「なぜ潰れないっ!?なんの魔法だっ!」
取り乱すアルガス、それに対してミカドはどこまでも冷静だった。
「魔法?俺は魔法もスキルも何も使っていない」
「フッ……そんなバカな話がある訳がないだろう。しかし、次は魔法で確実に貴様を粉々にする」
アルガスは右手を前に突き出し、人差し指と中指を立てミカドに向ける。
「人間がこの技を見れる機会はまぁ、無い。ましてや味わえる機会などもう二度とないだろう。何故なら貴様はこの一撃で死ぬのだからなっ!」
アルガスの指先には小さな魔法陣が浮かび上がる。その魔法陣は秒刻みでアルガスの上半身を覆う程に巨大化した。
「死ぬが良い、《惨殺の一閃/8st》」
瞬間、魔法陣いっぱいから黒い光線が放たれる。まるで黒いレーザービームのように放たれたその魔法はミカドを瞬く間に飲み込んだ。
「な、なんて事を……生身の人間に向かって第8位階魔法を打つなんて正気の沙汰じゃねぇぞっ!」
ヒョードが声を大にしてそう叫ぶ、その間も黒い光線はミカドを飲み込んだままだった。
「フン……正気の沙汰じゃないですって?私は悪魔ですよ?人を殺して何が悪い。それに今日私がここに来たのは貴方を殺すために来たのです──」
「それは聞き逃せないな」
黒い光線の中にいたはずのミカドは無傷の状態でそう言った。
ミカドのその状態を見てアルガスはあからさまに動揺する。
「な、何故生きているっ!?」
「防御系魔法を使っただけだ」
そう言う、ミカドの前には半透明のプレートが無傷の状態で置かれていた。
「ふざけるな!俺が今放ったのは第8位階、人間が決してたどり着くことが出来ない領域の魔法だぞ!」
「知らん、それよりもヒョードさんを殺すと言うのは本気で言っているのか?」
あからさまに雰囲気が変わったミカドを見て、アルガスは突然、側で見ていたヒョードでさえ背筋を凍らせた。
「ふ、フン…… たった一度魔法を防いだくらいで調子に乗るなよ。スキル、〈悪狂魔〉」
そのスキル発動と同時に、アルガスの人間の形をとどめていた姿はみるみるうちに変化をしていき、人間の身の丈の3倍はあるだろうと思うほど大きく、横幅もガッチリとしており禍々しい姿に変わり果てた。
その姿は、魔王と呼ばれてもなんら違和感の無いほどに邪悪で凶暴な姿だった。
「ミカド君、ここは一旦引こう。兄さんのこの状態はミカド君を上回るかもしれない……」
「大丈夫です、一瞬で片をつけます」
ミカドの目は鋭く冷たい、まさに静かなる闘志という言葉が似合う眼光だった。
「一瞬でかたをつけるだと?笑わせてくれる! 一瞬で灰にしてくれるわ!〈魔豪炎雷」
その瞬間、アルガスの右手に巨大な隕石が突如として出来上がる。
その隕石は真っ赤に燃え盛り更に、稲妻をまとい黒いオーラを放っていた。
「煤塵とかせぇぇえ"え"!」
アルガスはミカドに向けて隕石を投げ放った。
「《創造魔法》《神罰》」
『ピピッ 《神罰》の作成に成功しました。敵単体に極絶ダメージ。第1神階級の魔法です』
ミカドが魔法を使用した瞬間、ピキピキと天が悲鳴をあげる音が聞こえたと同時に、アルガスの頭上には純白の波動が天より降り注がれた。
「ヌァァアアアッッ!!!」
アルガスが純白の波動に包まれた瞬間、隕石は跡形もなく砂金のように消え去っていった。
「やめろぉっ!ぉおいっ!ヒョード!俺ヲッ!俺を助けろぉっ」
白い波動に包まれシルエットだけしか確認できないが、それだけ十分な程の情報が目に飛び込んできた。
白の中に1つ黒く存在する羽の生えた影は、片腕と片足、それから左翼を天に召し上げられていたのだ。
「おねが……い──だすげ──」
最後の惨めな言葉を言い切る前に彼の身体は白の波動と共に天に昇っていった。
かなり遅くなってしまい申し訳ありません!
「ヒョードさん…… 今行きます」
ミカドはそう呟くと大地を蹴り、ヒョードの側まで最短距離で駆け抜けた。
「ヒョードさん、大丈夫ですか!?」
「あぁ、ミカド君か。助かったよ、俺のMPもこの姿ではそう長く持たないからね」
ヒョードは汗をかきながらそう言う。
「ヒョードさん、後は俺に任せてください」
「あぁ、頼んだよ。 でも一応協力はさせてもらうよ、邪魔にしかならないと思うけれど」
「邪魔なんてとんでもない。では行きましょう!」
「あぁ!」
そう意気込んだ途端、魔獣達の動きがピタリと止まった。
「なんだ……?」
ヒョードが呟く。その直後、魔獣の群れは道を作るかのように2つに割れた。
魔獣が作った道には1つの人間のようなシルエットが見えた。
ゆっくりと、だが確実に近づく人影は次第に大きくなり、ミカド達の前に姿を現した。
「はじめまして。私の名前はアルガス・テオラと申します、アルガスと呼んでいただければ幸いです。この度は魔王様のご命令によりこの地にやってまいりました」
丁重な挨拶をしたのはタキシード姿をし、銀髪をした20台前半の若々しい顔をした男性だった。
「そこの、フードを被った冒険者さん。いや、ヒョード・テオラと言っほうが正しいかな?」
「ヒョードさん、この方は知り合いか何かですか……?」
ミカドがそう訊く。
ヒョードは呼吸を整えてゆっくりと返事をしはじめた。
「こ、コイツは俺の兄に当たる悪魔だ……」
その返事を聞きはじめに反応したのはミカドではなく、アルガスだった。
「うーん…… 兄に向かってコイツ……ですか。 フッ、まぁ今回は許してあげましょう。だが、悪魔とはなんだね?私はただの悪魔ではない、最上位悪魔だ」
最上位悪魔、上位悪魔の中でも更に選りすぐりの悪魔である。最上位と上位の力の差は歴然、上位10体でようやく互角に渡り合えると言ったところだろう。
「最上位悪魔…… ヒョードさんここは一旦引きましょう」
「私を前に逃げられると思っているのですか?今貴方達が空気を取り込み吐き出す行為をできていること自体奇跡なのですよ?」
圧倒的な力を誇示するアルガス。ヒョードはそれに怯え、腰を引き膝を笑わせている。
「大丈夫です、ヒョードさん。コイツはそこまで強くない」
「なんだと!?」
アルガスが激怒する。
「アルガスさんと申しましたか?貴方は私が今まで毎日闘ってきた相手よりも弱い」
(まぁ、爺ちゃんの事だけど……)
「ふふふ……そうですか……雑魚も調子に乗らせれば思い上がる物なのですね。よく分かりました、では貴方はここで死になさいっ!」
アルガスの姿は目の前から消え、次に目視できるときには既にミカドの背後に回り込んでいた。
「それでは、サヨウナラ。弱き者よ」
アルガスの両手がミカドのこめかみ辺りに添えられる。
「や、やめろっ!」
ヒョードの叫びも虚しく、アルガスの両手に力がこもる。
ギシギシと言う生々しい音が響く──
「やはり、弱い」
苦痛の声を上げる事なく、ミカドは落ち着いた声でそう言う。
「なにっ!?」
アルガスは慌ててミカドから距離を取る。
「なぜ潰れないっ!?なんの魔法だっ!」
取り乱すアルガス、それに対してミカドはどこまでも冷静だった。
「魔法?俺は魔法もスキルも何も使っていない」
「フッ……そんなバカな話がある訳がないだろう。しかし、次は魔法で確実に貴様を粉々にする」
アルガスは右手を前に突き出し、人差し指と中指を立てミカドに向ける。
「人間がこの技を見れる機会はまぁ、無い。ましてや味わえる機会などもう二度とないだろう。何故なら貴様はこの一撃で死ぬのだからなっ!」
アルガスの指先には小さな魔法陣が浮かび上がる。その魔法陣は秒刻みでアルガスの上半身を覆う程に巨大化した。
「死ぬが良い、《惨殺の一閃/8st》」
瞬間、魔法陣いっぱいから黒い光線が放たれる。まるで黒いレーザービームのように放たれたその魔法はミカドを瞬く間に飲み込んだ。
「な、なんて事を……生身の人間に向かって第8位階魔法を打つなんて正気の沙汰じゃねぇぞっ!」
ヒョードが声を大にしてそう叫ぶ、その間も黒い光線はミカドを飲み込んだままだった。
「フン……正気の沙汰じゃないですって?私は悪魔ですよ?人を殺して何が悪い。それに今日私がここに来たのは貴方を殺すために来たのです──」
「それは聞き逃せないな」
黒い光線の中にいたはずのミカドは無傷の状態でそう言った。
ミカドのその状態を見てアルガスはあからさまに動揺する。
「な、何故生きているっ!?」
「防御系魔法を使っただけだ」
そう言う、ミカドの前には半透明のプレートが無傷の状態で置かれていた。
「ふざけるな!俺が今放ったのは第8位階、人間が決してたどり着くことが出来ない領域の魔法だぞ!」
「知らん、それよりもヒョードさんを殺すと言うのは本気で言っているのか?」
あからさまに雰囲気が変わったミカドを見て、アルガスは突然、側で見ていたヒョードでさえ背筋を凍らせた。
「ふ、フン…… たった一度魔法を防いだくらいで調子に乗るなよ。スキル、〈悪狂魔〉」
そのスキル発動と同時に、アルガスの人間の形をとどめていた姿はみるみるうちに変化をしていき、人間の身の丈の3倍はあるだろうと思うほど大きく、横幅もガッチリとしており禍々しい姿に変わり果てた。
その姿は、魔王と呼ばれてもなんら違和感の無いほどに邪悪で凶暴な姿だった。
「ミカド君、ここは一旦引こう。兄さんのこの状態はミカド君を上回るかもしれない……」
「大丈夫です、一瞬で片をつけます」
ミカドの目は鋭く冷たい、まさに静かなる闘志という言葉が似合う眼光だった。
「一瞬でかたをつけるだと?笑わせてくれる! 一瞬で灰にしてくれるわ!〈魔豪炎雷」
その瞬間、アルガスの右手に巨大な隕石が突如として出来上がる。
その隕石は真っ赤に燃え盛り更に、稲妻をまとい黒いオーラを放っていた。
「煤塵とかせぇぇえ"え"!」
アルガスはミカドに向けて隕石を投げ放った。
「《創造魔法》《神罰》」
『ピピッ 《神罰》の作成に成功しました。敵単体に極絶ダメージ。第1神階級の魔法です』
ミカドが魔法を使用した瞬間、ピキピキと天が悲鳴をあげる音が聞こえたと同時に、アルガスの頭上には純白の波動が天より降り注がれた。
「ヌァァアアアッッ!!!」
アルガスが純白の波動に包まれた瞬間、隕石は跡形もなく砂金のように消え去っていった。
「やめろぉっ!ぉおいっ!ヒョード!俺ヲッ!俺を助けろぉっ」
白い波動に包まれシルエットだけしか確認できないが、それだけ十分な程の情報が目に飛び込んできた。
白の中に1つ黒く存在する羽の生えた影は、片腕と片足、それから左翼を天に召し上げられていたのだ。
「おねが……い──だすげ──」
最後の惨めな言葉を言い切る前に彼の身体は白の波動と共に天に昇っていった。
かなり遅くなってしまい申し訳ありません!
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