勇者の定義って何ですか?

結城カイン*

第1話 少女

「私の世界を...救っていただけませんか?」
「........................はい?」
なぜ俺がこんなことに巻き込まれたかというとそれは今から1時間前に遡る...

俺は池田翔太いけだしょうた。日本に住む何の変哲もない普通の高校生だ。
今日で学校が終わり、明日から冬休みである。
俺はいつもの俺、美咲みさき拓海たくみの3人組で学校から家に帰っていた。
「...ふぁ〜やっと休みだ」俺が欠伸をしながら呟く。
「翔太、あんた勉強大丈夫なの?最近成績下がってるらしいじゃない」
と、美咲が呆れた顔で言ってきた。すると、拓海はいつも通りこう言うのだ。
「大丈夫だよ、翔太のことだからなんとかなるさ そうだろう、翔太?」

そう、それはいつもと変わらない日だった。そしてこれからも変わらない日々を過ごしていく.............はずだった。
あの少女に出会うまでは____。

「翔太、また今度な」「じゃあね、翔太」と帰り道が違う二人が俺に言う。
おう、と俺は一度立ち止まり一言返すとまた歩き出す。
....とここまではいつも通りだ。しかし、目の前にいつもは無いものがあった。

道路の奥に何かが落ちている。

「ん?あれはなんだ?服か?何でこんなところにあるんだ....あれっ?服じゃない.....ま、まさか...!」
そこにあったもの、それは...ピンク色の髪をした少女だった。

「大変だっ...!」俺はすかさず右手でスマホを取り出し、119へ電話掛けようとする。そして左手で彼女のおでこを触った。その瞬間だった。
"......たの...に...れて......て"
頭の中に声が響いてくるのだ。その声は徐々に大きくなり、はっきりと響いた。

"あなたの家に連れていって"、と。
何故か僕は聞こえた声の通りに彼女を自分の家に連れていった。もちろんお姫様抱っこで。
「これだとまるで俺誘拐犯じゃん」
俺は愚痴を言いつつ、自分の部屋の床に少女を下ろす。見た目は中学生といったところだろうか。髪は綺麗な桃色で肌は真っ白であった。
少女が目を覚ますまで待っていようとスマホを取り出そうと手をズボンのポケットへ入れる。
...とその時、少女がゆっくりと目を開いた。
「大丈夫なのか!?」
「はい、救っていただきありがとうございました。魔力切れで倒れてしまったんです」
「魔力...?」
これは現実なのだろうか?もし現実ならばこの少女は何を言っているのだろう?
そんな疑問が頭を駆け巡る。
「ところであなたは私の念話テレパシーが聞こえたのですか?」
なんか訳わからなくなってきた。"テレパシー"って超能力かなんかだったけ?
「あ、ああ。テレパシーっていうのかは分かんないけど、君の声と同じ声が聞こえた。『あなたの家に連れていってほしい』って」俺が言うと
「やはり...」少女が小さな声で呟き、続けて驚きの言葉を口にする。
「池田翔太さんでございますよね?」
「えっ、....まぁそうですけど...」なぜ見たことも聞いたこともないやつが俺の名前を知っている!?
「私はハンナと申します。翔太さんに1つ頼みたいことがあります。急ではありますが、大変な事態ですので単刀直入に申します。」
「.....」
俺は息を呑んだ。このとき悟ってしまったのだ。ラノベでよくあるこの展開。まさか...そんなわけない、そう思った。でも実際はそのまさかだった。
「私の世界、ベクトハルスをあなたの力で救っていただけませんか?」
「.......................................はい?」



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