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空薬莢は朱い花と共に

黒桜秀逸

#2社会からの殺害

彼が景色を見られるようになった時、目の前に驚きの光景が飛び込んできた。目の前にいるのはこの国の国家主席であった。周りには彼と同じように、手錠をかけられ、拘束された者が数十名いた。
国家主席が口を開く。
「手錠を外せ」
主席がそう言うと、拘束されていた者の手錠が外された。手錠を外された者の中には、手首から血が出ているものもいた。解放された者の手首には、手錠の代わりなのだろうか、黒い物体が付いていた。
国家主席のマイクのスイッチが入れられる。小さく鳴るノイズが、とても耳障りである。
国家主席が話し出す。
「諸君!!」
よほど大きな声だったのか、マイクがハウリングをする。
国家主席は、笑顔で話し続ける。
「死刑判決おめでとう!!これで君たちは社会に殺された訳だ、あぁ、なんとめでたい!」
彼を今取り巻いているのは狂気だけであった。
その言葉を聞き、元囚人達は激昂した。
「何がめでたいんだ!」「ふざけるな!!」
そのような声が絶え間なく聞こえ続ける。
国家主席の顔に苛立ちが見え始めた。
リゼは国家主席が何かするのを感じ取った。
「…あぁ、小汚い家畜どもが」
彼の顔が鬼に変わった。
「うるさい、殺れ」
その言葉が発された瞬間、鉛の塊が赤く染まり、雨が降った。
辺りは騒然としていた。
全てを悟っていたリゼは非常に冷静だった。
主席は続ける。
「いいかゴミども、お前らは元々死ぬべき存在なんだよ。それを俺が拾ってやったっんだよ。俺は感謝されるべき存在…そう、神なのさ!」
自信満々に発する言葉に、全員が引いていた。それと同時に恐怖していた。彼はつまり脅しているのだ。暗殺をしなければ、自分を守らなければ殺すぞ、と。
世では彼はカリスマ性のある主席だと騒ぎ立てるが、こいつはただの自惚れ屋だろうと全員が思っていた。
「ん?何か不服そうな顔をしているな。身分をわきまえろよゴミども。お前らは人殺しの鬼畜野郎どもだぞ?忘れるなよ?」
そこまで聞いて、元囚人の一人が言った。
「それはてめえも一緒だろ?鬼畜野郎がよ」
主席の顔が再び鬼になる。
しかし元囚人は続ける。
「俺はよぉ…ただ家族が差別されるのが嫌で、劣等種族差別反対デモを開催しただけじゃねえか。なのにテロ行為だのなんだのいちゃもんつけて死刑にしやがって…。
俺は家族のもとへ帰るからな!!」
そう言った瞬間、彼は出口に逃げた。警備兵が捕まえようとするが、止められない。仕方なく銃を抜く警備兵達。しかしその時主席が言う。
「撃たなくてよい。むしろゴミ共にどうなるか見せるチャンスだ。」
警備兵が銃をしまう。
必死に逃げる元囚人は、それを不思議そうに思ったが、逃げ続けていた。
他の囚人もここぞとばかりに逃げる。が、次の瞬間、驚きの光景が広がった。
出口に出た囚人が爆発したのだ。
辺りに肉片が散らばり、何人かの囚人の囚人服につく。
「クックック…あっはっはっ!!」
主席は不適な笑みを浮かべ、笑う。
「いやぁ、すまないすまない…伝えていなかったな。無許可で外に出るとその手に付いているブレスレットが爆発するようになっているんだよ。くっくっ…愉快だ愉快だ。」
おそらく、狂気という言葉は彼のために作られたのだろう。全員が狂気と恐怖を感じていた。
「さて、独房に入ってもらおうかな。警備兵、案内したまえ。」
そう言うと警備兵が銃を向け、指示をする。
移動の途中、リゼはこれまでの殺人の代償の大きさを実感し、新たに覚悟をした。

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