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空薬莢は朱い花と共に

黒桜秀逸

プロローグ


彼の目の前には血溜まりがあった。
頭が砕けた死体や血だらけの死体に紛れ、必死に逃げようとしているものがいる。
その者の喉を彼は容赦なく掻っ切った。
鮮血の雨に濡れた彼の風貌は、悪魔そのものだった。
彼が帰ろうとすると血の海に不気味な顔が浮かび、彼に言った。



「お前のせいだ。お前のせいだ。全てお前のせいだ」
顔は彼を責め続ける。


「お前のせいだ。お前のせいだ。お前のせいだ。」



「やめろ…やめてくれ!!!」
悪魔の絶叫が町に響いた。




「お前のせいだ。お前のせいだ。お前のせいだ。」



「やめろぉぉぉぉぉ!!!」








「はっ!?」
彼の目の前には、白い天井が広がっていた。
「あんたぁ、大丈夫かい?」
白髪混じりの男が問う。
「随分とうなされてたみたいだがぁ、これ飲むか?」
男は水を差し出した。
その手は枯れ木のように痩せこけ、小刻みに震えていた。
「いや、遠慮しておくよ。」
懐疑的な目をした彼はすんなり断った。
「おぉ?そうかい?」
男は少し寂しそうに手を引いた。
「しっかしよぉ、この拘置所はきったねえなぁ」
彼等の部屋にはトイレとテーブルしかなく、床は黄ばんでいた。とても綺麗とは言えない。
「麻薬なんかやらなきゃよかったよ…」
男は痩せこけた手をさすりながら言う。
「そういや兄ちゃん、なんでここに入ったんよ?」
問われた彼は男の目を見て笑って言った。
「連続殺人だよ」
「はぁ!?!?」
初老の男が腰を抜かす。
「まさ、まさか連続殺人って、あ、あの切り裂きのリゼかい!?」
彼は笑ったまま答えた。
「あぁ、そうさ。俺が切り裂きのリゼだ。」
そう言うと彼は外に貼ってある指名手配写真のように長い髪を束ね、男に笑いかけた。
「た、助けてくれぇ…」
男が腰を抜かしながら柵に向かう。
その柵に看守が現れる。
「リゼ・アーノルド、判決の時間だ。立て。」
「へいへい、わっかりやした」
彼は気だるそうに立ち、手錠に手をかけた。
「おっさん、次会ったら酒でものもうやないの」
彼はそう言って檻を出た。
初老の男の下の床には水溜りができていた。
「め、目が…俺を殺そうとしている目だった…」
檻には吹くはずのない生暖かい風が吹いた。

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