ひねくれマイロード

クガ

 「SKILL、確認するから、ちょっと待ってくれるか?」
 「うん。」
 参加料を払う前に、自身のSKILLを確認する。

 コウメイ:人間
 SKILL:言語習得ランゲージ
 特典、必ず貰える。全ての言語習得。
 武芸者
 ありとあらゆる武術を修められる。
 並列思考パラレル
 同時に違う観点へと考えられる。しかし、自身の元々の能力を上回る事は出来ない。
 掌握
 様々な物事を掌握出来る。物事の種類に制限はない。
 探索術
 自身の探し求める物事が何処にあるのかを知覚出来る。

 (なかなか癖のある、しかしながら使い勝手のいいSKILLばかりだ。決め手に欠けるのが残念ではあるが、これからも増やせるし、まあいいか。)
 『SKILL表の確認により、SKILLを全て掌握』
 突如として脳内に流れ込むアナウンス。この声を聞き、新たに、SKILLには条件を満たさないと発動しないものがあることに気づく。
 「よし、3000円だ。」
 なお、お金はマオから借りている。
 お金を受け取り、受付の男が了承の意で頷く。
 「あいよ、リングに入んな。」

 『さぁ、続いての挑戦者は、コウメイだあ〜!!』
 対する相手は、体格が二回り以上大きく、鍛え上げられた筋肉が激しく自己主張している男、いや漢である。

 「さぁ、かかってきなボウズ。」
 「お言葉に甘えてまずは準備運動かな…」
 脳内でスイッチが入る。視界がより鮮明になる。トクンと脈打つ心の臓器が、血を通わせ熱を身体に送るのを感じる。
 切り替えをすばやく済ませ、挨拶代わりの右ストレート。
 みぞおちを狙って放たれた拳を、驚きながらも膝で蹴り返そうと男は動く。
 その筋肉と視線の僅かな動きの隙間、そこを縫って拳を引き下げ、膝を躱して足を踏み出す。
 1歩遅れて相手の膝が胸先まで届いた後、踏み込んだその足を軸に、相手の軸脚をローキック。
 これをもろに受け、倒れ込む男は、その拳に体重を乗せて殴り込む。
 が、その拳を巻き付いて締め付ける様に、腕をヘビの様に動かし、関節を破壊する。
 受け身が取れないまま男が意識を失って倒れ込む。
 
 「あ、ああ、」
 「さて、判定を頼むよ。」
 「!」
 一瞬の間をおいて、審判は目を見開きながら。
 「勝者、コウメイ!」
 
 (なんだか、拍子抜けな強さだったな…)
 空が盛り上がる歓声の様に色づいていく。マオと、屋敷へ向かう最中、今まで気づかなかったある事に気が付く。
 「なあマオ、入学するのに試験はいらないのか?」
 「入学金を払えば、後は誰でも入れるし、いつでも辞められるんだ。ただ、辞めたら二度入学する事は出来なくて、お金だけでいいのは、冒険者システムが大陸会によって運営されているから、それで稼げばいいって話。貴族ならあらかじめ教育は受けているし、一般人だとしても、冒険者で入学金程度は稼げないと、ということ。」
 「うん?貴族なら、ということは…」
 「ああ、お金は先に払っといたよ。でも、さっきコウメイが、あんなにいい物件手に入れたから、返さなくていいよ!むしろボクが得してるから!」
 「そうか、ありがとな。」
 「いやいやぁ、いいんだよ〜?もっと褒めてくれてもさぁ?」
 最後のセリフをさらりと受け流し、そのまま進んでいく。
 「あ、スルーしないでくれ、って、待ってよー!」
 見慣れない黒髪の少年を、ブロンドショートカットの女の子が走って追いかけるその背中を、不思議そうに見る町の人々だった。




コウメイ
 体重 65キロ
 身長 171センチ
 備考 冷静沈着・女好き

マオ
 体重 秘密
 身長 158センチ
 備考 ボーイッシュ・素直・抜け目ない
 

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