いろいろな話々

ミヅキ

To you who dide.

 あなたは私にこう聞きました。
「僕のこと、好きになれそう?」
 少し不安そうな顔で、あなたは聞きました。
 私は微笑みながら、あなたにこう言いました。
「どうだろ、わかんないや」
 ちょっと悪戯っぽく微笑みながら言いました。
「そっかぁー」
 私の言葉を聞いて、彼は少しだけ安心したように笑ってそう言いました。
 察してくれたのかわからないけれど、笑ってくれました。
 きっと、この頃から好きになり始めていたのかもしれません。もしかしたら、最初から少し好きだったのかもしれません。
 ですが、ある時あなたは死にました。
 呆気なく、なんの前触れもなく死にました。
 交通事故で死にました。
 知らせを聞いて、私の頬に何か温かいものが伝って、やがて冷えて落ちていきました。
 それはまるで、心の中が少しずつ溢れているように。
 たった一人、部屋に篭って、声を押し殺しました。
 彼の葬式には行きませんでした。行けませんでした。
 好きになり始めてたのに。もう好きだったかもしれないのに。
 区別も整理もつかない幼い私の心が、簡単に溢れてしまいそうで。
 それから私は、彼のことを忘れようとしました。
 勉強したり、運動したり、ゲームしたり。
 少しでも
自分の心を騙そうとしてきました。
 そんなどうしようもない日々を繰り返して、数年が経って。
 私はあなたのお墓の前に立ちました。
 涙が溢れました。あなたの名前が霞んで見えませんでした。見たくありませんでした。未だに信じられない私がいました。
 それでも私は目をこすって、涙を拭いて、あなたのお墓を見つめました。
 そして一言だけ言いました。
「あなたのっ、ことが好きでした」
 精一杯の声で、それでもか細い声だったけれど、私はあなたに言いました。
 死んでしまったあなたへ。
 今まで忘れようとしてて、ごめんなさい。
 独りよがりの、あなたには伝わらない、伝えられなかった言葉だったけど。
 本当に好きでした。大好きでした。
 さよなら、ありがとう。
 あなたのことは忘れません。あなたの分まで生きて行きます。
 死んでからじゃ、遅いけれど、これが私からあなたに伝える最初で最期の感情好きでした。

コメント

コメントを書く

「その他」の人気作品

書籍化作品