少女と異世界。
15.この道で合ってる?
さて、遺跡に向かうにはまた森の中を歩かなきゃいけないみたいだ。
フィーユと来た森とは違うところだけれど、同じ景色が続くのだけは同じだ。
「なぁ、マリス、遺跡の場所は知ってるんだよな?」
「へ?あの遺跡の場所なんて誰でも知ってるもんだろ?」
「へぇ、やっぱり探索され尽くしてるって言われてるぐらいだし、結構有名なとこなのな」
「そうそう、誰でも知ってるんだよ!チナツって世間知らずなのか?…………まぁ、おれもそんなこと言えたもんじゃないけど」
最後の方に呟いた言葉は千夏には聞こえなかった。
「でもさ、この方向で本当に合ってる?」
そう、さっきからなんだか道無き道を進んでいるというか、よくよく見れば道というか、誰かが通った跡が分かるものがあるだけなのだ。
「あぁ、合ってる。おれはここをよく通ってるから迷うことなんかねぇよ」
前を行くマリスの表情は見えないけれど、即答で断言しているし合っていると考えてもいいだろう。
一応自分でも周囲を警戒しながら進んでいく。
ピチョン、と額に水の感触が来た。
「雨だ…」
一粒から始まった雨はすぐに土砂降りのような雨になった。
マリスと僕は近くにあった巨木の下に避難していた。
「ったく、付いてないよなぁ…」
「すごい雨だな…この中じゃろくに歩けないだろうな」
轟々と雨の叩きつける音だけが続く。
不意に空が光った。
そう思った次にはゴロゴロと雷の音が鳴り響いて来た。
「ひっ…」
「ん…?ひ?」
横から小さな悲鳴が聞こえた気がして見てみると、マリスが耳を塞いでうずくまってしまっていた。
「マリス?もしかして…」
「はぁっ!?ばっか言うんじゃねぇ!おれが雷怖いとか思っているわっ!?ひぃゃっ!?」
話している途中でまたもや雷鳴。
「…怖いんじゃん」
耳まで真っ赤になって震えてしまっている。
「こ、怖くなんかねぇ…。に、苦手なだけだ…」
そうえば、僕も小さい時に雷が怖くて泣いていたっけ。
その時は母にすがっていたような気がするけれど、どうしてもらっていたんだっけ。
なおも雷に怯えて耳を抑えるマリス。
外には豪雨と雷。
さっき雨に降られたせいで、服が冷たくなって来た。
「なぁ、マリス。寒くないか?」
「あぁ?今はそんなことかまってる余裕なんかねぇんだよ!」
涙目になって顔を真っ赤にして叫びかえしてくる。
「はぁ…はぁ…。まぁ、確かにちと寒いけどよ」
なんだかさっきからずっと顔も赤いし、息遣いも荒いような……まさか…。
「マリス、ちょっといいか」
「へ?」
マリスの頭を両手で固定すると、自分のおでことマリスのおでこをくっつける。
「うーん…やっぱり熱がでてるな…」
額からはマリスの熱がグングンと伝わってくる。
「な、な、ななな、なにしやがるっ!?」
「うごっ!?」
突然の腹に激痛が走る。
「い、いや…何って、熱があるかどうか確かめただけじゃん…。そんな殴らなくても…」
「おでこ合わせて熱測るとか意味わかんねーよ!?」
あれ、そうなのか?
「いや、でも僕はこの方法しか知らないし、体温計とかないし」
「と、とにかくっ!いきなり顔とか近づけんじゃねーよ!ばかやろう!ひゃっ!?」
雷鳴。
またも耳を塞ぎうずくまるマリス。
あ、そうだ。僕も昔、外でいきなり雷の音が聞こえて、それで、母に…。
「ふぇ?」
「大丈夫、大丈夫…怖くない、怖くない」
そう言いながら、僕は頭を撫でてもらえて、とても安心したのを思い出した。
だから、遠い記憶の中の母の見様見真似で、マリスにもやってみたのだけれど。
うずくめていた顔を上げて僕の顔をジーっと見てくるマリス。
「えーっと…いや、これはその、えっと、僕もなんと言うか、昔は雷苦手だったんだけど、その時にやって貰って、その、えっと…」
無言でただ見つめてくるマリスにどぎまぎしてしまう。
突然、ハッとマリスが目を見開いた。
「ーーーッ!!」
マリスの顔が見る見るうちに赤くなっていく。
「こ、子供扱いすんじゃねぇっ!」
「ふごばっ!?」
さっきと全く同じ場所に、さっき以上の衝撃が来る。
あれ、おかしいな……何を間違ったのだろうか。
ズキズキする腹を抑えながらマリスを見やるけど、殴ったっきりそっぽを向いて、もうこちらの相手をしてくれそうにない。
やや気まずい雰囲気の中、雨が上がるまで一言も発する事なく時間が過ぎた。
それから遺跡への道を再開する。先ほどまでの雷雨が嘘だったかのような青空で……。
「お、虹発見」
そんな僕の呟きにマリスも空を見上げる。
「……綺麗、だな」
虹なんていつぶりだろうか、少なくともこの世界に来て初めてだ。と言ってもまだ2日目なんだけれど。
ふいにマリスが歩く足を止め、姿勢を低くした。
「ん、どした?」
「何か、来る……」
その真剣な表情から察するに結構やばいのかも。
すると、遠くから何か音が近づいて来る。
ズシン、ズシンという足音と共にバキバキと木の枝折れる音が、こちらに真っ直ぐと。
  「この音……そしてこの嫌な気配……邪神の使いか?」
邪神の使い……。フィーユからその存在の話をされただけでまだ実際には見たことがない。
フィーユ曰く、邪神の使いには様々な種類が存在する。そしてそれらの存在は"神"や、他の種族、生物を無差別に襲う。
「来るぞっ!」
そう言ってマリスは横に飛び退く。
その瞬間、大地を揺るがす衝撃が来る。
「うぉわっ!?」
衝撃と共に地面の破片も飛び、そのかけら一つに当たっても大怪我を負ってしまいかねない程の破壊力があるように見える。
そして、相対する。邪神の使いという存在に。
フィーユと来た森とは違うところだけれど、同じ景色が続くのだけは同じだ。
「なぁ、マリス、遺跡の場所は知ってるんだよな?」
「へ?あの遺跡の場所なんて誰でも知ってるもんだろ?」
「へぇ、やっぱり探索され尽くしてるって言われてるぐらいだし、結構有名なとこなのな」
「そうそう、誰でも知ってるんだよ!チナツって世間知らずなのか?…………まぁ、おれもそんなこと言えたもんじゃないけど」
最後の方に呟いた言葉は千夏には聞こえなかった。
「でもさ、この方向で本当に合ってる?」
そう、さっきからなんだか道無き道を進んでいるというか、よくよく見れば道というか、誰かが通った跡が分かるものがあるだけなのだ。
「あぁ、合ってる。おれはここをよく通ってるから迷うことなんかねぇよ」
前を行くマリスの表情は見えないけれど、即答で断言しているし合っていると考えてもいいだろう。
一応自分でも周囲を警戒しながら進んでいく。
ピチョン、と額に水の感触が来た。
「雨だ…」
一粒から始まった雨はすぐに土砂降りのような雨になった。
マリスと僕は近くにあった巨木の下に避難していた。
「ったく、付いてないよなぁ…」
「すごい雨だな…この中じゃろくに歩けないだろうな」
轟々と雨の叩きつける音だけが続く。
不意に空が光った。
そう思った次にはゴロゴロと雷の音が鳴り響いて来た。
「ひっ…」
「ん…?ひ?」
横から小さな悲鳴が聞こえた気がして見てみると、マリスが耳を塞いでうずくまってしまっていた。
「マリス?もしかして…」
「はぁっ!?ばっか言うんじゃねぇ!おれが雷怖いとか思っているわっ!?ひぃゃっ!?」
話している途中でまたもや雷鳴。
「…怖いんじゃん」
耳まで真っ赤になって震えてしまっている。
「こ、怖くなんかねぇ…。に、苦手なだけだ…」
そうえば、僕も小さい時に雷が怖くて泣いていたっけ。
その時は母にすがっていたような気がするけれど、どうしてもらっていたんだっけ。
なおも雷に怯えて耳を抑えるマリス。
外には豪雨と雷。
さっき雨に降られたせいで、服が冷たくなって来た。
「なぁ、マリス。寒くないか?」
「あぁ?今はそんなことかまってる余裕なんかねぇんだよ!」
涙目になって顔を真っ赤にして叫びかえしてくる。
「はぁ…はぁ…。まぁ、確かにちと寒いけどよ」
なんだかさっきからずっと顔も赤いし、息遣いも荒いような……まさか…。
「マリス、ちょっといいか」
「へ?」
マリスの頭を両手で固定すると、自分のおでことマリスのおでこをくっつける。
「うーん…やっぱり熱がでてるな…」
額からはマリスの熱がグングンと伝わってくる。
「な、な、ななな、なにしやがるっ!?」
「うごっ!?」
突然の腹に激痛が走る。
「い、いや…何って、熱があるかどうか確かめただけじゃん…。そんな殴らなくても…」
「おでこ合わせて熱測るとか意味わかんねーよ!?」
あれ、そうなのか?
「いや、でも僕はこの方法しか知らないし、体温計とかないし」
「と、とにかくっ!いきなり顔とか近づけんじゃねーよ!ばかやろう!ひゃっ!?」
雷鳴。
またも耳を塞ぎうずくまるマリス。
あ、そうだ。僕も昔、外でいきなり雷の音が聞こえて、それで、母に…。
「ふぇ?」
「大丈夫、大丈夫…怖くない、怖くない」
そう言いながら、僕は頭を撫でてもらえて、とても安心したのを思い出した。
だから、遠い記憶の中の母の見様見真似で、マリスにもやってみたのだけれど。
うずくめていた顔を上げて僕の顔をジーっと見てくるマリス。
「えーっと…いや、これはその、えっと、僕もなんと言うか、昔は雷苦手だったんだけど、その時にやって貰って、その、えっと…」
無言でただ見つめてくるマリスにどぎまぎしてしまう。
突然、ハッとマリスが目を見開いた。
「ーーーッ!!」
マリスの顔が見る見るうちに赤くなっていく。
「こ、子供扱いすんじゃねぇっ!」
「ふごばっ!?」
さっきと全く同じ場所に、さっき以上の衝撃が来る。
あれ、おかしいな……何を間違ったのだろうか。
ズキズキする腹を抑えながらマリスを見やるけど、殴ったっきりそっぽを向いて、もうこちらの相手をしてくれそうにない。
やや気まずい雰囲気の中、雨が上がるまで一言も発する事なく時間が過ぎた。
それから遺跡への道を再開する。先ほどまでの雷雨が嘘だったかのような青空で……。
「お、虹発見」
そんな僕の呟きにマリスも空を見上げる。
「……綺麗、だな」
虹なんていつぶりだろうか、少なくともこの世界に来て初めてだ。と言ってもまだ2日目なんだけれど。
ふいにマリスが歩く足を止め、姿勢を低くした。
「ん、どした?」
「何か、来る……」
その真剣な表情から察するに結構やばいのかも。
すると、遠くから何か音が近づいて来る。
ズシン、ズシンという足音と共にバキバキと木の枝折れる音が、こちらに真っ直ぐと。
  「この音……そしてこの嫌な気配……邪神の使いか?」
邪神の使い……。フィーユからその存在の話をされただけでまだ実際には見たことがない。
フィーユ曰く、邪神の使いには様々な種類が存在する。そしてそれらの存在は"神"や、他の種族、生物を無差別に襲う。
「来るぞっ!」
そう言ってマリスは横に飛び退く。
その瞬間、大地を揺るがす衝撃が来る。
「うぉわっ!?」
衝撃と共に地面の破片も飛び、そのかけら一つに当たっても大怪我を負ってしまいかねない程の破壊力があるように見える。
そして、相対する。邪神の使いという存在に。
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