少女と異世界。

時雨

14.どうも、私が依頼人の

どうにか依頼人のところまで辿り着いた僕とマリスは、少しばかり裕福そうな家に上がって、話を聞いていた。

「どうも、私が依頼人のブリトーだ」

美味そうな名前だな、と心の中で突っ込んでおく。

「えぇ、はじめまして、僕は玖珂 千夏って言います。それでこっちがマリスです」

そう言いながら隣にいる金髪少女に指を指す僕。

マリスもよろしくな、と言って席に座る。

「さて、早速だが依頼の説明といこう。遺跡にあるお宝を見つけてきてほしい、とその依頼書には書いたんだがな、当然知っての通りその遺跡はもう探索され尽くしている。お宝などもう残ってはいないだろう」

そう言って大きなため息をする。

「え、それじゃあお宝探しというのは無理な話では?」

「あぁ、お宝が見つかる確率はとても低いだろう。だが、私が探しているお宝``はおそらくこれまで遺跡に入って探索してきた人々とは違うものだ」

「どういうことですか?」

普通のお宝ではない、ということだろうか。

「まぁ、とりあえずこれを見てくれ」

そう言ってふところから取り出したのは一枚の絵だ。はがき程の大きさで、なにやら地図のようなものが書かれている。

「この図が何だかわかるかね?」

「えっと、遺跡の地図、ですか?」

僕がそう答えると少し驚いたようにこちらを見た。

「ほぉ、よく分かったな。そうだ、これは遺跡の地図。しかしここを見てくれ」

そう言って地図のバツ印に指を置く。

「この印は以前はなかったのだが、私がうっかり水にこの紙を落としてしまった時に、浮かび上がったのだよ」

少し興奮している様子を見る限り、この印を見つけた時は相当はしゃいだんだろうな。

「つまり、何かの隠し場所、と言うことですかね?」

「恐らく、いや、間違いなく誰かがその場所に何かを隠している」

そうドヤ顔でブリトー氏は言い切った。

「ちょっと待てよ」

すると、さっきまで静かに椅子に座っていたマリスがいきなり声をなげる。

「まず、その地図の出所だよ、どっからそれを持ってきたんだ?」

そう言ってブリトー氏を睨むように問う。
つまり、マリスは地図にある情報が本当なのか疑っているのだ。

「これは、私の父から受け継いだものだ。出所など分からんよ」

「そうかよ、んで、その出所を知っているであろう親父はいねえ```ってわけか」

「あぁ、そうだ」

そう短く、少し悲しげな表情で言った。

「どうやらそちらの方は信じ難いと思っているようだな。まぁ、当たり前だな。そうだ、前金としていくらか払おう」

そう言ってまた懐に手を入れると、布袋を取り出した。

「これでどうか、受けてほしい」

「おう、任せな」

そう言って差し出したのは金貨10枚だ。そして即答で受けるマリス。

思わず、おい、とマリスを見てしまったけれど、もう意識は金貨10枚に持っていかれているようで聞こえていないようだ。

「さぁ、そうと決まればすぐ行こう!今すぐ行ってきてやろう!さぁ、さぁ!」

そう言ってすくっと立ち上がると今にも駆け出しそうな勢いでまくし立ててくる。

「あ、あぁ、わかったから。一回落ち着こう」

そうして僕等はブリトー邸を後にしたのだった。




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