少女と異世界。
7.鏡を見たときの反応が楽しみね
あれ、来ない。
どれだけ待っても地面の衝撃は来なかった。
恐る恐る目を開けると、そこには雑草があった。
あれ、おかしいな、僕は落ちたんじゃなかったのか?
なんで地面にうつ伏せてるんだ?
助かった……のか?
「ふぅ、全く、世話のかかる人ね」
こ、この声は……。
まだフラつく頭でなんとか立ち上がり、その姿を確認する。
「なぁ、確かに僕は君に世話になってばっかだけどさ、浮き方ぐらい教えてから行ってくれても良かったんじゃないか?」
もちろん、あの少女だった。
「教えたじゃない、浮くって思ったら浮くのよ」
「出来なかったんだけど」
「え?出来ないの?それは悪いことしたわね」
おい。
「じゃあ、これあげる」
そう言って少女から手渡されたのは、あの時のラムネだった。
「え、ラムネ?なんでラムネ?」
「はいはい、いいからお食べ」
なんだこの子、全然可愛くないな。
とりあえず食べてみたけど。
口の中に入れた瞬間、ジュワッと甘みが溶け出す。
噛むとラムネ独特の砕ける感触に懐かしさを感じた。
「久々に食べたけど、結構美味いな、ラムネ」
少女が落ち着きなく僕の顔を見て反応を伺っている。
なんだ、なんかヤバイもんだったのか?
「どう?なんか変わった?」
変わった?別に何も……ないな。
「いや、特に何もないけど?」
「へ、うそ、本当に?なんか力が溢れて来る!みたいな感じになると思ったんだけど」
「ラムネ一つでそんな元気が出たら良いんだけどな」
でも、心なしか体が軽くなったような気がする。
色々なことがありすぎて疲れてだけど、やっぱり疲れた時には甘いもの、というのは本当なんだろうかね。
「おかしいなぁ、うーん、じゃあもう一個食べてみて」
「ありがたくもう一ついただきまーす」
うん、甘い。
「…どう?」
「うん、美味しいよ?」
「味じゃなくて!体とかに変化がないかって聞いてるの!」
「うーん、そうだなぁ、心なしか体が軽くなったぐらいだな」
「それだけ?」
「うん、それだけ」
・・・。
というかさっきから少女が一生懸命になっているのが気になるな。
「なぁ、さっきからどうしたんだよ、そのラムネがどうかしたのか?」
「はぁ、まぁいいか、本当は驚いたところが見たかったんだけど。実はこのラムネって魔力が入ってるのよ。しかもかなり高密度でね」
へ?まりょく?
「もしかしてこの世界って魔法とかあるのか?」
「あら?言ってなかった?」
あら? じゃないよ!なんも聞いてないよ?
「はぁ、まぁいいよ。 で?その高密度の魔力が入ったラムネを食べた僕はどうなる予定だったんだ?」
「身体中に魔力が満ちて、自然と頭もその使い方を理解するものなんだけど、千夏には才能なしってことかしら……」
才能なし宣言された!実は魔法とかがある世界だって聞いて心の中では凄いはしゃいでたのに!
「そ、そうなのかなぁ……確かに僕のいた世界に魔法はなかったしな」
「いえ、そんなのは関係ないわ」
「え?ないの?じゃあなんで……」
「さぁ?別にいいんじゃない?魔法ぐらい使えなくてもなんとかなるもんよ」
いや、さっき僕が地面に叩きつけられそうになったの覚えてます?
「はぁ、ちょっとショックだな。こういう時の主人公って転生したらめっちゃ強いパターンじゃないのか…?」
「主人公?何を言ってるのか分からないけれど、そうね、とりあえずさっき私が見つけてきた町まで行きましょうか、ここって実は危なかったりするから」
そう言って少女は歩き始める。……ん? そうだ思い出した。転生する前に名前聞こうと思ってたんだ。
小走りに追いかけて少女の横に並ぶ。
……あれ?なんか違和感が……。なんでだろう。
「なぁ、そうえばだけどさ、名前、教えてくれないか?」
「へ?名前?そんなの無いけど」
「じゃあ、なんて呼べばいい?」
少女はニヤリと笑った。
「そうね、私の名前……今決めたわ!」
僕の少し前まで走ると、振り向き、無い胸を張りながら仁王立ちになる。
僕も歩く足を止める。
「宣言するわ!私の名前はフィーユ、よ!」
ドヤ顔だ。
「フィーユ?なんて意味だ?」
ふふん、と自慢げに鼻を鳴らすフィーユ。
「それはつまり、私って意味よ。我ながら完璧な名前ね!」
「そ、そうか、良かったな」
浅知恵な僕には意味不明だが。
そしてまた二人横に並んで歩き始める。
……あれ、やっぱりなんか違和感が……。
「それで、その町まではあとどれくらいだ?」
まだ歩いて少ししか経っていないが、一応聞いておく。
「そうね、このペースで行くと一時間もかからないで着くんじゃない?」
フィーユはそのぐらい何でもないでしょ?と言うかのように答えた。
遠いじゃん…。つまりは一時間近くは歩くってことじゃないか……。って、待てよ、さっきからなんか違和感を感じると思ったら、フィーユの頭が近いんだ。
初めて会った時は僕の肘ぐらいにあった頭は、なぜか今は肩の真横に来ていた。
「なぁ、フィーユ。ここの世界来てからなんかデカくなってないか?」
そう問いかけると何故かフィーユは自分の胸に手を当てて首をかしげる。
「そうかしら、変わってないと思うけど?」
「あぁ、確かに胸の大きさは微塵も変わってないけれど、僕が聞いたのは身長の方だ」
「何よ、最初からそう言いなさいよ。……自分でも少し期待しちゃったじゃない」
小さいの、気にしてたのか……。
「あのね、私が大きくなったんじゃなくて、あなたが小さくなったのよ。前の肉体よりね」
前の肉体より?あ、そうだ転生?したんだっけ?
「なぁ、僕って見た目どんな感じだ?」
「んー、一言で言えば可愛い、ね」
「え、僕、美少年ってやつ?」
「え、えぇ、まぁ、そんなところじゃない?」
なんで目をそらすんだ…?
まぁ、いっか、僕、美少年だってことがわかったし。
「鏡とかあったらいいんだけどな」
「町にあるんじゃない?……あまり期待しないほうが身のためよ?」
へ?美少年だって今…言った……。
違うのかっ!?僕って美少年じゃないのかっ!?
フィーユはまたニヤリと笑って言った。
「鏡を見たときの反応が楽しみね」
どれだけ待っても地面の衝撃は来なかった。
恐る恐る目を開けると、そこには雑草があった。
あれ、おかしいな、僕は落ちたんじゃなかったのか?
なんで地面にうつ伏せてるんだ?
助かった……のか?
「ふぅ、全く、世話のかかる人ね」
こ、この声は……。
まだフラつく頭でなんとか立ち上がり、その姿を確認する。
「なぁ、確かに僕は君に世話になってばっかだけどさ、浮き方ぐらい教えてから行ってくれても良かったんじゃないか?」
もちろん、あの少女だった。
「教えたじゃない、浮くって思ったら浮くのよ」
「出来なかったんだけど」
「え?出来ないの?それは悪いことしたわね」
おい。
「じゃあ、これあげる」
そう言って少女から手渡されたのは、あの時のラムネだった。
「え、ラムネ?なんでラムネ?」
「はいはい、いいからお食べ」
なんだこの子、全然可愛くないな。
とりあえず食べてみたけど。
口の中に入れた瞬間、ジュワッと甘みが溶け出す。
噛むとラムネ独特の砕ける感触に懐かしさを感じた。
「久々に食べたけど、結構美味いな、ラムネ」
少女が落ち着きなく僕の顔を見て反応を伺っている。
なんだ、なんかヤバイもんだったのか?
「どう?なんか変わった?」
変わった?別に何も……ないな。
「いや、特に何もないけど?」
「へ、うそ、本当に?なんか力が溢れて来る!みたいな感じになると思ったんだけど」
「ラムネ一つでそんな元気が出たら良いんだけどな」
でも、心なしか体が軽くなったような気がする。
色々なことがありすぎて疲れてだけど、やっぱり疲れた時には甘いもの、というのは本当なんだろうかね。
「おかしいなぁ、うーん、じゃあもう一個食べてみて」
「ありがたくもう一ついただきまーす」
うん、甘い。
「…どう?」
「うん、美味しいよ?」
「味じゃなくて!体とかに変化がないかって聞いてるの!」
「うーん、そうだなぁ、心なしか体が軽くなったぐらいだな」
「それだけ?」
「うん、それだけ」
・・・。
というかさっきから少女が一生懸命になっているのが気になるな。
「なぁ、さっきからどうしたんだよ、そのラムネがどうかしたのか?」
「はぁ、まぁいいか、本当は驚いたところが見たかったんだけど。実はこのラムネって魔力が入ってるのよ。しかもかなり高密度でね」
へ?まりょく?
「もしかしてこの世界って魔法とかあるのか?」
「あら?言ってなかった?」
あら? じゃないよ!なんも聞いてないよ?
「はぁ、まぁいいよ。 で?その高密度の魔力が入ったラムネを食べた僕はどうなる予定だったんだ?」
「身体中に魔力が満ちて、自然と頭もその使い方を理解するものなんだけど、千夏には才能なしってことかしら……」
才能なし宣言された!実は魔法とかがある世界だって聞いて心の中では凄いはしゃいでたのに!
「そ、そうなのかなぁ……確かに僕のいた世界に魔法はなかったしな」
「いえ、そんなのは関係ないわ」
「え?ないの?じゃあなんで……」
「さぁ?別にいいんじゃない?魔法ぐらい使えなくてもなんとかなるもんよ」
いや、さっき僕が地面に叩きつけられそうになったの覚えてます?
「はぁ、ちょっとショックだな。こういう時の主人公って転生したらめっちゃ強いパターンじゃないのか…?」
「主人公?何を言ってるのか分からないけれど、そうね、とりあえずさっき私が見つけてきた町まで行きましょうか、ここって実は危なかったりするから」
そう言って少女は歩き始める。……ん? そうだ思い出した。転生する前に名前聞こうと思ってたんだ。
小走りに追いかけて少女の横に並ぶ。
……あれ?なんか違和感が……。なんでだろう。
「なぁ、そうえばだけどさ、名前、教えてくれないか?」
「へ?名前?そんなの無いけど」
「じゃあ、なんて呼べばいい?」
少女はニヤリと笑った。
「そうね、私の名前……今決めたわ!」
僕の少し前まで走ると、振り向き、無い胸を張りながら仁王立ちになる。
僕も歩く足を止める。
「宣言するわ!私の名前はフィーユ、よ!」
ドヤ顔だ。
「フィーユ?なんて意味だ?」
ふふん、と自慢げに鼻を鳴らすフィーユ。
「それはつまり、私って意味よ。我ながら完璧な名前ね!」
「そ、そうか、良かったな」
浅知恵な僕には意味不明だが。
そしてまた二人横に並んで歩き始める。
……あれ、やっぱりなんか違和感が……。
「それで、その町まではあとどれくらいだ?」
まだ歩いて少ししか経っていないが、一応聞いておく。
「そうね、このペースで行くと一時間もかからないで着くんじゃない?」
フィーユはそのぐらい何でもないでしょ?と言うかのように答えた。
遠いじゃん…。つまりは一時間近くは歩くってことじゃないか……。って、待てよ、さっきからなんか違和感を感じると思ったら、フィーユの頭が近いんだ。
初めて会った時は僕の肘ぐらいにあった頭は、なぜか今は肩の真横に来ていた。
「なぁ、フィーユ。ここの世界来てからなんかデカくなってないか?」
そう問いかけると何故かフィーユは自分の胸に手を当てて首をかしげる。
「そうかしら、変わってないと思うけど?」
「あぁ、確かに胸の大きさは微塵も変わってないけれど、僕が聞いたのは身長の方だ」
「何よ、最初からそう言いなさいよ。……自分でも少し期待しちゃったじゃない」
小さいの、気にしてたのか……。
「あのね、私が大きくなったんじゃなくて、あなたが小さくなったのよ。前の肉体よりね」
前の肉体より?あ、そうだ転生?したんだっけ?
「なぁ、僕って見た目どんな感じだ?」
「んー、一言で言えば可愛い、ね」
「え、僕、美少年ってやつ?」
「え、えぇ、まぁ、そんなところじゃない?」
なんで目をそらすんだ…?
まぁ、いっか、僕、美少年だってことがわかったし。
「鏡とかあったらいいんだけどな」
「町にあるんじゃない?……あまり期待しないほうが身のためよ?」
へ?美少年だって今…言った……。
違うのかっ!?僕って美少年じゃないのかっ!?
フィーユはまたニヤリと笑って言った。
「鏡を見たときの反応が楽しみね」
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