銀河大戦〜やる気なしの主人公が無双します〜

グルクン

会議


        第14話 会議


 ここは帝国軍総司令部がある元帥府人事課。

 ここでは良くも悪くも帝国所属の軍人の人事を決定する。

 大きな議場では、帝国軍元帥を中心に軍務長官と帝国宰相が出席している。その他に帝国軍の上層部と各部署の責任者が同席し、会議が行われていた。

 その会議で特に大きな議題として上がっていたのが、連邦領への侵攻と特殊作戦軍が行った〈対連邦工作作戦〉の戦功者であるシュトルフとシュナイダー両名の昇級の可否である。

 まず先にシュトルフとシュナイダーの昇級について話し合われた。この議題に今回、ここにあげたのは、特殊作戦軍司令長官のヴェレス大将と、シュトルフの父で統合作戦本部中将のガレフだった。

「これより、ヴェレス大将とガレフ中将の両名が署名し提出した〈シュトルフ大佐とシュナイダー少佐の昇級推薦状〉について、これより話し合います」

 今回の会議を進めるのは、帝国軍元帥府人事課部長 リャン上級大将である。

「各々方、本議題に対して意見を求めます。意見のある方は挙手をお願いします」

 まず先に手を挙げたのは、帝国の軍務長官トルーマンだった。

「私は反対だ。歳が30にも満たない若造に、これ以上の階級と責任は任せられん。シュトルフ大佐が准将に上がるとなると、分艦隊を預けねばならなくなる。もし何かで失敗したりでもしたら、各々方は皇帝陛下に顔向けができるか?」

 真っ先に出た意見が反対だった為、場が静まり返った。
 その空気を壊したのが、シュトルフの父ガレフ中将である。

「連邦の大臣と敵防衛艦隊旗艦を亡き者にした功績は大きいのではありませんか?それを考慮頂きたい。」

「私もガレフ中将と同じ意見だ。今、軍を統べる者は皆歳をとっている。そのため次代を担う若者が軍を率いる必要がある」

 その意見に賛同したのは、同じく推薦書にサインしたヴェレス大将だった。

 軍務大臣と上位の将官が意見を違えた為、議場の意見も2つに分かれる。

 議場内の声が大きくなり、話し合いどころではなくなったため、進行役のリャン上級大将が場を静かにさせる。

「皆さま静粛にお願いします。ここで元帥閣下に意見を求めたく思います。閣下は如何判断いたしますか?」

 リャンに話を振られた元帥は、これまで固く閉ざしていた口を開く。

「トルーマン軍務長官の仰ることはわかる。だがガレフ中将の言う通り、功績は大きい。ヴェレス大将が言う理由も最もだ。ここは今一度、先ほど意見を言った者たち以外の意見を聞きたい」

 元帥はトルーマンとガレフ、ヴェレス以外の将官達に意見を求めた。

 大方の意見が出た後に、議場全体でシュトルフ達の昇級についての可否を投票で決めることになった。

 出席している将官の机の画面に投票ボタンが現れる。誰がどこに票を入れたか分からぬよう、画面が収められている場所は四角く囲われている。

 投票の結果、昇級可 70%、昇級不可 30%となった。

 この結果を踏まえて、元帥が最終決定を下す。

「投票結果に基づいて決定を下す。シュトルフ・ベシュタター大佐を准・将・へ昇格させ、帝国軍第三艦隊へと配属させる。そして、シュナイダー・ハウスト少佐を中・佐・へ昇格させ、先と同じく帝国軍第三艦隊への配属とする。異論はないな?」

 議場内からは異議なしと声が上がった。

 荒れに荒れたシュトルフ達の昇級に関する議題はこれで片付いた。次は本題の〈連邦領侵攻作戦〉についてである。

 帝国と連邦は長きに渡り争い続けていた。1つの星系の所属を争う小規模衝突から、何万隻もの艦艇が集まり砲火を交える全面衝突と大小様々な戦いをこれまでしてきている。

 今回は、帝国が一丸となって連邦へ攻める過去最大級の侵攻作戦の可否が議題となっている。この議題もリャン上級大将が進める。

「今回の会議で最重要議題として上がっているのが、〈連邦領侵攻作戦の可否〉であります。この場で可決なされましても、皇帝陛下のご意向にそぐわなければ、決行されません。しかし、この議題は我らが帝国始まって以来の重要議題となりましょう。詳しい内容を統合作戦本部長のコバルト上級大将お願いします」

 リャンはコバルトに場台へ上がるよう促す。コバルトは席から腰を上げゆっくりと歩き場台に立った。

「ご紹介預かりましたコバルト上級大将です。それでは計画内容をお伝えします。お手元に配られているレジュメをご覧ください。」

「まず、本計画の目標は連邦所属艦隊の壊滅です。彼らの技術力は我ら帝国に負けず劣らずの性能をしております。その為、一気に攻め滅ぼすのは不可能でしょう。先に防衛機能を低下さ、連邦市民に混乱と不安を与えたところで、さらに攻勢をかければ連邦と言えども崩壊させることができるでしょう。ここまでで質問はありますか?」

 ここで1人の将官が手を挙げ発言する。

「1つ確認したいことがあります。今、仰った限りでは2回に渡り侵攻すると聞こえたのですが間違いございませんか?」

「その通りです。境界線より遠く離れた連邦内部へ入り込むと補給線が長くなってしまいます。補給線を敵に絶たれると前線の士気に関わりますので、防衛線の破壊と連邦機構破壊との2つに分けて計画を進めたいということです」

「わかりました。ありがとうございます」

「他に質問のある方は?」

 今のところは他に疑問を持つ人が居ないらしく話を進めることにした。

「それでは次に移ります。この計画の要は、敵防衛艦隊が増強されないうちにやることです。その為には、連邦内で行われる次の議会選挙に対して、工作を仕掛ける必要があります。工作が上手くいけば、敵防衛艦隊の増強に時間がかかり、その分我々の被害が抑えられるという訳です。ここまでで質問はありますか?」

 ここで複数の手が上がる。その中で階級の高い将官が指名される。

「2つばかり聞きたい。1つはどの様に工作をするか。2つ目はどの様な工作なのか。説明を頼む」

「はい、では説明させて頂きます。まず1つ目の工作の仕方ですが、連邦内に工作員を送り、現地の反政府派を操ります。その為には莫大な資金を要することを想定しています。また反政府派への武器弾薬の提供も視野に入れています。2つ目の工作内容ですが、反政府内容のビラを連邦中にばら撒き、連邦各所において武装蜂起を起こさせます。ここで重要になるのが、我々が支援する予定の反政府派の働きです。確実性を期す為、反政府派の指導者に我々の工作員を立てる予定です」

 ある程度、説明したところで先ほど説明を求めた将官が待ったをかけた。

「少し待ってほしい。こちらから送り込む工作員を反政府派の指導者に擁立するというのはできることなのか?」

 その疑問に対して周りからも同様の声が議場に響いた。それに対してコバルトは答える。

「一筋縄ではいかないと思いますが、十分可能であると確信しています。」

 その答えに議場内の将官達は、少し引っかかりはするが納得した様だった。

 コバルトは話を続ける。

「では、本題に戻ります。反政府派を柔化させた後、我々は帝国領内を守る最低限の艦隊だけを残し、その他の全軍を挙げて連邦領内に侵攻します。敵陣営は、反乱軍と帝国軍の両方を相手取らないといけなくなり、自ら崩壊することが予想されます。我々は崩壊した戦線を強行突破し、各星系に配置させてある防衛艦隊を各個撃破していく予定です。以上で本計画の説明とさせて頂きます」

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