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いずれ地に咲く

作者 ピヨピヨ

花の話 七話

少年は美しい容姿をしていた。
少し癖のある黒い闇色髪、
白っぽい肌、
そして静かな夜のような青っぽいむらさきいろの瞳。
まるで人形職人が作った人形にそのまま命が宿ったように精密な、とても整った顔をしていた。
そんな少年は小さな村の教会の孤児院に住んでいる。
少年の親は彼が物心つく前に戦争により他界しており、少年は独り身だった。

しかしどんなに美しい容姿を持っていても、少年はいつも村から浮いていた。
少年には何が欠けていた。

「また死んだ。」
「また、あの子だよ、きっと。」
「なんて気味が悪いんでしょう…」

少年の周りではいつもそんな言葉が飛び交っていたが、少年にはそれがどんな意味を持つのかわからなかった。
さして興味もなければ、わざわざ反論もしなかった。
なぜならそれは無視していれば何もならなかったから。

ある時少年がいつものようにスコップを片手に死んだ者を埋めていると、教会の神父がやってきた。

「森の中にとてもきれいな花畑があるのだが、一緒に行ってみないか?」

少年は断った。
その神父はいつも自分を気にかけてくれる優しい神父だったが、なんだか時折目が怖かった。
しかし断る理由も見つからず、少年は嫌々ながらも神父と森の奥に入っていった。

森の中にはきれいなスイセンがいっぱい咲いていた、少年は神父に言われるがまま、花畑の中心の小さな切り株に腰かけた。
あたりはまるで白い雲の上みたいに沢山の花々に囲まれてスイセンの香りが辺りに立ち込めている。
花の香りが立ち込め、なんだか不思議な場所だった。
神父はまるで神様に懺悔でもするように、少年の前に座り、少年の手その大きなカサついた手で握った。

「君は神を信じるか?」

神父がそんなことを問うと、少年は少し戸惑いながらも頷いた。

「ではなぜ、あの猫を殺した?」
「…苦しんで、いたから、病気で…どうしても死ぬのなら、早く楽にさせてあげたくて…」

少年はなるべく嘘偽りのないように答えた。
神父は片手で少年の手を握りながら、少年の肩に手を置いた。
その顔は豊かに穏やかな笑顔。
しかし、何が違った。
まるで仮面を被った役者の演技のようだった。

「そうか…君は優しい子だね…しかしながらそれは偽善だ。」

神父はそう言いながら、少年の細い首筋を撫でた。
ゾワっとした悪寒が走り、少年はその手を払おうとしたが、既に両手は神父のもう片方の手によって押さえつけられていた。
そのままさするように、カサついた老人の手は首筋から鎖骨にかけて、触った。
いやだ、と少年は思った。
気持ち悪い。

「神父様…?」
「生き物の生き死には全て神のみこころ次第、お前が勝手に決めていいものではないんだよ。」

その手が服の中に入ってきた時、少年は小さく悲鳴を上げて抵抗した。
目の前の生き物が何をしでかすが予知したからだ。
それは殺されることよりも、残酷なことだと直感した。

「君は身を清めなければならない、さあ身を委ねなさい!」

いつもの落ち着いた声からは信じられないような声に、怖がり少年は激しく抵抗し、もつれるように切り株から倒れた。
白い花弁が舞う。
花の香りが強くなる。
その時に手が外れ、少年は転がるように逃げた。
しかし子供の足が大人の足にかなうわけなく、すぐに捕まりそのまま押し倒された。
背中でスイセンの花がぐしゃりと潰れて、身体中青臭い。
乱暴に押さえ付けられ、体の自由が奪われる。
それが恐怖だった。
だから叫びながら、助けを求める。
しかし、それも神父の大きな手で口を塞がれくぐもった声しか出ない。

「お前は悪魔だ!私を惑わす夢悪だ!」

神父はそう意味のわからない言葉を吐きながら少年の服を脱がそうとした。
少年は顔にかかる生暖かい息を感じながら、やめるように懇願した、自分がひどく侮辱されていることを感じ、なんとかしてこの場を切り抜ける策を探した。

その時だった。
神父の服に入っていた拳銃が見えたのは。









気がつくと白い花畑は赤く染まっていた。
その中心には人の形をした人だったものが胸から血を流して倒れていた。
少年は対して運動もしていないのに、肩を上下させながら、未だに細い煙を吐く硬い銃を握りしめたまま、その場にへたりと座り込んだ。

殺してしまった。

そう実感すると少年は震えが止まらなくなった。
このまま帰れば村の神父様を殺した罪を背負わなければならない。
少年は人殺しの罪がもっとも苦しく、人間として扱われなくなることを知っていたし、それと同時に神父様は村の中心的な人物でみんな慕われていたことも知っていた。
そんな人間に自分が襲われそうになったなんて言っても、きっと信じてくれない。 
代わりに死ぬより辛い罰を受けなければならないだろう。
村の外に出るという選択肢もあったが、正直少年にハンティング力もないし、子供は魔物に襲われやすい、簡単には出られないのは確信していた。

では、どうすればいいか…

少年は混乱する頭で一生懸命に考えながら、やがて一つの考えに至った。

みんないなくなればいいんだ。

少年は胸の奥で何かが昂ぶるのを感じた。





街に着いた。
綺麗な街だ、まるで隣からベーカリーのいい匂いがしてきそう。

「この家がフリージアさんの家なの?」
「ええ…」

石で舗装された道、庭にたくさんの花が小さなレンガの家を優しく取り囲んでいた。
まるでおとぎ話に出てくるお家みたいで、すごい素敵!
ここに住んでみたい。

「今、ここに住んでみたい、とか思ったろ。」
「?!なっなぜ!?」
「顔に出てる。」

呆れ顔のカロンに心情を読み取られた。
思わずぽっぺを手で触る、そんなに顔に出るのか、私。
私がペタペタと自分のほっぺを触っていると

「おや、フリージアもう帰っていたのかい?」

不意に声を掛けられて振り返る。
そこには杖をついきながらお爺さんが、帽子に指を添えてこちらに会釈している。

「親戚の子かい?」
「えっ…あ、そう!そうです!」

私が少し詰まりながらなんとか返事を返すと、おじさんは微笑みながらそうかいと頷いた。

「ゼペットさん、今日は足の調子が良いんですね。」
「ああ、お陰で妻にお使いを任されてしまったよ。」

そうゆうとおじさんは奥さんの用事を思い出したのか、もう一度会釈して去って行ってしまった。
私はおもわず口を少し開けたまま、固まってしまった。
おじさんに会ってびっくりしたのじゃない、フリージアさんの姿を見てびっくりしてた。
あのトンボの羽は何処へやら、ブロンドの髪は今や私と同じ茶髪の短髪。
平凡でそれでいて綺麗な町娘という感じ…
姿を変えたのかな?
というかいつの間に?

「そこまでして人間と暮らしたいなんて、風変わりだな。」

カロンは冴えない目で吐き捨てるように言う。
やっぱり仲良くなりたくないのかと、ムッと顔を覗き込むと物凄く怖い目で睨まれた。
ああ、そっか昨日からずっと寝ないで夜番をしてたからイライラしてるのか…なるほど、なるほど…
睡眠は大事だよね。

「森の奥よりは便利ですわよ?」

そんな寝不足により只今不機嫌気味のカロンの前を通って、石畳みの道を歩いて行くフリージアさん。
今は容姿さえ違うのに、纏う同じ雰囲気は柔らかい。

「それにここは彼と一緒に決めた場所なんですもの、大事な大事な私達の家。」

アンティーク調のノブを掴み、ゆっくりドアを開く。
中は宿主がいなかったからなのか、少し暗く寂しそうに感じた。
それに…なんだろう…?
爽やかな花の香りがする家なのに、かすかに変な匂いがした気がした。

「さあ、入って…紅茶を淹れますわ。」

フリージアさんのお言葉に甘えることにした。

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