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いずれ地に咲く

作者 ピヨピヨ

花の話 六話

私は、木霊に向けて銃の引き金を引いた。
木霊は玉から身を守ろうとしたのか、頭を抱えてしゃがんだ…。


カチッ
引き金の限界まで引くと、歯切れの良い音がした。
木霊はしばらく動かなかったが、やっと顔を上げ、疑問符だらけの顔でこちらを見上げた。
私は、澄ました顔で、

「驚いたか?」

と言って、銃を下ろした。

「ホ…ホンモノ?」
「本物だ、ほら玉も入ってる。」

しゃがんで木霊に見えるように、銃のリボルバーを開け、玉が入っていることを確認させた。
だが木霊はまだ混乱しているようで、首を何度も傾げている。
まぁ、理解が苦手な種族だからな、困惑するのも仕方がない。

「この銃は打たれる奴が、死にたいと思った時だけ撃てるんだ、だから、今は撃てない…人も、人外もな。」
「ウテ、ナイ?…トクベツ?」
「あぁ、特別だ。」
「トクベツ?トクベツ?ナゼトクベツ?」

木霊はなおもうるさく質問している。
私はそんな木霊を指でつまんで、すっと立ち上がり、そろそろ帰ろうと帰路を戻り始めた。
わざわざわかりやすく、あのエルフとあの娘の二人きりにさせたから、話は済んでいるだろう。

「なぜって、もし俺が気が触れて殺人鬼になったり、無差別殺人できないようにするためだと思うぞ、不老不死で人も人外も殺せる奴なんか、なんか、もう、やばい奴だろう?」
「サ、サツ?フロウフ、シ?ヤ、バイ?」

しまった、言葉を詰め過ぎたな。
まぁ、どうでもいいか…。





戻ってみたら、すでにあの娘は眠っていた。
薪の火はまだ燃えていて、その火より少し離れたところで、薄い毛布にくるまるように寝ている。 

「先程、眠られましたわ。」

傍にいたエルフ、フリージアは微笑みながらそう言った。

「ちゃんと話したか?」

座りながらそう問うと、フリージアはすやすや顔を伏せて

「えぇ、少し泣かれてしまいましたが、最後には理解していただけました。」

そう答えた。

「そうか…。」
「ネタ?カルミア、ネタ?ネタ?」

ひょっこりと私のフードから、木霊が顔を覗かせた。
摘んでいると意外にも重く、指が疲れたのでフードに入れたら、そこが気に入ったらしい。

「あら、可愛らしい。」
「いい迷惑だ。」 

そう言うとフリージアは何が面白いのか、ふふっと笑った。

「貴方達を見ていると、まるで兄弟みたいね。」

そう言われた時、おもわず固まった。
誰と?まさかこいつと?

「木霊と兄弟になった覚えはない。」
「違うわ、この子のことよ。」

あぁ、なんだ、あいつか…。
なら、納得……
できるわけないだろう。

「なぜ?」
「なんだか、二人を見ているとおかしくって、似てるなぁって…。」

そして、また遠くの方を見るように、目を伏せて。

「子供がいたら、こんな感じなのかなぁって思って…。」

呟くようにそうこぼすと、思い人を思い出しているのか、しばらく無言になり、放心状態になった。
いままでも同じようになった妖精や怪物を知っている、皆大事なものを失うことは苦しくてたまらない。
しかし、誰しもしょうがない時と場合があり、選択する時が来るのだ。

「…お前は本当にいいのか?」

そう言った時、フリージアは少し驚いたような顔でこちらを見た。
私なんかは、今言ってしまった言葉に少しだけ後悔していた。
ここまで来ておいて、相手を困らすようなことを聞くべきではなかったな。
私は燃える薪に目を移した。

「いいのよ、もう…。」

表情こそはあまり分からなかったが、確かそう聞こえた気がする。

「だって、私はできる限りのことをしたんですもの……そうでしょう?」

一瞬、目を閉じて、首をかすかに振るような仕草をすると、真っ直ぐに、月みたいな不思議な輝きを放つ瞳をこちらに向けた。
一体何がそうなんでしょうなんだ…?
なんで、どいつもこいつも私にそれを聞くんだ。
分からなくてもいい
考えるだけ無駄なのに?
それとも、恋人の命を消そうとしている自分に罪悪感でも抱いているのか?
だったら、気にしなくていいのに、割と恋人を同様の理由で殺してほしいと頼む奴は割といる、個々それぞれ相手のことを思っての行動だ。
だからこれは、安楽死と同じようなものだ。

「…。」

そんな事を考える私は、やはりこの木霊が言っていたように、ヒト殺し、なのだろうか…。

「わからない…。」

私がそう言うと、フリージアは柔らかく失笑しながら、そうですかと呟いた。
それからしばらくは、火がパチパチと燃える音だけが辺りを満たした。
あの後、少しの間木霊は忙しなくフードでもぞもぞ動いていたが、やがて疲れたのか、静かになった。
思いのほか、邪魔臭いのでそいつを起こさないように、指先で摘んだ。
少し迷ったあげく、あの娘の近くに寝かせた。
多分、手を出すことはないだろう。

「あなたって、なんだか不思議ね。」

ふいにフリージアが、寝るのか横になりながら、眠そうに言った。

「見ていると、何かに逃げているように見えるし、でも、立ち向かっているようにも見えるの…。」

まるで歌うように、何かを暗示するかのように、そう告げる彼女は、ゆっくり瞼を下ろした。

「明日は早い、早く寝ろ。」 

私はそう言うと、焚き火に足で砂をかけた。

「それに、あなたからは……」

彼女は最後に、寝言のような小さな声で
確かに、こう言った。

「…水の匂いがするの…。」

火は小さな残り火を残して、消えた。

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