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いずれ地に咲く

作者 ピヨピヨ

花の話 一話

昔、とは言っても、もう何年も前のことだが、私は外へ行った事がある。
いつも暮らしていた、暗く鬱蒼した森に比べ、当時の私にとって外の明るい世界は、かなり色鮮やかに見えたものだった。
私に友人はいない、会う恋人なんかもいない、ほんの些細な好奇心で行動していたまでだ。
飽きたら帰ればいい、そう思って私は村まで行った。
明るい太陽の日差しを受けて、人々は笑顔ですれ違う私に挨拶をしてくる。
私はその時に、自分が人寄りの体をしていて本当に良かったなと思った。
私は人間ではないから、今まで人とは会ってこなかった。
だがこの前、ささいなことから自分の容姿はとても人寄りだと言うことを知った。だったら1回は行ってみたかった村に行ってみても良いだろうと思いたちいまに至る、何事でも様々な経験はしておいた方が良い。
村は小さかった、しかし小さいながらも活気があって、どうやらこの村は花がよく売れるようだ。
様々な色形の美しい花がたくさん売られている。
日差しを浴びて、葉や花弁についた水滴が反射している。
慣れない人混みに、少々疲れながら私は、ある花に目がとまった。
私の鬱蒼とした森では、育たないような明るい花だった。
私はその店の店主にこの花の名前は一体なんだと聞いてみた。
店主は奥からエプロンで手を拭きながら答えてくれた。

「あー、その花ですか?その花はスイセンの白ですね。」
「そうなのか。」
「ええ、春に咲く花です。」

その店主は少し黙った後、私の顔を覗き込みながら、あなたこの村のものじゃないですね、どこから来たんです?と聞いてきた。
私は町外れの森の奥に住んでいると伝えると、店主は大げさに

「あー、だからこの花を知らないんですね、この花はよく道端に生えてるもので、少し疑問に思ったんですよ。」

その後に店主は、実は私今花言葉にはまっているんですよと言った。
私は花言葉を知らなかったため、聞いてみると、どうやら花にはそれぞれ言葉があるらしい。
それぞれの花につけられた言葉がある。
なんだか素敵だな。

「例えば、ごぼうの花は私をいじめないでと言う意味らしいですよ、クロッカスは愛の後悔とも言うらしいし、確か名前を忘れてしまったんですが変人と言う言葉を持つ花もありましたよ。面白いですよね。」
「本当だな。」

人間というのは面白い、こんな植物にも名前や言葉をつけるのだから、様々なものに名送るのはこちら側でもよくあることだが、人間ほど多くのものに名送ったりはしない。
こちら側のものにも名があるらしいが、私はその中でも彼らにとって死神という恐れられる者らしい。
ちょっと自慢だ。
花には言葉がということを知った私は、無性にこの花の言葉が知りたくなった。

「この花は何と言う言葉を持つのだろうか?」
「あー、この花ですか…確かですねえ、…」

          自己愛、と言う言葉ですかね…。

私はそれを聞いて、一瞬喉が締められたように息苦しくなった、無論、喉など締められてはいないのだが、心臓がバクバク鳴り出す。
そうか…自己愛、と言うのか。
知らないほうがよかったな。

「あ、あの、お客様?」

気まずい様子の店主を置いて、私は村を後にした。
帰路をたどるうちに、心臓は静かに鼓動繰り返すようにはなったが、喉の違和感はしばらく残った。
私は、それから二度と村に行く事はなかった。






雨が降っている。
私は、私の雇い主である白い少女の妖精に連れられ、白く揺れるとても綺麗な花畑に共に歩いて行った。
歩いて行く途中、私たちはあまり会話はしなかった。
少女なりの気遣いだろう。
私が、悲しくならないよう気を遣ってくれているのだ。
余計なおせっかいと言うものだ、そんなことをされても何の救いにもならない。
だが、確かに私はその時が来た時にも、あまり悲しくはなかったような気がした。
本当に優しい子なのだろう、
本当に愛していたんだろう、
本当に、死にたいと望んだんだろう…
だから、私は、彼女の願いを手伝っているんだと、そう思うことで気持ちを軽くした。
白い花の上で少女は少しの時間思い出にしたっていたようだ、独り言のように私に、あの子とはここで会ったのよとか、ここの花を冠にして私にくれたのとか、人間の少年との思い出を語った後、またしばらく周りを見まし、少女は自分の腕で顔拭った。

「もういいよ、一思いに…お願い。」

とうとうその時が来る、時間とはずいぶん理不尽なものだな。
こんなに、速くなくてもいいじゃないか。
私は少女の頭に、銃口を受けた。
引き金を引く。

やはり銃が1番いいな…
感触が残らない。


森に大きく重音が響いた。





異形のものたちは、人間とは違う。
生き方も、住む場所も、…死や生の感覚も違う。
死ねない私たちは、いつも面白おかしく暮らしている。
天にいる神様に役目をもらって、ときには人にいたずら等をして、ときに恋落ちるものもいて…
ときには自ら死を望むものがいる。
治らない病気にかかり、死ぬことも許されず、苦しみ続ける者。
生きているだけで、周りを傷つけてしまう者。
死んだ人間の後を追う者。
それらに唯一死を与えられるのが、どうやら私だけらしい。
それがわかったのは、つい300年前ぐらいだろうか、いや、それより前か。生まれた時からずっとそれをやっていたのか、もうわからなくなってしまった。
今じゃもう、その仕事をすることが悲しいのか、楽しいのかもわからない。
わからない、わからない。
わかりたくはない。
鬱蒼とした森の奥、静かなところで私は暮らしている。
人には会いたくない、同胞にも会いたくはない。
誰にも会いたくはない。
少女を殺したその日にも、私はぐったりと寝室のベットに横になった。
疲れた…
とても疲れた…
私は落ちるように眠りについた。

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