オレンジの片割れ。
プリムラの花を胸に。
オオヤは私の書いた文字を見つめて瞬きをやたらに繰り返した。そしてひとこと。
「これ、どういう意味」
「ですよねー。スペイン語なんだそれ。読み方は悪いけどわかんない」
読める?と英語の得意なオオヤに丸投げした。オオヤもさすがにあきれ果てた表情でこちらをみて人に聞かせるためだけのため息をつく。
「なんかオオヤさ、今日朝っぱらから疲れすぎじゃない……?」
「ああうん。いや、三浦たちのボケにいちいち突っ込んでたらすんごく疲れてさ」
「ははは、だろうね」
げっそりとして言うので可笑しくなってしまって大笑いする。だっていつも天然でボケるほうの人がそういうのだから、面白くないわけがない。
あ、そういや日本語訳いってない。自分がさっき書いた文字はかわいていた。指にインクがつかないことで安心してから重いそれをオオヤに返す。
オオヤは私が大笑いしたのを根に持っているのか「釈然としないな」とつぶやいてアルバムを受け取った。
「そんな釈然としないオオヤにひとつ」
サクライ?その声は昨日よりも鮮明《クリア》に聴こえた。ああとひとり納得する、なぜならオオヤは今日マスクをつけていなかったから。
久々に顔全体をみるので少し違和感を覚えた。そんな顔してたっけ。
オオヤの黒い瞳と視線があって急いで逸らした。彼も私もオーバーリアクションだったとはおもう。級友《クラスメイト》らが出払っていてよかった。みられたらひやかしどころでは済まないだろうし。
「そ、それでさ、あの……アルバムに書いたやつの日本語訳が、さ。『オレンジの片割れ』になるの」
「へぇ……そ、そうなんだ」
お互い別方向をみてぎこちない会話を交わして、沈黙がついにおりた。
会話がなくなると廊下からはしゃいだ同窓らの声がバカみたいに思えた。なんか廊下と教室で世界が切り替わっているみたいだ。
オオヤとの沈黙がきつくて逃げたしたい気持ちがこみ上げた。もしも、オオヤがこの言葉の意味をしってて、どう返答するか迷って黙っているんだとしたら?いや、どううまく切り抜けるかを考えていたら?
一度思考の闇に捕まってしまうと何も見えなくて、悪いことばかり頭ん中に張り付いて離れない。
ブーという振動がして思わず肩を震わす。うおっびっくりしたぁ。なんだよと心の中でブーイングをかましつつスマホの通知を確認する。LINEの通知でそれは、真っ赤に熟れたトマトのアイコンから察するに加藤から。突然なんだ、と思いつつ彼女とのトークルームを開く。どうやら戸倉にメッセージを書いてもらい終わったらしい。つまりはまぁ、友人からのお誘い。これを断る理由もないし、この沈黙から逃げ出せるのでさっさと行ってしまおう。
そうと決まれば即行動、ということでいい勢いで椅子からたちあがった。そして、自分のアルバムかどうかフリーページをみて確認する。
「あ、じゃあえとオオヤ。あとで?」
「……え、あうん」
そのまま走り去ってしまったから私はオオヤの言葉に続きがあるのをしらない。
だけれど、オオヤはそれを私に届ける気があったのかはしらない。
「ぼんと、雷みたいだよ」
そのあとオオヤは笑ったかもしれない。「綺麗なことばだな」って。
だけどそれは所詮、私の願望でしかない。
「これ、どういう意味」
「ですよねー。スペイン語なんだそれ。読み方は悪いけどわかんない」
読める?と英語の得意なオオヤに丸投げした。オオヤもさすがにあきれ果てた表情でこちらをみて人に聞かせるためだけのため息をつく。
「なんかオオヤさ、今日朝っぱらから疲れすぎじゃない……?」
「ああうん。いや、三浦たちのボケにいちいち突っ込んでたらすんごく疲れてさ」
「ははは、だろうね」
げっそりとして言うので可笑しくなってしまって大笑いする。だっていつも天然でボケるほうの人がそういうのだから、面白くないわけがない。
あ、そういや日本語訳いってない。自分がさっき書いた文字はかわいていた。指にインクがつかないことで安心してから重いそれをオオヤに返す。
オオヤは私が大笑いしたのを根に持っているのか「釈然としないな」とつぶやいてアルバムを受け取った。
「そんな釈然としないオオヤにひとつ」
サクライ?その声は昨日よりも鮮明《クリア》に聴こえた。ああとひとり納得する、なぜならオオヤは今日マスクをつけていなかったから。
久々に顔全体をみるので少し違和感を覚えた。そんな顔してたっけ。
オオヤの黒い瞳と視線があって急いで逸らした。彼も私もオーバーリアクションだったとはおもう。級友《クラスメイト》らが出払っていてよかった。みられたらひやかしどころでは済まないだろうし。
「そ、それでさ、あの……アルバムに書いたやつの日本語訳が、さ。『オレンジの片割れ』になるの」
「へぇ……そ、そうなんだ」
お互い別方向をみてぎこちない会話を交わして、沈黙がついにおりた。
会話がなくなると廊下からはしゃいだ同窓らの声がバカみたいに思えた。なんか廊下と教室で世界が切り替わっているみたいだ。
オオヤとの沈黙がきつくて逃げたしたい気持ちがこみ上げた。もしも、オオヤがこの言葉の意味をしってて、どう返答するか迷って黙っているんだとしたら?いや、どううまく切り抜けるかを考えていたら?
一度思考の闇に捕まってしまうと何も見えなくて、悪いことばかり頭ん中に張り付いて離れない。
ブーという振動がして思わず肩を震わす。うおっびっくりしたぁ。なんだよと心の中でブーイングをかましつつスマホの通知を確認する。LINEの通知でそれは、真っ赤に熟れたトマトのアイコンから察するに加藤から。突然なんだ、と思いつつ彼女とのトークルームを開く。どうやら戸倉にメッセージを書いてもらい終わったらしい。つまりはまぁ、友人からのお誘い。これを断る理由もないし、この沈黙から逃げ出せるのでさっさと行ってしまおう。
そうと決まれば即行動、ということでいい勢いで椅子からたちあがった。そして、自分のアルバムかどうかフリーページをみて確認する。
「あ、じゃあえとオオヤ。あとで?」
「……え、あうん」
そのまま走り去ってしまったから私はオオヤの言葉に続きがあるのをしらない。
だけれど、オオヤはそれを私に届ける気があったのかはしらない。
「ぼんと、雷みたいだよ」
そのあとオオヤは笑ったかもしれない。「綺麗なことばだな」って。
だけどそれは所詮、私の願望でしかない。
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