オレンジの片割れ。
似たもの同士。
「そんなだったけ……?」
「そんなだったよ。そのあといっしょに帰った」
「あ、それはなんか覚えてる、気する」
オオヤの歯切れの悪い返しに思わず吹き出す。オオヤはあんまり人に好かれてる方ではない。嫌われる要因はどこか遠くを見ていること。もうひとつは、たぶん思ったことをそのまま言ってしまうこと。
だけれど、思ったことをそのまま言うというありきたりな短所が生まれたのは私の知っている限りで、高校に上がってからだ。
つまり。オオヤはよく言えば、昔のなんにも言えない中学生の自分と決別をした。ちょっと棘のある言い方にすれば高校デビューなるものをした。
「なーんかそういう反応見るの久々な気する」
「マジでいってる?」
「だってさ、初めて会った時と反応違うもん。印象はいっしょ」
「え……。そういうサクライも雰囲気変わったから」
軽口を叩けば、おんなじぐらいの強さで叩き返してくれる。それが心地良かった。
恋だとか恋愛だとかはさておき、きっともう少し時間があれば、私とオオヤは親友になれるんじゃないだろうか。
私らは面白いぐらいによく似ている。バカで馬鹿にはなりたくないって必死に自分を変えようと足掻いた。それで今になった。純粋さをかなぐり捨てて自己暗示をかけたのがオオヤの馬鹿な行為、愚の骨頂だったとするなら。ならば、私の馬鹿は君____オオヤに恋をしてしまったことかもしれない。
「サクライってさ、昔は穏やかだったよ。ほんとうにさ……満開の桜の木が柔らかい風に吹かれてるみたいだった」
「やけに詩的な表現だね。……そーゆーの好きだなぁ」
「好きそうだよね、いっつも小説読んでるし」
なんせ図書委員長だし。そう目を線みたいにしていつものように彼は笑う。
逃げていた言葉をうっかり発したのに、私の心も頭もあの笑顔でいっぱいで気にならなかった。
「じゃあさぁ、オオヤ的には今の私の印象っていかがなもんなの?」
流れとしては申し分のない返球だと思った。会話というキャッチボールにおいて大事なことを守った。そしてオオヤも
「雷」
そう、即答した。
オオヤの言葉はそのひと単語だけじゃなくて、ふたたび彼の口が開くのがマスク越しにでもわかった。
「いつかにみた、一番綺麗だと思った桜の光景に似合う。最初はただの印象深い桜吹雪だって思った。でも、花びらが光を発したみたいに輝いた。一見すると穏やか。でも本当はかがやきを持ってるんだ」
オオヤのその言葉は本当に私に向けられたものなのか、理解できない。だって、それは私にとってのオオヤへの感情だった。
自分の妄想じゃないだろうか、こんな美味しい恋愛小説みたいな展開。
でもオオヤにはそんな気持ちはない。彼は桜を世界で一番好きなわけじゃない。目につくだけ。目につくから印象に残ってしまうだけ。
ああ、それでも思わずにはいられない。
彼が私を特別に思ってくれればよかったのに。せめて性別が同じだったらもっと話せたのに。
なんであと1日のこのタイミングでいうんだろうか、君は。
そこも含めて君らしい、っていう感想を浮かべてしまうあたり、だめだなぁ。ほんと君がすきすぎてこまる。
「そんなだったよ。そのあといっしょに帰った」
「あ、それはなんか覚えてる、気する」
オオヤの歯切れの悪い返しに思わず吹き出す。オオヤはあんまり人に好かれてる方ではない。嫌われる要因はどこか遠くを見ていること。もうひとつは、たぶん思ったことをそのまま言ってしまうこと。
だけれど、思ったことをそのまま言うというありきたりな短所が生まれたのは私の知っている限りで、高校に上がってからだ。
つまり。オオヤはよく言えば、昔のなんにも言えない中学生の自分と決別をした。ちょっと棘のある言い方にすれば高校デビューなるものをした。
「なーんかそういう反応見るの久々な気する」
「マジでいってる?」
「だってさ、初めて会った時と反応違うもん。印象はいっしょ」
「え……。そういうサクライも雰囲気変わったから」
軽口を叩けば、おんなじぐらいの強さで叩き返してくれる。それが心地良かった。
恋だとか恋愛だとかはさておき、きっともう少し時間があれば、私とオオヤは親友になれるんじゃないだろうか。
私らは面白いぐらいによく似ている。バカで馬鹿にはなりたくないって必死に自分を変えようと足掻いた。それで今になった。純粋さをかなぐり捨てて自己暗示をかけたのがオオヤの馬鹿な行為、愚の骨頂だったとするなら。ならば、私の馬鹿は君____オオヤに恋をしてしまったことかもしれない。
「サクライってさ、昔は穏やかだったよ。ほんとうにさ……満開の桜の木が柔らかい風に吹かれてるみたいだった」
「やけに詩的な表現だね。……そーゆーの好きだなぁ」
「好きそうだよね、いっつも小説読んでるし」
なんせ図書委員長だし。そう目を線みたいにしていつものように彼は笑う。
逃げていた言葉をうっかり発したのに、私の心も頭もあの笑顔でいっぱいで気にならなかった。
「じゃあさぁ、オオヤ的には今の私の印象っていかがなもんなの?」
流れとしては申し分のない返球だと思った。会話というキャッチボールにおいて大事なことを守った。そしてオオヤも
「雷」
そう、即答した。
オオヤの言葉はそのひと単語だけじゃなくて、ふたたび彼の口が開くのがマスク越しにでもわかった。
「いつかにみた、一番綺麗だと思った桜の光景に似合う。最初はただの印象深い桜吹雪だって思った。でも、花びらが光を発したみたいに輝いた。一見すると穏やか。でも本当はかがやきを持ってるんだ」
オオヤのその言葉は本当に私に向けられたものなのか、理解できない。だって、それは私にとってのオオヤへの感情だった。
自分の妄想じゃないだろうか、こんな美味しい恋愛小説みたいな展開。
でもオオヤにはそんな気持ちはない。彼は桜を世界で一番好きなわけじゃない。目につくだけ。目につくから印象に残ってしまうだけ。
ああ、それでも思わずにはいられない。
彼が私を特別に思ってくれればよかったのに。せめて性別が同じだったらもっと話せたのに。
なんであと1日のこのタイミングでいうんだろうか、君は。
そこも含めて君らしい、っていう感想を浮かべてしまうあたり、だめだなぁ。ほんと君がすきすぎてこまる。
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