巻き込まれ召喚された僕の、異世界冒険譚

優兎-マナト-

10話






   僕達三人は今、王宮の一室でお茶を飲みながらアイル達の父親を待っていた。

   勿論、アイルとナナトは『偽装』スキルを解除して、公爵家子息になっている。あのままだと、色々と拙いからね。



「あ、このお茶甘いね」

「美味しいだろ?俺も好きなお茶なんだよ」

「俺も~」

「ふたりは転生しても甘いもの好きは変わってないんだね」

「「まぁな~」」



   ふたりはよく、甘い飲み物や食べ物を好んで飲食していた。

   どうやら、転生してもそれは変わっていなかったらしい。



「でも、この世界で甘いものってあんまり無いんだよな~」

「そうなの?」

「そうそう。転生した時はすげーショックだった」

「へー」

「と、言う訳だから。ユウ。お菓子作ってくれ!」

「俺にも~!」

「はぁ?やだよ。めんどくさいし」

「「えぇぇーー?!」」

「何故そこまで驚く……」



   僕が呆れたように見ると、ふたりとも禁断症状が出ているかのように、瞳を濡らしながらもキラキラ……いや。ギラギラ?した眼差しを、此方に向ける。



「俺お前が作ってくれたお菓子好きなんだよ~!」

「俺もお前のお菓子好きなんだ~!」

「頼むよ~!ユウ~!」

「俺達今までお茶とかこの世界のお菓子で我慢してたんだぞーー?!」



   何故か偉いだろー的なニュアンスがあるが、知ったこっちゃないわ。



「ならそのまま我慢してなよ」


   僕がそう言うと、興奮して上気したせいか赤くなった頬を引き締めて、真面目そうな顔をして即答した。



「嫌だ!!」

「断る!!」



   その返答を合図に僕対ふたりの鬼ごっこが、それなりに広さのある部屋全体で行われた。



「「お願いします!!ユウヤ様ーー!!」」

「だー!もー!鬱陶しい!!寄るな!!」



   (お前達はそう迄して甘いものが食べたいのかよ!!

   と言うか、早く部屋の中に入ってきた人達に気づいてやれよ!)


   実は、鬼ごっこが開始される少し前から、二人の男性がこの部屋の入口に立って居たのである。



「もー!鬱陶しいわ!!そこの人!

  誰か知らないけど、見てないで助けてよ!!」

「「え??」」



   僕がふたりから逃げながら、中に入らずに様子を見ていた人達に向かって言うと、アイルもナナトも今気付いたように驚いた声を挙げた。

   おい。お前ら諜報員だろうが。気配です気づけよ。


   (はぁ……何はともあれ。やっと離れてくれた……)



「やぁ、二人共。私達に気付かないほど何を熱心に話し合っていたんだい?」

「「父様?!」」



   ふたりとも、先に声を掛けてきた男性を見るや、『しまった!』という様な顔をしながら、その男性を呼ぶ。


   (ん?『父様』と言うことは、この人がアイル達の父親?)


   見た目はアイルと少し似ており、笑顔が爽やか系な美青年。

   そう。『美青年』である。


   (父親よりも、兄の方がしっくりくるぞ?)


   だが、そんな爽やか系美青年なお父上さんの笑顔が、今は何故か黒く見える。

   アイルたちも気付いているのか、若干顔色が悪くて、視線を逸らさないようにしている為、目がウロウロしている。



「まぁ、まぁ。良いじゃないか、ミルキヤ。普段は大人しいふたりの珍しい姿も見られたしな。」

「「陛下?!」」



   だが、そんな雰囲気の3人の間に入ったのは、お父上さんの背後で立っていた男性だった。

   アイル達が、陛下と呼んだ人を見ると二人共も床に片膝を付き、手を胸に宛てて礼をした。



「?」



   アイルたちとその男性ふたりの間を視線で巡らせて、『早く説明プリーズ!』と思ってたいると、アイルたちに陛下と呼ばれた男性が、興味深げに目を細めながらこちらを見た。



「その女性がふたりがミルキヤに会わせたかった人なのか?」



   そしてアイルたちを立たせて、そのまま僕の方を見ながらふたりに聞いた。

   だが、ちょーーーっと引っかかる言葉があった。



「ねぇ、アイ?ナナ?女性って僕の事かな?かな?」

「っ!?違う違う!!そんな事無いぞ?!」

「聞き間違いだ!陛下はちゃんと男性って言ってたぞ!」



   僕がふたりににっこりと微笑みながら聞くと、二人共めちゃくちゃ慌てた様子で、聞き間違いだと言った。



「へー?それじゃあふたり共、『報連相』はちゃんとしてたって事なんだね?」

「「コクコクコクッ!」」

「そっか~。なら、聞き間違いか~」

「「そうだよ!!」」コクコクコクッ

「ごめんね?早とちりして。」



   僕が納得すると安心した顔をしたあと、僕を元の位置に座らせ、驚いた顔をしている父親達の元に向かって、何かを話した後戻ってきた。










コメント

  • ノベルバユーザー417075

    つ、づ、き、み、た、い。

    0
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