巻き込まれ召喚された僕の、異世界冒険譚

優兎-マナト-

9話





「えっと、あの、アイル様?ナナト様?」

「初めまして門番さん。
私はアイル様とナナト様の友人で、ユウヤと申します。
以後お見知りおきを。」



   困惑した顔の門番に、僕は自分で自己紹介をする。



「あ、はい。初めまして、ユウヤさん。俺はサイスと言います。お二人には何時もお世話になってます。

   ……それにしても、お二人にこんなにお美しいご友人が居たとは驚きですね。」

「ふふっありがとうございます、サイス様」



   僕が笑うと、アイルたちはビクッと震え、門番──サイスは少し顔を赤くし、納得する様に頷いた。



「……なるほど。

これじゃあ、アイル様達がお相手を選ばない訳ですね。

ご友人にこれ程美しい女性が居れば、取り入ろうとするだけの人に興味が無い訳です。納得ですね。」

「……あ、あぁ。ウン、ソウダネ。」

「……そんな事よりも、サイス。ユウヤは初回なんだが、用があるから此処ですぐに手続き出来ないかな?」

「あ、はい。分かりました。」



   ナナトは頷いてはいたが、視線は明後日の方向に向いていたし、アイルは無理矢理話を逸らして僕の手続きをお願いした。


   (大丈夫か?ふたりとも)



「では、初回なのでこちらに名前と来た場所を書いて貰えますか?代筆も出来ます。」



   僕はサイスさんに渡された紙に

〈名前〉ユウヤ
〈来た場所〉メルシア王国・王都

   と書いて渡した。


   因みに、言葉も文字も日本語とも英語ともちがうが、異世界人には初めから理解出来る様になっていて、僕が書けているのは二人に教えて貰いつつ練習したからだ。



「え。…ユウヤさんはメルシアから来た人なんですか?」

「えぇ、まぁ。」

「それよりも、続きを。」

「あ、はい。では、これに触れて下さい。犯罪歴が無いかを調べる物です。」



   サイスが出した水晶に僕が触ると、緑色に光った。



「はい、問題ありません。」

「通行料はこれで。……さぁ、ナナトも行くよ。」



   僕とナナトは、二人分の身分証を見せたアイルに手を引かれて、門を潜って王都の中に入った。


(わぁ……。外で聞くよりも凄い活気だね~。)


   周りを観察している僕と、心ここにあらず なナナトを引っ張って、アイルは貴族地区に進む。


   本当はサイスが馬車を用意するって言ったけど、歩いて行きたいから。と断ったのだ。



「ユウ。ユウには俺達の父様に会って貰いたいんだけど、良いか?」



   貴族地区に入って暫くすると、ナナトも漸く元に戻り、アイルが僕に聞いてきた。



「ん~?どれとして~?」

「どれって?」

「召喚された勇者の仲間としてか、ふたりの前世の友人としてか、って事~」

「あぁ、なるほど。」

「ま~あ?女として、でも良いけどね~?」

「うっ…やっぱり根に持ってたか?」

「いいや~?慣れてるから特別根に持ったりはしてないよ~?」

「ユウってやっぱ初対面の人からしたら女に見えるんだな…。」



   ナナトが微妙に傷付くことを言うが、前にも言ったように、こう言うと自意識過剰な感じだが、僕は初対面の男には大体女として見られ、惚れられてしまうのだ。



「……と言うか。女としてって言っても、男なんだから無理じゃね?バレるでしょ」

「いや?出来るよ。」

「「え?」」



   そう。出来るのである!

   何故かと言うと、ロトがこう言っている。


ーー

   主様の沢山ある〈固有スキル〉の中にある、『男女反転』というスキルを使えば主様は女性になる事が出来ますよ。※他人にも使えます。

   因みに、主様の女性姿を私も見たいです。神々も見たがってます。是非スキルを使って見せて下さい!

ーー


   ……うん。「因みに」の後からの文は見なかったことにしよう。



「まぁ、兎も角。自分も 他人でも、女にも男にもなれるんだ。」

「ユウのスキルはどれだけあるんだ?」

「さ~?」

「…はぁ……ま、それは置いといて。

   ユウが女にもなれることは別に良いが、今回は俺達の『前世の友人』と『召喚されたひとり』として会って貰いたい。良いか?」

「うん、良いよ~?」



   とまぁ、そういう訳で。

   これからアイルとナナトの父親に会うために、王宮で働いているから、と王宮へ向かう事になった。


   と、言うか。向かっている。










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