巻き込まれ召喚された僕の、異世界冒険譚
8話
   『浮遊』を解除して暫く歩くと、王都の外壁に着いた。
「この門は王都の南門だ。
   王宮や貴族街から遠くて平民や冒険者が多いから、一番活気のある所だな。」
「ほへー……たしかに、賑やかな音が聞こえるな~。」
   僕が王都から届いてくる音を聞いていると、門に並んだ列を見て嫌そうな顔をした。
「なぁ、アイ。俺達は冒険者カード持ってるし、ここの住民だから良いけど、ユウはどうするんだ?今からあの長い列に並んでたら遅くなるぞ?」
「んーそうだなー。
   ……お、今の貴族列の門番はサイスじゃないか。あいつなら大丈夫だろ。」
   そう言ってアイルは貴族列の方に僕達ふたりを連れて歩いていく。
   この王都では、門を通るのに 貴族列、住民列、冒険者列、初回列 があるらしい。
   貴族列と住民列はスムーズに通れて、冒険者列は冒険者カードを見せて犯罪歴が無いか、水晶に手を触れて確認して、大丈夫なら通れる。
   大丈夫じゃ無かったら?さあね?どうなるんだろうね。
   初回列は洗礼式前の子なら一人銅板貨1枚、成人前の子なら一人銅板貸3枚、成人なら銅板貸5枚の提出と、犯罪歴が無いかのチェックをして、名前と何処から来たのかを記入か報告をして、やっと入れる。だから、いつも長蛇の列が出来ている。らしいよ。
「やぁ、サイス。元気?」
   アイルが門番の人に声を掛けると、その人は驚いた顔をした。
「…アイル様?!何故ここに?今は隣国じゃ……」
「ん?あぁ、今帰ったよ。」
「サイス、俺にも気付いてくれないかい?」
「え?!ナナト様まで?」
「あぁ、今帰ったよ」
「何かあったんですか?アイル様まで御一緒なんて…」
「なあ、それって。俺なら帰って来ても問題は無い、みたいな言い方じゃないかい?俺は信用されて無いのかな?」
   アイルに続きナナトも会話に加わると、門番と話をし出した。
   (ん~……僕の事忘れて三人で話出しちゃったよ。
   アイとナナの言葉遣いがいきなり貴族モードになってるし……。
   ま、いいや。気長に待とうか。)
   僕は三人が僕に気付いてくれるまで、周りの観察をすることにした。
   王都の外壁は高さも厚さもあり、短いトンネルみたいだ。
  (それにしても、この世界の人達はカラフルだね~
   どんな遺伝子が組み込まれているんだろう?)
  アイル達と話している門番の人は水色の髪に灰色の瞳、と落ち着いた(?)色だが列に並んでいる人達は、赤青紫黄色……と凄くカラフルな髪色だ。
   門番と話しているアイルは今は冒険者仕様で、赤の髪に水色の瞳をしていて、ナナトは水色の髪に赤の瞳をしている。
   因みに、冒険者仕様の時の偽名は、アイルがアラト、ナナトがナトラ だ。
   門番がアイル達を偽名でなくアイルとナナトとして接してるって事は、冒険者仕様と普通の時のふたりを知っているからかな?
「あの、アイル様、ナナト様。そちらのお嬢様はどなたですか?」
   僕が周りをキョロキョロと観察していると、やっと気付いた門番がアイル達に聞いた。
   うん。まぁ、気付いてくれたのは良いけどさ。
   一応、僕は男だよ?『お嬢様』って酷くないかな?
   まぁあ、服が些か女っぽいから僕の容姿も相まって、間違えるとは思うけどさ?
   あの王女様はどうしてこんな服を選んだんだろうね?
「「ぶっ……くくくっ……」」
   門番の視線を追って僕を見た二人は、目が合った途端吹き出した。我慢しようとするも、肩も震えているし我慢しきれていない。
   ねぇ、そこの君たち?何を笑っているんだい?
   …ふ、……ふふ…………ふふふ。
   なら、お嬢様…なってあげようか……?
「ふふふ。アイル様、ナナト様?如何が致しましたか?」
「「ひっ…!?」」
   あはは。どうしたのかな?二人共。
   恐ろしいものでも見た様な声を出して。
   僕が笑顔で話し掛けただけなのに、失礼だよ~?
「ふふっ…アイル様、ナナト様?門番さんに私を紹介して下さらないのですか?」
「「ごめんなさい」」
「あらあら。私は紹介して欲しいのですよ?
   謝って頂かなくても良いのですよ?」
   僕が親切心で謝らないで良いって言ってるのに、アイルもナナトも又も謝ってくる。
   やだなぁ~。何を謝ってるのさ~?
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