嘘は異世界を救うのか、滅ぼすのか

ノベルバユーザー183896

第25話 嘘は婚約者に恋の色を報せる⑦

シンドウさんともう一度連絡を取り、そして約束の3日目となる。


「詩歌ちゃん。今日は誘ってくれてありがとう。嬉しかったわ。」


「こちらこそ忙しい中会いに来てくれてありがとうねお姉ちゃん。待たせてしまったのかな?ごめんなさい遅れてしまって。」


約束通り赤神さんは待ち合わせ場所に来ていた。私待ち合わせ時間の1時間も早くに来たはずなんだけどな。もうツッコまないからね!


「そんなこと気にしないでいいわよ。私がそうしたかったから。乱咲さんとは連絡が取れたということかしら?」


凄く嬉しそうに話してくれる。嫌だな~。でも話さないとね。


「はいお姉ちゃん。先日乱咲さんとお話ししました。乱咲さんは仲間として受け入れてもいいと話していましたが、ケンジさんが反対しているらしくダメのようです。」


「..そうですか。やっぱりケンジさんは私のこと思ってはくれてないのですね。ごめんなさい詩歌ちゃん話すの嫌だったわよね。でも仕方ないことだから大丈夫よ。」


私は少し腹が立った。なんでですか!赤神さんなんでそう簡単に諦めてしまうんですか。そんな悲しそうな顔をみたくはなかったよ。シンドウさんならどんな手を使ってでもこんな状況を解決できるのだろう。だが私はシンドウさんじゃない。だからあなたのようにはできない。けど必ず赤神さんの恋は私が救ってみせる。


「赤神さん!あなたはあの時、私に嘘を言いましたね。これは私の推測です。間違っているかもしれない。だけど嘘をつかれたまま私は引き下がるわけにはいきません!」


「何を言っているの詩歌ちゃん。私は嘘なんかついてないわ。私はケンジさんが好き。ケンジさんの傍にいたいから仲間にして欲しいの本当よ。」


確かにそれは本当だと思いますよ。あなたの愛は本物ですよ。だからこそ私は頑張ったのだから。


「違いますよ赤神さん。嘘というのはあなたの行動です。赤神さんケンジさんに告白なんてできてないですよね。おそらく話かけたり、食事に誘ったりとかそのくらいが限界で、結婚もケンジさんから言って貰えたんじゃないんですか!」


「..どうしてそう思うの。ケンジさんから聞いたの?」


「そんなこと聞くまでもないですよ。だって赤神さんはものすごいコミュ障なんですもん。おそらく仕事上の受け答えのような決まった会話はできても、アドリブが多い日常的会話にかなり苦手意識がありますよね。そんな人が告白しいては結婚をアタックしまくって勝ち取れたなんて到底考えられないんですよ!どうですか違いますか?」


シンドウさんが話していた裏がこのことかは分からない。でもだが私との会話の中で裏があると思われたのなら、あの時の会話に裏があるのではないかと考えるようになった。そしてこの違和感に思い至った。


「...凄いわね詩歌ちゃんは探偵さんなのかな?そうよ、私は告白なんてできていないわ。結婚もケンジさんからして貰った。でもそれは私を好きなんじゃなく私の祖父がケンジさんに頼んだことだったの。祖父は帝国機関の元総長でケンジさんの上司だった人よ。だから私がケンジさんを想ってることがばれちゃったのかしらね。話を付けてくれたのだと思うわ。」


やはり私の考えは合っていたようだ。しかし赤神さんの祖父がケンジさんの上司だったとは、確かに祖父の存在を調べて把握していた。だがケンジさんが謎につつまれすぎていて関係性があるのかが分からなかった。


「昨日話すことができなかったエピソードもこのことなのよ。祖父が何を想いしてくれたのか全貌はわからないから話すわけにはいかなかったわ。それでも君のことは一生守ると言ってくれたケンジさんの姿は本当に優しくて、私は完全に惚れてしまったのだと思う。」


「ならどうして引き下がるんですか!私はケンジさんと話はしていません。なので本当に仲間に戻りシンドウさんと共に行くのかもわかりません。ですが赤神さんはケンジさんは旅立つと思ってる。ならどんな方法を使ってでもケンジさんに付いていく方法を探したいんじゃないんですか!」


なんで諦めようとするんですか。私は赤神さんのこともケンジさんのこともよく知らない。だから他にも何か事情はあるのかもしれない。だけど一つ絶対言えることがある。


「私は愛した人の傍にはいつまでも一緒にいたいですよ!何か事情があるのかもしれないです。でもここで引き下がったら赤神さんは必ず後悔しますよ!私がなんだって協力しますよ。私が必ずお姉ちゃんを救って見せますよ!」


私はこんなに感情的になることが今まであっただろうか、いやなかったはずだ。私はお兄ちゃんが好き、だがそれが許されるものではないことなんて分かっている。だからこそ目の前にある許される本当の恋が否定されてしまうことに許せなくなっているのだと思う。


「...詩歌ちゃん。私だって諦めたくはないわ。この嘘だらけの結婚式だったとしても私はケンジさんと結婚したい。一緒ににいたいわ!お願いします。助けて詩歌ちゃん。私にはどうすればいいのかもう分からないの。」


「この妹である詩歌に任せなさい!ケンジさんになんとしてでも本当の恋を届けてみせますよ!」


こうして私はケンジさんへ思いを伝えるキューピッドとして行動する決意を決めた。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品