嘘は異世界を救うのか、滅ぼすのか

ノベルバユーザー183896

第13話 嘘の若獅子の夢は紡がれる⑥

「ミッシーにやって貰うのは、署名活動だ。紙はいくらでもと言いたいが限界はある。まず100枚は刷ってやろう。この村の居るものの三分の一でざっと100名ってとこだろ。署名を集めてみろ。危ないことは何もないだろ?内容はこの俺ロウチがしていることは悪いことだ。この小僧を助けたい。協力してくれと言った内容を書き。名前を書かせろ。」


俺はゲームの説明をしてやる。さぁこの純情そうな子が、集めきれるのか楽しみだ。


「集めたら兄を許して、いや解放してくださるのですか。」


ほう?解放というのだから。こちらにも縛りをつけてくるか。


「あぁ解放してやるよ。俺はもうヤマタケに手は出さない。ただし反撃してきたらその限りではないがな。俺は今日のようなことを最低でも1週間は継続する。君のお兄ちゃんが壊れる前に集められるといいな。」


まぁこいつが本気だったらこの勝負に勝算はあるのだ。俺はあくまでもフェアな戦いを楽しむ男なんだぞ。相手が術中にハマらなければだがな。


「さて帰るぞ!立つのも疲れるもんだな。ちょうどいい馬いや馬鹿がいてよかったよホント。ヒヒーンって吠えてもいいんだぞ、そんなにしゃべりたいならなぁ~」


あらら、血の涙でも流すんじゃないかというほど目が血走ってやがる。まぁ怒るなよ。このくらいでそんなに怒っていたら。俺を出しぬくなんて一生できないぞ。


「ごめんねお兄ちゃん。私がもっとしっかりしてればこんなことにはならなかったのに。」


ミッシーが気がぬけたのか、腰を抜かしている。俺はただゲームに誘っただけだぞ。そんなに怯えられると傷つくんだがな。





1時間ほどかけこのボロ小屋に着く。


「ご苦労さん。手と膝が真っ赤だな。回復魔術かけてやるよ。」


ヤマタケの顔が恐怖に耐えるような表情に変わる。おいおい確かに激痛だが治るんだぞ。感謝されることはあっても恨まれる筋合いはないぞ。


「ん!んん!......ん.....!!んん....」


もがき苦しんでいる。そういえば黙れって言ったんだったな。すっかり忘れてたよ。すまんすまん。合掌。





10分程かけ復活したヤマタケは口から泡を吐いて気絶している。やはり苦痛を声にして叫べないというのは相当辛いらしいな。分かっていたことだが。だって昨日治療する時、悲鳴が煩かったんだもん。30分も嫌がる少年に跨って直す絵ずらを想像してみろよ吐き気を催すわ!





俺は小屋に捨ててからゲームのために必要な紙を調達する。紙100枚を店で300円で買えた。田舎村だからってあまり高くはなかったな。これなら300枚くらいにしてやればよかったかな。いや空間魔術使ったとしても持ち運ぶの面倒だからいいや。


「そういやミッシーの家どこにあるか聞くの忘れてたな。」


俺はあの兄妹物語に圧巻されすぎてすっかり忘れてた。まぁあの爺さんなら知ってんだろ。





さて流石金にがめついだけあっていいとこ住んでんな。ピッキングで勝ってに入る。


「じいちゃんただいま。自慢の息子が帰ってきてやったぞ。ぞんぶんに甘やかしてくれていいぜ!」


爺さんはちょうど玄関先の盆栽で水をやっていた。似合わねぇ~


「貴様!いったいどうやって入りおった!そしてやらかしおったのう。」


爺さん青筋が額に浮かんでるな、怒りすぎるとストレスマッハでさらに禿るぞ。


「これで入ったんだよ。忘れたのかよ昔はよくいつでも遊びにこい。わしはいつまでもお前のことを待っているぞ。とそれは優しい優しい表情で孫に合鍵までくれるようなおじいちゃんだったじゃないかよ!俺は悲しいよ。」


合鍵を持っているのだ。俺がピッキング技術なんて大それたもん持ってるわけないだろ。錬成魔術で作成したのだ。俺の錬成魔術は一回見た物なら手のひらサイズであれば生成可能だ。両手を合掌すればなんでもできるような真似できる訳ないだろ。ドア開ける方法なんていくらでもあるがこれが一番楽だ。


「こんな下劣な孫はワシにはおらんわい!お主やってくたの~本当に。はぁ~」


怒ってるのか、疲れてるのかはっきりしないな。ボケたんじゃないか?


「この村の老人会を動かし、あまつさえお主んとこの孫やるじゃないか。あのいけすかね~ポリ公にあんな表情をさせるなんてのうと散々褒め生やしてさっきまで家に居ったわ。」


まぁそうだろうな。いくら爺さん達でも帝国機関相手では太刀打ちできる範囲は限定されるだろうな。でもポリ公って..老人会のやつら気が荒そうだな。


「お主の目的はなんじゃ。この老いぼれでも人一人道連れにして地獄に落とすことは可能じゃぞ。」


いや~。やっぱりこの爺さんこえ~なおい。こういうやつ大好きだぜ!


「そんな怖い顔してくださんな。約束してやんよ気がすんだらすぐこの村出ていくさ。そうだな一週間だ。それ以上いたら通報していいぞ。」


俺だってこの村に長いする気はないからな。一週間もあれば十分だ。


「ほんッ。まぁええじゃろ。これ以上はワシには関わるなよ。っでなんのようじゃ」


リビングまで歩きながら要件を伺うため家に入れてくれる。ツンデレかこのジジイ?だれ得だよ。
部屋に入ると昔ながらの和室が広がっている。広がっている掛け軸に刀の置物や木彫りのクマ..本当にしぶいな。


「んで要件はなんじゃ。重要なネタを引っ張ろうものならまた報酬をいただくぞ」


目がぎんぎらに輝いているようだぜ。この爺さんこんなとこ住んでんのにまだ金が欲しいのかよ。がめついジジイ通称がめじーと呼ぼう。心の中だけでだけどな。


「実は俺小学生くらいの女の子にしか性的興奮を本当は抱けない性癖なんだよ。女の子売ってる場所知ってたら教えてくれよ。金は払うからさ。」


「ぐふぅおッ..ごほ..ごほ..いきなり何を言うんじゃ貴様は!そんな場所あるわけなかろう!仮に知ってたとしても教えるわけなかろう。重要なネタどころの騒ぎじゃないわい!」


なるほどなこの村では子供は奴隷扱い同然だが、そこまで卑劣なことにはなっていないようだな。良かった良かった。もしあったらこの村の爺婆を皆殺しにしたかもしれなかったよ。本当によかった。


「冗談だよ。あまりにも爺さんの目が怖かったから驚かせたかったんだよ。おちゃめな孫を許せよ。そして本題だが、爺さんさっき尾行してただろ。その時他にも尾行してた女の子の名前と居場所を教えろ。そんな重要な情報じゃねーだろ?」


がめじーは睨みながら考えごとをしている。だが結局は諦めたようだ。


「ホントお主は何者だ。ワシも長年多くの者を見てきたが、お前さんほど考えていること、表情、感情、気配すらわからないやつは初めてじゃ。」


過大評価だな~。今考えていたことなんてユイそろそろ目覚めたかな。目覚めのキスをしてやりたいとかそんなとこだぞ。


「あの娘は三木 詩歌。ワシが運営してる旅館で働かせておる。しょうがないから割引券をやる。金を落として来い。」


このがめじー本当に金に目がないな。まぁ貰うけどな。


「んじゃ詩歌ちゃんに、ぞんぶんに甘やかして貰いにいってくるわ!サンキューおじいちゃん!」


俺は脱兎のごとく走り去っていく。


「しまったのう。何かいやな予感がするのう。人生でこれほど警戒心を抱かされるのも初めてじゃ。」


ジロキチは自分のこの行動を必ず悔いることになるだろうことを長年の経験から察してしまった。

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