古川さんとロジウラ喫茶

寺川トーレ

1.ロジウラの喫茶店

 午後四時半、どこの学校でも使われているであろうチャイムの音が鳴り、帰りのHRが終わる。ここからは部活動の励む者、または早々に帰宅する者に別れる。校門から数人の生徒が自分の家の方へ向かって行く中、彼女、古川幸は一人とある喫茶店に向かっていた。先週の休みに見つけた穴場の喫茶店だ。
 彼女はいわゆる喫茶店オタクというやつなのだ。毎日の放課後の楽しみは、お気に入りの喫茶店でコーヒーとケーキを食べること。お気に入りの喫茶店が多すぎて、最近の悩みは体重が少しづつ増えていることだ。
 今日行く喫茶店は、店こそ古いがどこか懐かしさを感じさせる場所だった。
 私は街のある一角から裏路地に入る。建物と建物の間の薄暗く狭い道を抜けると住宅地に出るのだが、そこはもう人が住んでないような寂れたところだ。その住宅地の奥の方に今日行く喫茶店があるのだ。
 私は住宅地を抜けて喫茶店の前に着くとまずはドアに閉店の札がかかってないかどうかを確認した。放課後に来たのだから当然のごとく札は下がっていない。私は喫茶店のドアをノックする。返事はないが私はドアを開けて中に入った。

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