死ねば死ぬほど最強に?〜それは死ねってことですか?〜

ライオットン

第98話〜義務〜

 司は剣を持って教室の扉の前に立っていた。

 さあ、行け。報いを受けさせろ。

「ああ。それが俺のやるべきことだ」

 勢いよく扉を開ける。

「藤井君?」

「おい。あいつやばくないか?」

 教室のクラスメイトは外に出ようとするが、なぜか窓や扉が開くことはない。

「お前達のせいだろ」
「そうだ。いつもいじめてるからお前達のせいだ」
「責任とれ」

 司と反対側にクラスメイトは集まり、森山達五人を無理やり司の前に押し出そうとしている。

「待てよ。お前らだって見て見ぬふりしてただろ」
「こういう時だけはあいつの味方か」

 ほら見ろ。こいつらの愚かさを。都合の悪いことは全て他人のせい。自分に原因があるなんて微塵も思っていない。

「そうだ。こんなやつら必要ない。こんな世界は俺に必要ない」

「俺は森山に唆されたんだ
「そうだ。いじめを始めたのは森山だ」

「やめろお前ら!」

 大きな声と同時に森山が押し出されて司の前に倒れ込む。

「なあ。勘弁してくれよ。ただの冗談だったんだよ。ほら、謝るから許してくれ」

 森山は今まで散々いじめてきた司に向かって土下座をする。

「いや、俺はもうお前達のことを恨んでなんていない」

「え? なら許してくれるのか?」

 驚きで顔を上げる森山の片腕を司は切り飛ばす。森山は少しの間何が起きたか理解できていなかった。だが、痛みによって自分に何が起こったのか理解した。クラスメイトは腰を抜かし、泣き叫んでいる。

「クソ野郎が。絶対殺してやる」

 この状況で森山から出たのは許しをこう言葉ではない。司への掠れた罵倒だ。

「俺はお前達を恨んでない。そんなわけがないだろ。半年間も俺はお前達に玩具にされてきた。死のうと思ったことなんて十や二十なんかですまない。それでも耐えてこれたのは・・・なんでだったっけ。まあいい。俺がお前達を許すことなんて絶対にない。こうしてお前達をぐちゃぐちゃにするのを心待ちにしてたんだよ」

 蹲る森山の首を左手で掴んで無理やり立たせる。

「やめろ」

 司は剣を捨てて何度も森山の顔を殴る。何度も。何度も。何度も。周囲には血が飛び散り、森山は森山と確認できない状態になっていた。

「これは俺が受けてきた痛み。その報いだ」

 ペッ

 森山は司に向かって血だらけの唾を飛ばす。司は無言で左手を放す。そして、落としていた剣を掴んで森山の心臓の上に構える。

「最後の最後までお前の本性は変わらない。お前は人間ではない。人間の皮を被った悪魔だ。死ね」

 森山に向かって剣を下ろす。

「司!」

 剣が森山に当たる直前に声が響き渡る。

「この声は?」

 そんなこと気にしなくていい。お前の使命を果たせ。

「ダメだよ。それをしたらもう司は人間じゃなくなっちゃう。そこにいる悪魔と同じだよ」

 殺せ! 辛い思いはもううんざりだろ。

「そうだ。俺の使命はこの世界を滅ぼすこと」

「違う。司はそんなことしない。私の大好きな、東条花音が大好きな藤井司はそんなことしない。今までしてきたこともとても辛かったはず。もう嘘はつかなくていいんだよ」

 そんなことはない。お前はこいつらを滅ぼすのを望んでいる。それが本当のお前だ。

「そうだ」

 だろ? お前は。

「黙れ魔神! 俺は藤井司。東条花音を守ることが俺の使命。いや、俺の義務だ」

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