死ねば死ぬほど最強に?〜それは死ねってことですか?〜

ライオットン

第77話〜記憶〜

「おい! ゴミが来たぞ!」
「マジだマジだ! ハッハッハ」

「ゴミの分際でなんで学校に来てるんだ?」
「おい! こっち来いよ」

 司に森山の拳が当たるところで、司は目を覚ます。

 最悪の目覚めだ。

 司は深いため息をつきながら起き上がる。どれだけ強くなっても、記憶は消すことができない。夢などコントロールできるわけもない。

 「おはよう。花音」

 いつものように眠っている花音に話しかける。返事はない。

 朝の食事中に七瀬が司に対して質問をする。

「どうかしたの〜?」

「何が?」

「だって〜。何か悩んでいるような顔だよ〜?」

「そうかな?」

 司はとぼけたように返すが、心当たりがないわけではない。今日の朝の夢。その中の人物。その一人が全く思い出せない。確実に人物として存在していた。だが、顔と名前が全く思い出せない。モヤがかかっていた。

 起きてからクラスメイト全員の名前を思い出した。そうしたら、全員分覚えていたのだ。その全てが、夢の人とは違う気がする。意味がわからない。クラスメイトでもない人があの夢に出てくるのか? 司は頭を悩ませる。

「集まってくれてありがとう」

「実は・・・」

 集まった九人のクラスメイトに対して、司は夢のことをつげる。

 結果は変わらなかった。全員が全員の名前を覚えている。クラスメイトの数もみんな同じものだった。だが、一つだけ違いがあった。

「え? その時は宮本君じゃなかった?」

「いや、その時は津島君だった気がするよ〜?」

 いくつかの場面で、数名の意見が食い違うのだ。人が違う。その場面だけ、その場面だけ人の記憶が違う。

 そんなことがあるのか?

 司は頭をフル回転させて考える。こんなことが起こりうる可能性。司は一つの可能性にたどり着いた。いや、確信にたどり着いた。人の記憶が違う。それも数名なんてあり得ない。ならそれは、誰かに記憶を書き換えられた。

「掌握の王ベラ」

 司は確信を口にする。

「奴のせいだ。僕たちには、もう一人クラスメイトがいるはずだ。それも、まだ生きている。死んだ人間の記憶を操る必要なんてない」

「でも、何も思い出せないよ?」

「そう仮定したとしても、その魔王に聞かなければどうしようもなくないかい?」

 それもそうだ。記憶を書き換えられていたとして、答え合わせをすることができない。進展もなく、その場は解散した。

 司はそのことについて悩み続け、いつしか眠りについていた。

「私はこのクラスのマドンナなの。あなたとは身分が違うの。話しかけないでくれる?」

 朝日によって司は目を覚ます。記憶が無くなった人のことを思い続けたせいか。その人の夢を司は見ていた。

 委員長が腹黒だった時は驚いたな。あんなにいい顔して裏では、酷いものだよ。

 委員長?

 委員長は宮本くん? でも、あの人が委員長?

 違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。

 「委員長は新井真央だ」

 司が記憶を取り戻すと、記憶の中の全てのモヤが晴れていく。

 そうだ、そうだった。この世界に来て、言語のことについて質問したのも。全校生徒の前で賞状をもらったのも。委員長である新井真央で間違いない。そうだ。助かったのは十一人だ。

 司は全員を集めてすぐさま報告する。

「クラス委員長は新井真央さんだよ。助かったのは十一人だ」

 その言葉に対して、クラスメイトは疑問の表情を浮かべる。

「そんな奴知らねーよ」

「そうだね。僕も思い出せない」

 初めはそうだった。

「そうだよ! 真央さんだよ」

「そうだね。私も思い出したよ〜」

 だが、時間が経つに連れて全員の記憶が戻っていた。

「クラスメイトのことを思い出せてよかった。そして、ベラの記憶操作も完璧ではない」

 すぐさま、城の皆にも新井真央のことを告げる。同じ反応だった。初めは首を傾げるが、必ず思い出す。

「掌握の王ベラとは記憶を完全に操るのか」
「記憶を操作する能力。実際に使われるとここまで恐ろしいとは」
「厄介にもほどがある」

「でも、倒しますよ。クラスメイトのこともあります。けど、その存在は花音を脅かしかねない」

「「「はい!」」」

 超合衆王国モンブランは打倒ベラに向けて、勢いを加速させるのだった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品